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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
最終章:釣具召喚チートで異世界を救う
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第20話:骸骨龍現る!?




「幽骸龍……? 聞いたことねえドラゴンだな」


「ええ。そうなんです。しかし強い霊気を纏っていて、骨だけで活動していたとか……」



 サラナがデイスに戻ってから、また忙しく指名依頼をこなしていた俺達。

 レッサーダゴン情報もかなり集まり、おおよそ根城のある地域の目星がつき始め、コトワリさん救出計画を練ろうとしていた矢先のことだった。


 大陸東方ギルド本部から届いた調査依頼には、「あまりにも異様なドラゴンが彷徨っていた」というものだった。

 ドラゴンは極めてタフな生命体だ。

 龍骨や神樹という、特効武器が発見されるまでは、文字通り不死身の生物として恐れられていた歴史がある。


 しかし、それはあくまでも肉体が健在であることが前提。

 骨だけで動き続ける種など聞いたことがない。

 合ってるよねミコト?



「そうっスね。最近買ったドラゴン図鑑にも、ガイコツだけで動く龍の記述は無かったっス。エラマンダリアスが瀕死のドラゴンをゾンビ化した例なんかはあるみたいっスけど……ゾンビも一応肉体はあるっスからね」


「ていうか筋肉がないのに体が動くっておかしな話ですもんね……」



「しかし、ちゃんと帝国正規軍東方宿営地の司令判まで押された依頼状ですので、デマの類ではないかと思われます」



 俺達からの総ツッコミに、ギルドの受付お姉さんがムッとしながら依頼状を差し出して来る。

 うわ、すんごいデカいハンコ……。

 ていうか帝国正規軍なら、ご自慢の兵器で攻撃すればいいだろうに。


 俺がそう言うと、お姉さんはため息をつき、「東方宿営地ですよ?」と両手を小さく広げ「やれやれ」ポーズをとった。

 え?

 なんか俺妙なこと言いました?



「東方宿営地は、帝国正規軍の中で最も小さな拠点です。砦らしい砦は古いものが一つしかなく、他は全て他部隊の使い古しの野営テント。装備は人魔大戦の頃のものが8割で、最新の設備は水汲み器くらいのもの。そんな貧相な拠点でドラゴンと戦えるわけがないでしょう……。依頼文を読むに、帝国軍本部も支援要請を蹴ってるくらいですからね……。西方の方ならまあ知らなくても不思議ではありませんが……」



 うわ! なんかシレっとコケにされた!

 これだから都もんは……。

 まあ……事情は分かった。


 今のこの事態においてはそうでもないが、日ごろ税金食い虫と罵られている軍をそんな拠点の防衛に駆り出したとあっては、議会がバッシングを受けると考えたに違いない。

 かなり高額な指名料のかかるシャウトパーティーだが、正規軍を送り出すのに比べたらずっと割安だし、対ドラゴンの実績もある。

 まあ俺達だけで狩りきれたことないんだけどね……。



「依頼とありゃ受けるけどよぉ。“調査”でいいんだな? ガチのドラゴンってんなら、アタシら4人で討伐は出来ねぇぞ」



 先輩が腕を組みながら言葉を返す。

 ようやくコトワリさんのことに取りかかれそうだったのに、思わぬ遠征依頼が来て少し不満そうだ。

 だが、二つ名持ちは指名依頼を蹴ってはならない。

 これは絶対の鉄則だ。

 そんなこんなで俺達は、またしても重厚なクエストに駆り出されることになってしまった。

 シャウト先輩はため息をつきながら、コトワリさんの置いていった冒険者タグを見つめている。

 先輩ってコトワリさんへの入れ込み凄いよな……。




////////////////////




「じゃーんっス! コレ凄くないっすか!?」



 そう言ってミコトが見せてきたのは、ギンギラの金色に輝く盾。

 俺の顔がくっきりと見えるほどに澄んだ鏡面をしている。

 エドワーズ達から貰ったそれを、金色蛇龍の翼から剥ぎ取った素材で強化してもらったそうだ。


 ミコトの後ろで煙草を吹かすあの鍛冶屋のセクシー女店主は「こいつの加工には難儀したぜ? あんまりにも良い素材過ぎてもうアタシは興奮を抑えきれなくてよ……打ち終わった後つい店閉めて……」とか言っているが、聞こえないふりをしよう。

 まだ昼間も昼間ですよ!

 下ネタにノッてもらえないと理解したようで、彼女は煙草の灰をカンカンと落とし、こちらへ歩み寄ってきた。



「こういう鏡面みてぇなモンスター素材はな、魔法を反射する特性があんだ。それが金色蛇龍の鱗となりゃ、その反射性能は間違いなくトップクラスだ。おまけに強度も抜群と来てる」



 そう言うと女店主は失敗作が荒々しく詰め込まれた壺の中から黒い短刀を取り出し、「こいつはジェットワイバーンの刃と鱗で強化した鋼鉄製なんだが……なっ!!!」と、その鏡面をガン!と突いた。

 キィィィン!という快音と共に、短刀の刀身が砕ける。

 盾の鏡面には傷一つ入っていない。



「うおー! 凄いっス! これなら今度あんな目に遭っても、皆さんをお守り出来るっスね!」



 ミコトが盾を抱きかかえてピョンピョンと飛び跳ねる。

 確かにすごいなこれは……。

 くそぅ……もっと素材集めれてたら、他の武器も金色強化できたのに……。


 流石にブラッドレックスだらけの廃城では翼そのものを回収することは適わず、ミコトの盾一枚で使い切ってしまったのだ。

 つくづく惜しい……。



「大丈夫っスよ! 今度もドラゴンっスから! 今度はガイコツ龍の骨でみんなの防具を強化するっス!」



 ミコトは盾を背負い、ギラギラとした後光を発しながら言う。

 そうだな!

 今度はシャウト先輩の短剣とか、愛ちゃんの魚骨弓も強化してあげたいな!



「ほう……そりゃいい話じゃねぇか。アンタらの次なる収穫楽しみに待ってんぜ! コイツはお守り代わりだな」



 そう言いながら店主は、端材で作った腕輪と指輪を麻袋に詰めてくれた。

 それらには穴や窪みがいくつか設けられている。



「そいつはブランクアクセサリーだ。アタシにゃ精巧すぎて出来ねぇが、冒険者街の宝石屋にでも頼めばマジックアイテム化してくれるぜ。アンタらの持ってるアクセサリーをそっちに打ち直して性能アップなんかも出来るから行ってみな」


「マジっスか!? 雄一さん! 早速行くっス!」


「あっ! ちょっと待てって!」



 お代を置いて店を飛び出ていくミコト。

 後を追おうとする俺の肩を、女店主が掴んだ。

 うぉ!? 何ですか!?


 戸惑う俺の耳元で女店主はそっと囁き、先ほどのものよりもずっと小さな麻袋をひとつ、俺の手に握らせてきた。

 あ……ああ……。

 そんな……そんなことって……!!



「また来なよ。アンタらの収穫、楽しみに待ってんぜ」


「はいっ!!! ありがとうございますっ!!!」



 俺はビシッと直立し、カクッとお辞儀をし、ミコトの後を追った。


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