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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
最終章:釣具召喚チートで異世界を救う
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第9話:作戦開始!




 かがり火の列のど真ん中に据えられたやぐらの上で、愛ちゃんがどっしりと構えている。

 あの日のミコトを思わせる威風堂々っぷりだ。


 「恐れるな。とにかく気を張れ」という大隊長の指示を受け、愛ちゃんは勇気と怒りで不安や恐怖をかき消し、エラマンダリアスをおびき出すための餌を演じている。

 堂々としていればいるほど、その者の「気配」は高まるもの。

 自らのプロデュースした腐れ庭園を焼いた愚か者の気配を察知して、必ずやエラマンダリアスはやって来るだろう。


 愛ちゃんの方はいい。

 周囲にずらりと配置された騎士団の構える改良型ハナビ砲が彼女を守ってくれるだろう。

 問題はミコトだ。



「おいおい……なんか随分けったいなモノが出てきたぞ……」



 先輩が投錨機の上から下を見下ろして言う。

 「おいちょっと見てみろ」と手招きするので、俺は操作席を離れ、先輩の横に着地する。

 ……。

 何だアレ!?


 先端を槍のように尖らせた巨木の丸太が、巨大な木製車輪でガラガラと走行している。

 戦車……と言って良いのだろうか?

 しかもその槍の根元にはミコトの封じられた妖龍琥珀が据えられていた。

いや、本当に何だよあれ……。

 困惑する俺の目に、かの女小隊長ちゃんの姿が映る。


 彼女はミコトのすぐ横に立ち、金属製のレバーをガシガシと動かしていた。

 なるほどアレが操縦桿なのかと一瞬感心してしまったが、あの戦車はもしかしなくても、妖龍に突っ込むための突撃兵器である。

 ……。

 …。


 そうか、合点がいった。

 この谷の地形を利用した砦跡に、愛ちゃんを使って妖龍をおびき出し、騎士団の攻撃で龍を狙いの場所に誘導……。

 そして俺が操るこの投錨機で龍の動きを封じ、その隙に木槍戦車を敵の消化液生成器官目がけてぶっ刺して消化液を体外に噴出させ、ミコトの救出と龍への致命傷を狙おうという魂胆だ。

 となると、ミコト共々溶解液を盛大に浴びるであろうあの場所は……。

 俺が見ているのに気づいた女小隊長ちゃんが、俺の視線に応えるようにコクリと頷いた。




////////////////////




「それではこれより、腐蝕妖龍・エラマンダリアスの討伐、及び冒険者ミコトの救助任務を開始する! 魔女会議の恩を返す時が来たぞ! 心してかかるように!!」



 全ての装備、人員の配置が終わり、俺の投錨がほぼ百発百中で定点に着錨することを確認した女大隊長が拡声筒で叫ぶ。

 同時に騎士楽団のラッパの音と共に信号ハナビ弾が放たれ、夜の砦がパッと明るくなる。

 白いハナビは作戦の開始、赤いハナビは作戦の中止、青いハナビは一斉砲撃、黄色いハナビは砲撃止めの合図だ。

 そして、緑色のハナビは、俺が操る投錨機含む拘束兵器射出の合図である。


 俺達は緑のハナビが上がるまで、ここで待機。

 俺とシャウト先輩は、まんまとこの場所に釘付けにされてしまったわけだ。

 魔女会議の恩……ねぇ……。

 俺は騎士団の為に引き受けたわけではないんだが……。


 大隊長に言わせれば、俺があの会議を引き受けてくれたおかげで、騎士団は誰一人欠けることなくこの魔物動乱に参加でき、かつて金食い虫と揶揄された騎士団は、今や民と皇帝のために戦う誉れ高い部隊として喝采を浴びているという。

 それ故、この作戦では、誰もが俺への恩に報いるべく、士気はかつてなく高いらしい。


 ……。

 やめてくれ……。

 あの子の犠牲を正当化出来るような理由を与えないでくれ……!

 そう思い悩む俺の肩に、突然激しい衝撃が走った。



「あ痛っ……くない……?」


「何ぜぇぜぇ言ってんだよオメーは、もうちっと肩の力抜け。龍が来る前にへばっちまうぞ」



 先輩が俺の両肩に手を当て、治療電流を浴びせてくれているのだ。

 ああ……暖かくて、ピリピリっとして、気持ちいい……。



「なあユウイチ」


「はっ……はい!」


「いいか、後悔しないようにしろ。重い後悔を抱えて生きるのは、死ぬより辛いことだからよ」



 俺の肩に置かれた手に力が籠る。



「お前がどんな判断をしても、アタシは全力で助けてやるし、その結果がどうなっても味方になってやる。だからな……」

「お前にも、ミコトにも、アタシらにも後悔が残らない戦いにしようぜ」



 そう言って先輩は俺の背中をバン!と叩き、ひと際強力な治療電流を流し込んできた。

 くぅ!! 効くっ!!

 先輩……ありがとうございます!!

 俺……出来ることをやり尽くします!!



「へっ……いい目になったじゃねぇか。 おい……! 来たぜ……!!」



 先輩が身構えるのと同時に、敵の出現を知らせるラッパの音が、砦に木霊した。


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