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握っていて、なかなか開こうとしない手を
無理にひらかせた。
小さな手で、ギュッと力いっぱい握っている手が、
お店で何か――そう小さいおかしとか――盗んできたと思ったから。
「あけなさい!」
「いやだ!!」
必死で抵抗する手を無理にこじあける。
火が付いたように泣き出す我が子。
でも、その手には・・・・・・……。
「何も、持っていないじゃない」
ゴメンね、と抱き寄せると、泣きじゃくりながら教えてくれた。
「さっき・・・・・・、そこでっ・・・・・・お父さん、会ったんだッ・・・・・・。
父さっ・・・・・・。忘れたくっなくって、
さわった・・・・・・しまっておこうって・・・・・・。
母さんのバカ~!!」
後はもう、大泣きだった。
ごめんね、また近いうちに会えるからね、と言うのが精一杯で、
私の目もぬれてきた。
<了>