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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
第2章:その男 釣神であるゆえに
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第21話:白銀のお土産




「オイオイオイ! お前らすげーじゃねぇか! 龍殺しなんざアタシでも年一くらいしかやらねぇぞ!」



 クエストの報告ごとを終え、屋敷に戻ると、先輩がガッシリと肩を組んできた。

 ……。

 ちょっと吞んでますねアナタ……。

 ていうかやっぱり、龍狩れるんすねアナタ……。



「あ! おかえりなさいっす。もう先輩ってばテンション上がっちゃって、高級食材たんまり買い込んできて大変だったんですよ~」


「んだよ~愛~。子分どもの名が轟くのを喜ぶのはカシラとして当然だろ~?」



 そう言いながら愛ちゃんに絡みに行く先輩。

 相当呑んだようで、結構な千鳥足だ。

 まあ、あそこまで喜んでもらえるとは光栄です先輩……。



「でも凄いですよね先輩! 龍っていったら国立正規軍とかが大部隊で狩る相手って聞きましたよ。どうやって倒したんですか!?」


「陽動して古代の対龍兵器で倒したんだ。まあ、ほぼアレのおかげだよ。生身じゃ戦うどころじゃなかったしね」


「バーカ野郎! それでいいんだよ! 何をしようが、使おうが、最終的に龍の死体が転がってりゃ、それで討伐成功だ。アタシだって身一つで殺し切れたことなんざねぇっての!」



 愛ちゃんの肩を借り、ガハハと笑う先輩。

 あーあー……ふらついちゃって……。

 ちょっとこれは……寝させた方がいいな……。

 俺は先輩を抱え、二階の寝室へとテレポートした。



「ユウイチィ……。アタシをベッドに寝かせてナニする気だ? ん?」



 等とのたまう先輩に布団をかける。

 「喜んでくれるのは嬉しい限りですけど、体壊しちゃいますよ」と言うと、先輩は「んだよ~。ノリ悪いなぁ」と、布団を頭まで被った。



「先輩。ありがとうございます。先輩のおかげで俺達龍を……まあ幼体ですけど、討伐して生還できる程度には強くなれました」


「……。片田舎の釣りバカ惚気野郎が立派になりやがって……。アタシは嬉しいぜ……」



 ……。

 先輩。

 泣いておられる?



「泣いてねーよバカ! ただなぁ……アタシはお前らが水龍と会敵したって聞いた時は……マジで……お前ら死んじまったんじゃないかって思ってよぉ……」


「そう易々とは死にませんよ。そういうスキル配分ですからね俺……うわっ!?」



 突然、先輩が起き上がったかと思うと、俺の頭をホールドし、その柔らかさよりも筋肉質が勝る胸に押し付けてきた。

 相変わらずその細さからは想像もつかないような腕の力で抑え込まれ、彼女の表情をうかがい知ることは出来ない。



「よくやった。お前らのこと、心から誇りに思う」



 しばらくした後、先輩は酔っているとは思えない、はきはきとした声で俺を、俺達を褒めてくれた。

 ……。

 ありがとうございます。

 俺も、これほどまでに目をかけてくれる親分の下に就けて誇らしいです。


 俺の言葉を最後に、お互い何も言わないまま時間が過ぎていく。

 ふと、先輩の吐息が一定間隔で、深いものに変わっていることに気がついた。

 ……。

 寝てるし……。


 どっからどこまでシラフだったのか知らないが、顔から火が出そうな会話をしてしまった気がする。

 はぁ……。

 先輩、こんな着崩してたら風邪ひきますよ……。

 俺は先輩をお姫様抱っこの体勢で抱き上げ、ベッドに寝かせ、布団をかけておいた。


 なんでだろうな……。

 少し前ならこういうことするのにドキドキしてたけど、今は不思議と、殆ど何ともない。

 長く一緒に暮らすうちに、家族を見るような感覚に変わってきたんだろうか。


 そう言えば先輩って何歳なんだろ。

 駆け出しのころは、何となく20後半くらいかと思ってたけど、そこから順当に年取ってたらもう30過ぎだよな……。

 

 その割に……。

 えらく肌がスベッスベのピッチピチな気もするが……。

 やっぱ肌ケアとか頑張ってるんだろうか?


 しかし、むぅ……。

 この頬……。

 癖になる……。



「えーっと……。これは浮気現場なんでしょうか……?」



 俺の危険ないたずらは、愛ちゃんの声で正気に戻されるまで続いた。




////////////////////




「へへへ……いいじゃねぇか。二つ名持ち3人のパーティーはこれくらいキメとかねぇとな」



 翌日、いつもと変わらぬ調子で、一党を示すオレンジの布を腕に巻く先輩。

 その布には、俺がはぎ取って帰った白銀水龍の鱗が一列縫い付けられていた。

 数々の戦いを経て、すっかりボロくなった一党識別布を、この機会に一新したのだ。

 なにせ鱗は一枚でも俺の両手に余るサイズ。


 5人分の布と、お守りピン、そして、ちょっとしたアクセサリー程度なら十分すぎる量であった。

 先輩と俺、ミコト、そして、無期限離脱中ではあるがコトワリさんはオレンジの布、そして、俺のパーティーの弟子としてギルドに登録されている愛ちゃんは青い布を、それぞれ左腕に巻き付ける。


 おお……。

 なんかパーティーとして格が上がった感じがする!



「龍の鱗は魔法防具と同じような効果があるからな。巻いてるだけで防具にもなる優れもんだぜ」



 そう言って、自身の腕に巻いた布を感慨深そうに見つめる先輩。

 その首元には、俺がプレゼントした、スピンテールジグのブレードを模した鱗ペンダントが光っている。

 日頃の感謝を込めて……ってやつだ。

 ちなみにミコトとはお揃いの指輪、愛ちゃんにはミサンガをプレゼントした。


 随分ゴージャスな話ではあるが、天然真珠を思わせる透き通った煌めきをもつその鱗は、成金的ないやらしさなど全く感じない。

 むしろ魔法強化のためにジュエルジェムを大量に装備している冒険者の方がよほど派手だ。


 ちなみに、もう一つ俺がはぎ取った水龍の牙だが、俺の双剣のエレメンタル強化に使わせてもらった。

 これで俺の双剣は水のエレメントと氷のエレメントを獲得し、俺の戦闘力を一段上に押し上げてくれるだろう。



「っしゃあ! これならやれそうだな!」



 先輩がやる気満々でテーブルの上に叩きつけた低級刷紙には「集え! 謎の浮遊島嶼群大討伐クエスト!」という文字が躍っている。

 大陸に、また新たな異変が起きようとしていた。


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