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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
最終章:釣具召喚チートで異世界を救う
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第37話:釣神再起!




 幾分荒れた街道をひた走るヒポストリの荷車列。

 その荷車には、ランプレイのキャラバンで見た、重ボウガンが複数据えられている。

 強行輸送戦列と言われる、飛行クジラ使用不能下における強行キャラバン部隊だ。


 空にはハーピィの偵察要員が低く飛び、迫る魔物を見張っている。

 何とも物々しいが、状況が状況なだけに、当然の用心と言えよう。



「さー! ガンガン行くわよ!! この勇者レフィーナ様の英雄譚を刻みに!」



 先頭車の屋根で仁王立ちしたレフィーナが叫んでいる。

 その立ち居振る舞いは、ほんの一年前とは比べ物にならないほどのオーラを放ち、その身に纏う鎧も随分と立派なものに変わっていた。


 レフィーナだけではない。

 タイドも、ラルスも、ビビも、皆一様に顔立ちが凛々しくなり、いかにも勇者パーティのいで立ちだ。

 この短期間で、相当鍛錬に励んだに違いない。

 勇者サマパーティをお供に付けてもらった以上、俺も卑屈になってはいられない。

 仮にも“神”の二つ名を賜る者として、頑張らなくては!



「はっ!! ロングレンジ冷凍ビーム!!!」



 俺は感知スキルで発見した魔物目がけ、集束光線を放つ。

 こちら目がけて走って来たエリマキバイソンの頭部が凍り付き、ドシャア!と音を立てて地面に倒れ伏した。

 もう助かるまい。



「もーーー!! 先輩さっきから一人で狩りすぎ!! 私の出番が無いじゃない!!」



 先頭車からレフィーナの叫び声が聞こえる。

 いやだって……。

 敵の位置分かるし、当てれるし……。



「だからお前は今休んどけって! こんな先輩や大先輩でも勝てなかった敵が相手なんだぞ!」


「なによ! この状況で勇者が役に立てませんでした~じゃ恰好がつかないじゃない!」


「お前が役に立つべきなのはこの後だろ!」


「はぁ!? 私はいつだってやる気も勇気も満々な勇者様なんだけど! あんたそんなんだから精霊様の力貰うのが最後になったのよ!」


「なにをぉ!?」



 タイドがレフィーナに休憩を促すが、レフィーナは全く従う気はないようだ。

 一応あいつリーダーだよな……?

 ていうか精霊様?



「精霊様っていうのはね、選ばれし勇者と、その仲間に破魔の力を授ける4体の聖なる獣だよ。あの子達はそれぞれ、光、闇、火、水の力を授かって、正式な勇者パーティになったの」



 俺の疑問に、荷車の屋根を軽快に飛び越えてきたサラナが答えてくれた。

 ほえ~……本当にファンタジーだなぁ……。

 今この世界の物語の中心はあの子達ってかい。

 あの子達に任せておけば、この災厄は収まっていくってわけだな。



「そんな事はないよ! あの子達だって毎回危ない橋渡ってるんだから! 私達がフォローしてあげなきゃ! 勇者サマである以前に、あの子達は若いどころか幼い新米冒険者なんだから! ほら危ない!!」



 見ると、ガタンと大きく跳ねた荷車にバランスを崩し、タイドとレフィーナが落車しかけている。

 サラナはすかさず泡の壁を放ち、2人を受け止めて見せた。



「ふう……ヒヤヒヤするなぁもう……。ま、あんな感じだからさ、あの子達に何もかもおっ被せたら駄目だからね! コラー! 君たち危ないでしょー!」



 そう言ってサラナは俺の肩を叩くと、2人の元へ跳んでいった。

 ……。

 だな!


 「お前があの時、あれをしたから俺が、あいつらが、皆が助かった」などと、昨日エドワーズに散々聞かされたが、俺を含む数多の人行いが、今の勇者たちを形作っている。

 勇者サマに全部任せてハイ解決! などなるわけがない。

 なるとしたら今、ギルドや軍、騎士団の皆が死力を尽くして各地で戦っているはずがないのだ。



「もう一回……頑張らせてもらってもいいですか?」



 俺は頬を撫でた仄かな土の香りに小さく問いかけた。

 無論、誰も答える者はいない。

 だがその代わり、握りしめた俺の手の中に、フッと何かの感触が生じた。

 それは硬く、小さく、冷たく、まるで小さな瓶のような感触だった。



「見えたぞ! ジャスパイダ山地! 日暮れまでにはシャーネモの街に入れそうだ! 最後まで見張りを頼むぞ!!」



 キャラバンの団長が叫ぶ。

 眼前に遠く聳える連峰の雪は、もうすっかり溶けて無くなっていた。



「メガ冷凍ビ―――ム!!!」



 俺は刀身が欠けた双剣を十字に構え、上空から突如急降下してきたフレイムワイバーン目がけて冷凍ビームを放つ。

 頭から翼の付け根にかけて凍結させられた火竜は、減速も出来ぬまま車列を大きく逸れた地面に高速で激突し、絶命した。

「わーたーしーのーえーもーのー!!」という声が、車列に響いた。

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