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第22話:奇襲! 邪神教徒の罠!?




「いる……いるぞ……誰かが悪事働こうとしてる……」


「でも無茶苦茶反応小さいっスよ……。殺気や敵意を隠してるっス……」


「お前ら便利な能力持ってんなぁ……!」



 通りの裏道を走りながら、俺達は敵意を発する相手を捜索する。

 定期的に小粒な討伐クエストをこなしたり、スキルアップ婆さんの元に通って鍛えられた感知スキルは、俺個人ではなく、俺と親しい者、俺の持ち物、そして、俺が守ろうとしている対象への敵意をも感知するまでに成長した。

 キンキン鳴る頻度が上がり、煩いのが玉に瑕だが、こういう時は頼もしい。


 感知音に乱れは少なく、丁度心臓の脈のようなペースでキーン……キーン……と小さく繰り返している。

 これは敵意を持った何者かが一人ないし少人数の場合に見られるピークだ。

 大人数になると悪意の向きに乱れが生じるため、ピーク音が混濁した感じになる。


 大きくなったり、小さくなったりする感知音を追って、ギルド本部前を抜け、交易街を通り、取水塔の陸橋を渡り、工業地区に入る。

 丁度、この辺りが祭りの会場の裏側だ。

 祭りの間は職人のおっちゃんらも休業中らしく、辺りの町工場は雨戸と木箱で塞がれている。



「ピークがデカくなってる……。この辺にいるぞ……」


「出てくるっス! お祭りの邪魔はさせないっスよ!」



 ミコトの声が、人気のない工業区に響いた。

 ピークはますます大きくなるが、相変わらず敵の姿はない。



「なあユウイチ……今すげえ嫌な予感がしてるんだが」



 ドンという軽い衝撃と共に、マービーが俺の背中に背中を合わせてきた。

 俺もようやく、妙なことに気が付く。

 なんで祭りを荒そうとしてる奴が会場から一番遠いここに向かうのか……。

 同じく感づいたのか、ミコトも背中合わせに身を寄せてきた。



「「「誘い出された!?」」っス!」



 次の瞬間、俺の目の前に激しい光球が飛来した。

 俺自身は全く反応が出来ず、オートガードが発動する。

 光球が青い魔力障壁に直撃し、凄まじい爆発と閃光を生んだ。



「ぐああああっ!?」


「きゃあっ!」



 その衝撃で吹き飛ばされる俺とミコト。

 くそっ!

 対人戦殆どしてこなかったツケが回ってきたか……!

 まんまと敵の策中だ……!

 閃光に眩む視界、頭を振って無理やり目を開ける。



「そこかあああああ!!」



 叫び声に驚き、視線を巡らせると、宙高く飛び上がったマービーが、積み上げられた木箱の山に飛び蹴りを食らわせたところであった。

 不意を突かれた状況から即反撃に移るだなんて……!

 恐ろしいほどの対人戦闘慣れだ。

 伊達にキャラバン護衛を務めていない。


 マービーが蹴り倒した木箱の山の間から、ローブに身を包んだ人影が飛び出してきた。

 感知スキルのピーク音が降り切れんばかりに高揚する。

 こいつが犯人か……!



「フロロバインド!」



 人影目がけてフロロカーボンを召喚し、拘束を図る。

 だが、釣り糸が敵の身体に絡みついた瞬間、フッと消滅してしまった。

 拘束解除呪文か!? いや、いくら何でも早すぎる!



「ハァッ!」



 姿勢を全く変えぬまま、ローブの男が黒い霧のような波動を放ってきた。

 双剣でそれを切り払い、形質変化で手裏剣状に変形させたアイスシュートで反撃する。



「ナッ!?」



 相手は思わぬ反撃に驚いたのか、解除魔法の類は使わず、氷の刃を大げさな動作で回避した。

 甘いな……。



「飛んで火にいる夏の邪神教徒っスよ―――!!」



 その飛び退いた先には、ステッキソードを思い切り振りかぶったミコトがスタンバイしている。

 ミコトのエンジェル・フルスイングが決まるかと思った直後、その敵は空中で黒い波動を再び放ち、ミコトに直撃させた。



「ぐふぅっ!?」



 小さな悲鳴を上げ、転げるミコト。

 ただ、高耐久力の彼女には屁でもなかったらしく、すぐに立ち上がってアイスシュートで反撃を加えた。

 そこに間髪入れず、マービーの飛び蹴りが撃ち込まれる。



「バカナッ!?」



 肩を蹴り飛ばされた敵は、間抜けな声と共にゴロゴロと転がり、崩れた木箱の山に突っ込んだ。



「おーおー。手の込んだことする割に大したことねえなぁ!?」



 マービーが拳をパキパキと鳴らしながら、敵に近づいていく。

 敵はその威圧感に圧し負けたのか、徐々に後ずさりしたかと思うと、フッと姿を消した。

 うおっ!? テレポート!?


 敵が姿を消すとともに、感知音がフッと鳴りやんだ。

 どこか感知できない遠方へ逃げたらしい。

 現在の俺の感知範囲を考えれば、デイスの街の外だろう。

 あれ……? デイスの街って魔法で城壁内外の行き来出来なかったような……?


 そんな疑念を抱いた直後、今度は頭が割れるかと思う程の感知音が脳内に響いてきた。

 凄まじい脳内反響……凄い数の敵がいる!

 ミコトも俺ほどではないにせよ、頭痛に似た感覚を覚えているようだ。

 慌てて感知感度を下げ、頭の中を鎮める。



「おい! ユウイチ! 祭りの会場の方が騒がしいぞ!」



 そう言ってマービーが東の空を指さすと、ドン!ドン!という音と共に、会場の方の空に黒煙が立ち上るのが見えた。

 しゅ……襲撃だ……!




/////////////////




 祭りの会場である中央広場に戻ると、阿鼻叫喚の事態になっていた。

 青いローブに身を包んだ集団と、黄色いローブに身を包んだ集団が……。

 冒険者達に散々に追い回されている……。


 何かが炸裂した痕跡はあったものの、各街の大やぐらは無事、カトラスの屋台街に一部黒煙が見えたが、魔法に覚えのある冒険者や魔導士によって迅速に消火が行われていた。


 ついさっきまで屋台で腕を振るっていたであろうコモモやサラナも並み居る敵を次々に薙ぎ払い、エドワーズは見るからに強そうな相手に華麗な立ち回りを演じている。

 デイスの大やぐらの上では、ローブを着た連中をシャウト先輩がメタメタに斬り捨てまくっていた。

 うおぉ!? なんか法王サマも杖使って敵をバッサバッサと……!

 すごい! 黄門様みたい!


 結論から言うと、俺達が心配した最悪の事態には程遠い状況であった。

 やっぱデイスの防衛力固いなぁ……。

 挙句、デイスのギルドの拡声器からは、「打ち取った邪神教徒の数につき各都市へ得点を寄与致します!」などと言う物騒なのか暢気なのか分からない都市内放送が実施されていて、最早七面鳥撃ちの様相である。



「オラー!! ユウイチ! ミコト! マービー! てめえらも手伝え!」



 やぐらの上から叫ぶシャウト先輩の指示に従い、俺達もその祭りに飛び入っていった


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