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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
第2章:その男 釣神であるゆえに
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第3話:はじめての指名依頼 出征港の氷槍巨大魚




 中継地、アーチンの街での一泊を終え、俺たちは依頼先、「出征港」へと飛んだ。

 アーチンから出征港までは、ほんの2時間程度。

 朝食に、朝市で買ったオオビレカワカマスの焼き干しと、握り飯を食べ、眼下を流れる川を見つめているとすぐ、巨大な城壁が見えてきた。


 ちょっと待ってすげぇ規模だぞ!?

 と、一瞬驚いたが、近づくにつれ、その全容が明らかになった。

 確かに、デイスのそれよりもだいぶデカい城壁のサイズだが、その大部分は崩落し、並ぶ建物も、大半が崩れたり、蔦に覆われている。

 町一つが丸々廃墟だ……。



「ここは廃都:プリアキャンサスだにゃぁ。その昔、大陸が群雄割拠の時代に、北方の公国が都にしてた街らしいんにゃけど、大陸平定戦争や人魔大戦を経てこんなんなっちゃったらしいにゃ。 出征港はその一角を再建して作られた街なのにゃ」


「ま、この辺は雪深いし、作物の育ちも悪いし、多くの人が住むのに向いた場所ではないわよねぇ。私が言えたことではないけど」



 なるほどなあ。

 確かに、原型を保っている建物の屋根は、降雪地帯らしい、鋭い三角屋根だ。

 まあ……。

 豪雪地帯の過疎が進むのはこの世界も同じか……。


 ただ、荒廃した街にも人の生活はあるようで、ところどころで煙突から煙が上がったり、洗濯物が干してあったりする。

 あんまり治安は良くなさそうだ。

 そんな廃都の向こうには、小規模ながら真新しい砦、そして、朝日をうけた大海に輝く無数の氷柱が見えた。



////////////////////




「うわ! こりゃ凄いな……」



 出征港には薄氷が漂い、港外には多数の流氷や氷柱が漂っていた。

 何事だ?



「この地域は今の時期、北方からの海流が流れ込むから、流氷自体は変なことではないんだが……。アレがな……」



 依頼人の、港湾ギルドの理事長が指さした先で、鋭い口吻を持った巨大魚が大ジャンプしていた。

 うおおおおお!

 でけぇ!

 釣りてぇ!!!



「あのでっかい棘みたいなので船をつついてくるし、トゲトゲした氷柱を浮かべて航路を邪魔してくるし、しかも落ちた船員を食ってくるもんだから、もう船乗りたちがすっかり怖がってしまってな……」


「そりゃ誰でも怖がるっスよ……。港には入ってこないんスか?」


「入ってくる。そんで停泊してる船を突いて舟艇に穴を開けたり、積まれてる荷物を落としたりするんだよ。今の時期は砕氷能力のない船は港の奥に押し込んであるんだが、そういう船は底が脆いから簡単に穴を開けられてしまってね……」



 理事長がため息をつきながら港の隅を指さした。



 ほら、あそこにマストが何本か浮いてるだろう? アレがやられて着底してしまった船さ。 おかげで残ってる船全部陸揚げする羽目になってしまってね……。作業場が狭いったらありゃしない。弩砲もいくつか設置したんだが、何せ素早いから全く命中しなくてねぇ……」



 確かに、港の岸壁の上には、木の柱によって固定された船と、旋回式のバリスタ弩砲が多数並び、明らかにスペースを圧迫している。

 隣接する魚市場にも帆船が並べられ、仲買人の人たちも迷惑そうだ。

 こりゃ、さっさと解決してあげないといかんな……。



 それはそうとして……。

 ちょっとミコトこっち来てくれる?

 俺はミコトと一緒に物陰に行き、ずっと思っていた疑念を問うた。



(アレ天界生物じゃないよな?)


(ち……違うっス!! あんなの知らないっス!)


(ああ、それならよかった)



 完全に天界から来たサメだと思っていたが、違ったようだ。

 よし、これで気がかりは消えた。

 これで問題なくこのビッグゲームと向き合えそうだ。


 すっきりして戻ると、マーゲイがえらくニヤニヤしている。

 「お前結構早撃ちだにゃあ……」とか言ってきたので、アイアンクローで黙らせた。

 こんな昼間から盛るか!!




////////////////////




 さて、あの魚を釣……いや、討伐するためには、まず魚が港に入ってくるのを待たねばなるまい。

 入ってきたところを俺が釣り、トドメにバリスタを打ち込んでしとめるという、至ってシンプルな戦法だ。



「港におびき寄せるにはどうするにゃ?」


「そりゃもちろん、待つのみよ」



 俺はシーバスロッドを召喚し、カブラジグサビキ仕掛けをセットする。



「にゃぁ!?」


「釣りの基本は“待ち”だぞマーゲイ。とりあえず俺はここで張る」



 俺はさらにテントとキャンプチェアを召喚し、港の入り口付近に釣り座を構えた。

 とりあえず、餌を釣らないとな……。



「オイオイ……ミコトちゃんにゃあ。こんな感じでいいのかにゃぁ?」


「まあまあ、こと釣りに関しては知識も技能もバッチリっスから、とりあえず雄一さんの指示があるまでのんびり待つっスよ」


「そうね。この流氷だらけの海に出て戦うのはあまりにも不利だし、ここはユウイチ君の釣りの腕に任せましょう」


「にゃぁ~……。ボク退屈なのは苦手にゃぁん……」



 マーゲイが愚図るが、とりあえず釣れたソウダガツオ的な魚を刺身にして食わせてやると、「うおおおお! めっちゃ旨いにゃ!! もっと……もっと釣ってほしいにゃ……」と、俺の肩に顔を乗せてゴロゴロと喉を鳴らしてきた。

 お前は漁港の猫か。


 ふむ……。

 まあ、多分ベイトはこの魚だろうな。

 俺は続々と釣れるソウダを一旦バケツにキープし、青物用フカセ竿にセットした泳がせ浮き仕掛けにかけ、港の中央へと投げる。


 あとは港にあいつが入って来れば、サクッと釣ってクエスト完了だ。

 まあ、言うは易しというもの。

 魚の気分は魚次第。

 理屈で魚が釣れれば苦労はしない。

 沖合ではまた、槍のような氷柱が乱立していた。


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