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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
第2章:その男 釣神であるゆえに
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第25話:大討伐!浮遊島嶼群現る! エルフとの遭遇




「この弓は魔力を込めて編み込んだ蔓で作られてんだ。これはエルフの伝統的な武器でな」



 夕暮れのベースキャンプ。

 先輩が戦利品の弓を俺達に見せる。

 確かに一般的に市販されている弓は木材や金属を加工して作られているが、先輩の手にあるそれは、固い植物の蔓が幾重にも編み込まれ、軽量ながら金属のそれに引けを取らない張力を兼ね備えている。



「しかしエルフは友好亜人のはずでは? なぜ突然狙撃を……?」


「それは分からねぇ。だからこれを持って帰ってきたのさ」



 先輩はフェイスの疑問に、弓の弦をなぞりながら応えた。



「エルフ族にはな、ノーマル、ハイ、ダーク問わず自分の武器は自分で作るっつー風習がある。そんで、それを奪われるのは屈辱や恥とする文化も持ってんだ。つまりだ、これをアタシが持って帰ったとなりゃ、この持ち主は必至で奪い返しに来るだろうよ」



 その口元には、不敵な笑み。

 いや、ちょっと……。

 それエルフがまた襲ってくるってことじゃないですか!!



「そこをとっ捕まえればいいだろうが! 大体、オメーのオートガードで止められる程度の攻撃しかできねぇエルフなんざ小物だっての」


「やけに詳しいですわね。エルフの血筋が絶えたのはもう数百年前ですのに」



 当然の疑問を口にするネスティ。

 その人ね……それっぽく見えないけど結構博識なんです……。



「でも凄いですね! エルフなんてゲー……絵本でしか見たことないけど、本当に美形揃いで耳が長いんでしょうか! 会ってみたいです!」



 ムッとした先輩が何かを言おうとしたのを遮って、愛ちゃんが嬉しそうな声を上げた。

 君ねぇ……。

 まあ、俺もちょっとは興味あるが……。



「ったくどいつもこいつも……。ま、とりあえずこれは捕虜代わりにここに吊っとくぜ」



 先輩はそう言って、パーティの旗にエルフの弓をかけた。

 こんなのに釣られてくるのかねぇ……?

 エルフって一応天使族とか悪魔族みたいな人間の上位種だろうに……。



「はーい。夕飯できたっスよ~」



 と、ミコトが大鍋を抱えてきた。

 ……。

 まあ、上位種が必ずしもヤバい奴とも限らないか……。



「今日は海岸で取れた蟹と、持って来たお味噌玉と干し根菜で簡単なお味噌汁作ったっス。お米はまとめて炊いて、おにぎりにしといたっスから、お好きな量を皆さんで取って食べてほしいっス」


「ちょっとこれ……クエスト中の食事ですの!?」



 ネスティがお約束のリアクションを取る。

 そうです。

 我らがシャウトパーティはクエスト中も美味しいごはん食べるんです。


 一口飲むと、おお……。

 旨い。

 二つに割られた磯蟹が、いい出汁してる。

 おにぎりとよく合う味だ。



「なかなか変わった色味ですが、美味しいですね。具のカブもいい具合に味が染みていて素晴らしい……」



 フェイスが蟹味噌汁をスプーンで上品に啜る。

 ネスティも同様に、高貴な雰囲気でカニの身や根菜を口に運び、「美味しいですわ」と、小さく微笑んだ。

 君たちの食べ方も大概クエスト離れしてるぞ……。



「美味しいでしょ~。ミコト先輩もユウイチ先輩も料理上手なんだよ~」


「羨ましいですねー。ボクらは毎回美味しくない行動保存食ばかりです」


「フェイス。次からはこのレベルの食事をお願いしますわ」


「そんな無茶な~」


「私で良ければ、クエストでお料理するコツ教えるっスよ」


「我らの地で食す冒涜の味は美味か?」



 等と、和気あいあいと話す愛ちゃん達。

 ほら、先輩もなんか言ってあげてくださいよ!

 ネスティあれで結構気を使うタイプなんですから!


 と、先輩の方を向いたが、先輩は目を見開いて硬直していた。

 どうしたんすか先輩……?

 先輩の視線の先に、俺も視線を合わせる。


 ………。

 ……。

 …。



「我らの地で食す冒涜の味は美味か。と聞いているのだが」



 先輩が見つめる先。

 2mはあろうかという巨大な人影が、こちらを見下ろしていた。



「で……出……!!!」



 俺は叫びながら咄嗟に両腰の双剣に手をかけたが、その手が柄を掴むことはなかった。

 全身から力が抜け、視界が黒く染まって……。




////////////////////




「は!? ここは!?」



 目を開けると、知らない天井。

 えらくキラキラした……。

 宝石のような……。


 いやそれどころじゃない!?

 皆は!?



「お目覚めになりましたか?」


「いや誰!?」



 声の主の方を向くと、これまた異様にデカくスレンダーな耳の長い女性が……ていうかエルフが、部屋の隅にある扉の前に立っていた。

 周囲を見渡すと、壁が白色半透明なクリスタルで出来ている以外は、至って普通の、8畳程度の個室であった。



「ここは私たちの村ですよ。天使様」


「は!? 天使!?」


「ええ。貴方からは天のマナを感じると長老が言っておりました。この方と共に降天なされた方ですね?」



 そう言って彼女は部屋の壁を指さす。

 すると、同じような部屋で眠るミコトの姿が、まるでプロジェクターのように映し出された。

 え!

 何この技術!?



