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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
第2章:その男 釣神であるゆえに
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第18話:指名依頼セカンド 龍の大顎




 ヒュードラーは強い。

 普通に戦っても勝ち目は薄い。

 だが、そんな強敵をも、人類は絶滅寸前まで追い込んだ。

 それはひとえに人類の叡智、そして、脅威に立ち向かう勇気の賜物だ。


 この海域もその昔は、ヒュードラーやリヴァイアサンを始めとする海龍が幾度となく襲来したという。

 そしてそれは、魚人の文明にも牙をむいたとされる。



「それでこの遺跡には対海龍の兵器が存在すると」


「でもそれ、最低でも200年前の武器なのよね? 使えるの?」


「一応心当たりはあるんだ~」



 俺達はターレルの案内で、孤島の奥地へと向かっていく。

 海上は大荒れだが、島の中心部周辺は晴れていた。

 やはり幼個体だけあって、影響を及ぼせる範囲は狭いらしい。


 雷雨を抜け、森も抜けた先には、美しい水場があった。

 島のヘソと呼ばれるその水場は、何と海底遺跡群と繋がっていて、大型の魔物が襲ってきた際には、住民が島内へと避難する経路になったと考えられるそうだ。


 実際、このヘソと隣接する洞窟では、魚人らの骨が大量に出土するという。

 人魔大戦のさなか、魔王によって使役された海を沸き立たせる“赤き地獄の獄炎海龍”、ヴォルカノヒュードラーがこの一帯を攻め、魚人たちは皆ここへ避難したまま、ついぞ海へ戻ること叶わず全滅したという記録が残っているらしい。


 魔王軍はまず人類に味方する亜人種たちを辺境から各個撃破絶滅せしめた後、人類への本格攻撃を開始したというのだから、シャレにならない殲滅戦だ。

 その一環として、彼らはこの地で絶えたのである。



「彼らは遥か海底に生えている通称“大龍牙岩”って言われる岩を加工して、迫る龍を叩き潰す防衛兵器を使っていたんだって。そんで、それを操作していたと思しき場所には、この穴を通って行けるんだってライザが言ってたんだ~」


「……。あ、また俺の出番ってわけね……」


「申し訳ないんだけどね~……。流石に何十メートルもは潜っていられないや~」


「私も水中は無理っス……」



 ………。

 まあいい。

 潜水スキルも実はレアスキル。

 持っていないのが普通である。


 それに俺はパーティーリーダー。

 パーティーに危機が迫った時には、持てる全てを使ってそれを脱する義務があるのだ。

 さて……もうひと潜りするか!


 準備運動を始めた俺の元に、レアリスが歩み寄ってきた。




////////////////////




「どう? 私役に立ってる?」



 俺の前を飛ぶ光球が尋ねてきた。

 ええ、驚くほど助かってます……。

 その正体は、光を纏った、小さな妖精。


 レアリスが自身の魔力を妖精型に形成し、明かり兼通信手段として俺に同行させてくれているのだ。

 島のヘソは深い縦穴になっていて、底の方は殆ど真っ暗に近かった。

 彼女がいなければ、俺は遺跡へと繋がる通路を発見できずに迷っていただろう。

 

 さっき地上で「私にも手伝えそうなこと閃いたわ!」と言ってきた時は、せいぜいバフ魔法をかけてくれるくらいかと思ったのだが、いやはや……おみそれしました。



「それにしても、すごく長い年月放置されてたのに、全然崩れてないだなんて……。凄く頑丈なトンネルなのね」


「だな。岩の加工技術に長けた種だったんだな」



 先ほどの遺跡探索でも思ったが、魚人は石の加工技術が凄い。

 現代でも残っていたら、今後の文明発展において多大な貢献をしただろうに……。

 魔王許すまじ……。


 そんなことを考えつつ、水中通路を抜けると、さっきまで探索していた海底遺跡群を一望する、街の高台に出た。

 街の外周部分の岩盤に穿たれた隠し通路のような場所で、岩盤をくり抜いた窓から、街を見下ろすことができる。

 上へ続く通路と、下へ降りる通路があったので、俺はとりあえず上へと昇ってみた。



「ほう……確かにここは戦闘指揮所みたいな雰囲気だが……」



 道はすぐに、四角い空間で行き止まってる

 元の世界で見た、軍艦の戦闘艦橋のような印象を受けるそこには……特に何もなかった。

 レバーとか、兵器を動かすためのスイッチの類でもあればと思ったんだが……。


 他に何か、手掛かりになりそうなものはないか……?

 そう思いながら指揮所から街を見渡してみる。

 ………。

 ……。

 ん?



「どうしたのユウイチくん? 何か見つかった?」



 レアリスがぼんやりと光りながら俺の顔を覗き込む。

 俺は彼女に、街の中心部を指さしながら言った。



「なんかさ、この地形、“顎”みたいじゃない?」



 先ほどは分からなかった、この町の奇妙な特徴。

 それは、戦闘指揮所中心に、逆V字に並んでいる石柱群。

 水深は街の再上層部10~25mの範囲に整然と並ぶそれらは、非常に鋭く尖っている。

 さっき海側から潜って見た時は、街の飾りか何かに見えたそれが、龍の下顎に並ぶ歯のように見えるのだ。



「確かに……。ん!? ユウイチくん! あれ! 上にも無い!?」



 レアリスが小さな指で刺した先。

 頭上で白波を立てている海面の狭間に、確かに見えた。

 下と同じ間隔で並ぶ、鋭い石柱の列が……。

 それは、まさしく龍の上顎。


 よく見れば、戦闘指揮所の左右には、海藻に覆われてはいるものの、大きく深いレールのような線が走っており、そのレールを利用して、大顎を閉じさせるギミックがあるように思える。


 龍を叩き潰す武器って……。

 そんな物理的な意味合いだったの!?


 俺が上を見上げて驚愕していると、タイミングを見計らっていたかのように、ポーチのカードたちが脈動を始めた。


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