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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
3章 釣りバカ異世界生活 秋

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第9話:インフィート竹採り物語 上




 100~200mのタナに生息する深海魚。

 それを捕獲するための漁法……。

 まあ、手釣りの一本釣りか、刺し網が妥当だろう。


 手釣りは、その名の通り、手でテグスを操って魚を釣る方法だ。

 小舟を浮かべ、そこから垂直に糸を垂らし、後は腕でテグスを上下に動かし、魚がかかるのを待つ。

 魚が食えば、テグスを手繰り、釣り上げる。

 極めて単純明快な釣法だが、水深があるので、効率に難点有りだ。


 刺し網は、狙いの魚の身体が挟まるくらいの幅の目をした網を水中に広げ、魚がその目に絡まるのを待つ漁法である。

 古式ゆかしい漁法ながら、今でもサンマ漁などで用いられている。

 難点は、大掛かりな仕掛けを運用するテクニックをインフィートの人たちが体得できるかどうか分からないという点だろう。


 どちらも難点はある。

 しかし、この街にある材料、技術では、それ以外の選択肢は無い。

 さらに言うと、俺が伝授できるのもこの二つくらいなのだ。

 延縄だの、巻き網だの、定置網だの、巻き網だの、名前とやっていることは知っているのだが、仕掛けのセッティングや網の構造など知る由もない。

 所詮俺は釣り人であって、漁師ではないのだ。



「むむむ……。こんな構造の網ですか……作れる人いるかなぁ……?」



 俺から計画書を受け取ったサステナが唸る。

 インフィートには漁師がいない。

 当然ながら、その道具を作る人もいない。


 昨日会議の席で言っていた縄職人の方々に、200mのテグスか、縦50m、横200mの刺し網を作れるか打診してくれると言って出て行ったが、さて……どうなることやら……。



「なあ、しばらく時間かかるって言ってたし、他のみんなの手伝いに行かねぇか?」



 返事が来るまでグータラする気満々だった俺の進路に立ち塞がるがごとく、マービーが言った。

 「でも、当初の約束では、魚を採れる段取りが付いたらって条件だし……」と言いたいところだが、正直、他の人らのクエストにはちょっと興味がある。

 

 ミコトも「美味しい食材やお料理発掘したいっス!」と乗り気である。

 食に対する欲求なのか、それとも材料への探求心なのか。

 間違いなく前者だなこいつは……。


 彼女を見る目から、俺の心を見透かしたのか、「半々っスからね!」と、彼女はふくれっ面を見せた。

 うん……欲求に正直な君が好きだよ。

 こりゃまだ当分はマナティーだな……。



「とりあえずエドの手伝い行ってやろうぜ。今日竹林扱ぐと言ってたし、ドーマンの手も借りてぇってもんだろ」



 ここで真っ先にエドワーズの名が挙がったことに若干の安堵を覚えつつ、俺は「ドーマンって何……?」と、あらぬ方へ意識を向けていた。




/////////////////




 かくして、俺達はエドワーズに合流し、林業種族の耳長族……といってもエルフではなく、兎獣人の助っ人2人と共に、インフィートの下の湿原を囲うように生い茂る巨大な竹林へと足を踏み入れたのだった。

 そこまではよかったのだが……。



「ひいいいいい!!」



 俺の真後ろに巨大なハサミが降ってくる。

 俺はそれを、情けない声を上げつつ躱す。



「ほら! ここにも若竹があったジャン!」



 そんな俺の前を風のように駆けながら、背の低い竹を小斧で切り倒し、採取していく兎獣人「ラウダ―」さん。

 インフィート周辺の竹林は、4区画に分かれている。


 一つ目はミコトが向かった安心、安全な普通のタケノコの産地。

 二つ目は、マービーが行った先。

 腕に覚えのある冒険者なら対処可能な猛獣「エリート・パンダ」が生息している、「ゴンブトダケ」の産地。

 三つ目は、危険度のやや高い猛獣「ミレニアム・パンダ」が生息する、「ネマキダケ」の産地。

 ここにはエドワーズが向かった。


 そして、今俺がいるのは、四つ目の区画。

 超危険生物「ダーク・タケアシガニ」の巣窟であり、食べられる竹、「魔竹」の産地である。

 元の世界でも、読みが同じで、同じく食用になる、メンマの材料「麻竹」というものがあったが、この世界でも似たような食べられ方をしているらしい。


 ただ、元の世界のそれと大きく異なるのが、この魔竹には魔封じの効能があり、その根が張り巡らされた林の中では、一切の魔法が使用不能になる点だろう。

 「危険度高い猛獣がいる? 大丈夫ですよ、俺逃げるのは得意なんで」などと、自身のスキルを過信して挑んだ俺は、今現在、文字通り命からがらの目に遭っていた。


 ダーク・タケアシガニは、全高25mに迫る巨大陸生ガニで、緑色の体色と長細い脚を使って、普段は竹やぶにカモフラージュしているが、俺達のような獲物を見つけると、即座に起き上がって捕食活動に出る。

遥か頭上から振り下ろされるハサミの一撃に、俺はただ逃げ惑うばかりだ。

 その巨体ゆえか、ハサミを叩き込む場所をコントロールできていないのがまだ救いか……。



「お前、さっきから逃げてバッカジャン! 情けないジャーン!」



 俺の目の前で、露出度の高い「作業着」に包まれたラウダーさんの妖艶な肉体が跳ねまわる。

 せめて何か言い返したかったが、逃げるのに必死でそれどころではない。


 くそう……。

 兎獣人めっちゃ足速い……。

 小斧さばきめっちゃ鮮やか……。

 超カッコいい……。

 あとエロい……。


 林業という力仕事で兎獣人……?

 と思っていたが、成程、こういった生態系があるとなれば納得だ。

 パワーはあれど、動きの鈍いドワーフ族では、あのカニの餌になってしまうことだろう。



「ほら! 林を抜けるジャン!」



 延々と続くかと思われていた竹やぶの先に、明るく開けた空間が見える。

 その一角に飛び出た直後、ラウダ―さんの姿が掻き消えた。

 テレポート!? と思ったが、これは兎獣人族しか会得出来ない高速移動スキル「カグヤ」だ。

 魔力でパワーアップした脚力を使い、遠距離ジャンプをする技である。

 竹やぶが切れた場所のため、魔力が使える場所らしい。

 俺もそれに倣い、速攻でテレポートで逃げだしたのだった。


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