「まあ……そう言われたらそうだけど……。ちょっと状況を教えてくれないか?」


「はい。あなた方、猿人の一団は我らの地に踏み入り、土地を踏み荒らし、生き物を奪い、あまつさえ仲間の弓を盗みました。そのため、天罰による死を持って償わせようと捕らえたものの、我々と同格以上の方が複数人紛れ込んでいたため、ここで一時拘束させていただいている次第です」



 そ……そんな物騒な!?

 ていうかナチュラルに高慢!?



「じゃあ皆は無事なんだね?」


「ええ。ただし、長老の意思によっては、猿人の方々は処刑も妥当かと思われます」



 そう言って、彼女がまた壁を指さすと、水晶で出来た卵型の牢屋に閉じ込められたフェイスとネスティ、そして愛ちゃんの姿が映し出される。

 あと複数人とっ捕まった冒険者の方々が……。

 オイオイオイ……!

 やべーぞ!!



「な……なあ。俺って君たちと同格以上の存在なわけでしょ? ここは多めに見てもらえないかな。彼らも仲間なんだよ」


「それは長老の決めることです。なにより、天使様とは古より不干渉の契りを結んでおります故、彼らの処遇は我々が握っています」



 ダメだ。

 この方々は俺達の理とは違うルールで動いてる……。

 くそう……こんな時コトワリさんがいてくれたら……。


 俺は有りもしない打開案を頭の中で高速回転させる。

 が、少なくともこの状況下で出来ることは少なすぎだ。


 テレポートは……当然のように出来ない。


 あのデカエルフを倒して逃げる……?

 いや、あの扉から出たとして、「村」ならあっさり取り押さえられてしまうだろう。


 長老への面会を頼んで、交渉を試みる……?

 いや、どうやら不可侵の契りとやらを結んでいる手前、“天使サマ”であろうが俺の意見や指示は無効だろう。

 何より、こんなよそ者を迂闊に長の元へ連れて行くとも考えにくい。



 ………。

 ダメだ!

 全く策が出てこない!

 どうすりゃいいの!?



「ところでお聞きしたいのですが……」



 デカエルフがその長身をかがめ、俺の頭を撫でてきた。

 え、何ですか……。



「猿人がやって来た……ということは、この地はもしや「楽園」の大陸なのでしょうか?」


「ほあ? 楽園の大陸……? 知らないけど……。ていうかちょっと……! 頭撫でるのやめてくれないか」


「あっ! 申し訳ありません! なにぶん見た目が可愛らしいものですから……つい……。失礼ですが、おいくつですか?」


「明確に測れてないけど、大体27~8くらいだよ。寿命の3割強くらい生きてるって言えばいいかな」


「はぁぁぁぁ~! 猿人や天使様はそんな幼子のような姿で成人するだなんて……。なんて素晴らしい種なのでしょう! 大人になっても、お耳はずっと丸いままなのですね……」



 そう言いながら俺の耳を触ってくるデカエルフ。

 はぁぁん! やめい!!!

 ていうかこんなことしてる場合じゃないんだって!

 こうなりゃダメもとだ!



「長老に会わせてくれ! 説得して皆を開放させる! そんで全員で島から出て行けばいいんだろ!?」



 デカエルフに詰め寄る俺

 彼女は俺を抑えようと腕を掴んできたが、体躯に見合わず、その力は貧弱。

 見上げる程の巨体が、俺のさほど強くもない腕力で壁際に押しやられていく。

 ゆったりとした服を着ているため、気づかなかったが、その体は驚くほど細い。

 

 あと……胸がすげーデカい……

 いや、それは今どうでもいい!

 「会わせろ」「出来ません!」の押し問答をしていると、「その必要はねぇぜ」と、聞きなれた声が聞こえ、水晶の扉がグゴゴ……と音を立てて横に開いた。

 先輩! ご無事で!



「ほれ。手形だ。これでアタシらはこの街で自由に動ける」



 そう言って先輩が投げてきたのは、よく分からない紋様が描かれた菱形のプレート。

 ど……どうやってこれを!?



「ここの長老と交渉した。ちょっとばっかし面倒な交換条件が付いたがな……。ついて来な」



 俺は戸惑うデカエルフに別れを告げ、部屋から出る。

 すごい……。

 廊下も全部水晶だ……。



「先輩。他の皆は?」


「解放出来たのはオメーだけだ」


「えぇ!?」


「今は、な。ったく……。クソみてーな交換条件つけやがって……」



 先輩はブツブツ言いながら廊下を歩いていく。

 交換条件……?

 なぜ俺だけ解放を……?



「その者でいいのだな?」



 思考を巡らせていた俺の眼前に、あの奇襲エルフが立ちはだかった。

 ひぃ!!

 凄い威圧感!

 でも無茶苦茶良い体してるし美人!!!



「ああ。コイツでいい。他の連中にはくれぐれも手ぇ出すんじゃねぇぞ。あと、この島は今ギルドの大討伐対象になってっから、人死にが出るような事態となりゃ、シャレにならねぇことになるからな」


「ご忠告感謝する。猿人は数ばかりは多いと聞くからな」


「ケッ……。いけ好かねぇ」


「では、上手くやれ。上手くできた暁には褒めてやろう」



 奇襲エルフはそう言うと、俺達の武器を投げてよこした。

 なんかよく分からないアイテムセットも付いてるけど……。

 な……何を頼まれたんですか先輩……?



「なーに……。ちょっとした届け物さ……」



 先輩は苦笑いをしながら続ける。



「ドラゴンへのな」


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