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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
第1章:オーダー! 恐怖の魔女会議
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第13話:会議前日!




 会場となるテーブル巨岩の周囲は様変わりしていた。

 麓の湖周辺にはキャラバンのベースキャンプが多数設営され、ミガルー用の臨時飛行甲板や、国賓席と思しき大掛かりなやぐらが立っている。

 周りの巨岩には足場がいくつか設置され、有事に備える騎士団員達が防衛演習に励んでいた。


 なるほど。

万一敵が会場に乗り込んでくるようなことがあったら、あの足場から魔法なり矢なりで狙撃するわけだな。

 なんか筒状のものが設置された足場もあるんだけど、アレは何なんだろう?



「なんか……。不思議な景色っスね」



 ミコトが空を見上げて呟いた。

 時間としてはまだ真昼だというのに、会場上空は深い青色に染まり、雲一つないそこには星が輝いている。

 これは魔女会議と何か関係あるんだろうか……?



「ほっほっほ。一足早いが、風の魔女のイタズラかのう」



 そう言った法王サマは「いい景色にはいい酒が合うのう」とか続けつつ、何やらグラスを傾けていた。

 アンタ一人だけエンジョイしすぎだろ!。


 しかし風の魔女のイタズラって……。

 イタズラでこんな天体現象みたいなの起こせるのか……。

 やっぱ規格外だな魔女サマ方……。


 そんな天変地異を接待する羽目になった自分の不運を呪いつつ、俺は接待の準備に取り掛かった。


 まず、特設されたキッチンテントへ持って来た物資を運び込む。

 無論、クーラーボックスは最優先で冷暗所に入れなければならない。

 ミガルーに積んで持って来たクーラーボックスの中には、釣り具扱いで召喚できた密封式のビニール袋がミッチリと収まっている。

 中身はもちろん、フカヒレ料理のタネだ。


 ある袋にはフカヒレとあっさり生姜スープ。

 またある袋にはフカヒレと醤油仕立ての鶏ガラ&海鮮スープ。

 そしてある袋にはフカヒレと甘いフルーツシロップ。

 等々……。


 フカヒレはじっくりとスープを吸わせることで味わいが増していくもの。

 試食した時よりもずっと旨くなっているに違いない。


 ただ、この子達はまだ出番じゃない。

 魔女会議は明日の昼からなので、それまでは氷たっぷりのクーラーボックス内で待機だ。

 取り急ぎ作らないといけないのは、フカヒレラーメンのスープである。


 ラーメンのスープは完成してから一晩も置けば酸化し、味が劇的に落ちる。

 そんなものを究極生物様にお出しするわけにはいかない。

 提供する時間を考えれば、明日の早朝頃に完成するのが理想である。


 となると、今から昆布出汁を取り、夕方ごろから鶏ガラと野菜等を昆布と入れ替わりに入れ、アクを取りながらじっくりコトコト12時間くらい煮込めば、丁度いい時間になるはずだ。


 早速、寸胴鍋に水をたっぷり入れ、北方の港「ペスカディ」から届いた肉厚な乾燥昆布を鍋いっぱいに沈める。

 かまどにはかけず、このまま半日冷暗所で放置しておく。

 水で戻すのは、フカヒレに付いた味を阻害しない、上品なうま味を出すためだ。

 昆布をじっくりコトコトやると、濃厚なうま味が出るが、同時に昆布の風味も立ってしまい、際立たせたい味をぼかしてしまう。


 俺が寸胴鍋を冷暗所へ運んでいると、コック姿の人たちがゾロゾロとテントに入ってきた。

 何ですか、何ですか、と困惑する俺をよそに、彼らは野菜を手際よく切ったり、丸鶏を塩揉みしたり、肉やスパイスを炒めたりしている。



「ユウイチ殿。後は我々にお任せを」



 聞き覚えのある声をかけられ、テントの入口へ振り返ると、以前皇都で一緒に釣りをした三白眼女騎士ちゃんだった。

 よく見ると、コック集団の中に、あの夜の釣りメンバー4人も混じっている。

 ジト目クール系女騎士ちゃんが「助っ人だよ~」とか言いながらピースサインを決めた。



「お任せをって……。君らは騎士だろ? 料理とか専門外じゃないの」


「ふん! 何を仰いますことやら! 我々は騎士団補給部隊の給仕班! 戦いだけでなく、料理にも長けているのです!」


「あー……。君ら手合わせに来ないと思ったら実戦部隊じゃなかったのか」


「いえ!! 実戦もしますが補給が主任務なだけですので!!! 勘違いしないでくださいます!!?」



 三白眼ちゃんはそう言ってフンと鼻を鳴らすと、おもむろにサバクスイギュウ肉を持ち上げると、切れ味抜群のナイフでテキパキと捌き、熱されたフライパンでジュウジュウと焼いていく。


 おお!

 すごい!

 なんかこういうことして塩まぶす人、元の世界にいた!

 等と感心しているうちに水牛のTボーンステーキが焼き上がり、俺の目の前に突き出された


 「いいから食べなさい」と目で促されたので、それに噛り付く。

 わぁ! 旨い! この人料理めっちゃ上手い!!



「腕の程は分かりましたか? レシピは奥様からいただいています。私たちはレシピがある限り決して調理ミスは致しませんので、あなたは安心して休んでいてください。 ほら! ほら!」



 三白眼ちゃんがそう言いながら俺を尻でテントから押し出そうとするので、俺は仕方なく、テントから出た。

 しかし……。

 皆がこう忙しなくしてる中で手持無沙汰ってのはちょっと……。


 そう思い、周りでアレコレと作業をしている騎士団員の人らに声をかけて回ってみたが、皆一様に俺の手伝いを拒み、俺に休めと言ってくる。

 それも結構な圧で……。



「ったりめーだ。魔女会議の接待役っつー大役をオメーに奪われてんだぜ? せめて準備くらいはやらねぇと、この日の為に技能を磨いてきた部隊や班の面子がねぇだろ」



 立ち尽くす俺の元へ、シャウト先輩がやたらサッパリとした様子で現れた。

 あれ、先輩風呂でも入りました?



「ああ、砂に埋まって温浴する療養設備のテントが出来てて、そこで長旅の疲れを癒せって勧められたんでな。なかなか良かったぜ? ミコトとアイも今頃は砂に埋もれて夢心地だろうよ」


「ええ……。重要なイベントが迫ってるのに、そんなリラックスしちゃって大丈夫なんですか……? 何か他に手伝いでも……」


「バーカ野郎お前、お前の仕事は明日の会議本番に最高のコンディションで挑んで、魔女連中のご機嫌をしっかり取るこったろ。そのために連中は働いてんだ。なのにお前が気を揉んでたら、騎士の奴らの苦労が意味ねぇじゃねぇか。しっかり英気養っとけ」



 先輩はそう言うと「ちと会場周り見物してくるわ」と、雷光を纏い、巨岩の間を壁ジャンプの要領で瞬く間に登って行った。

「砂風呂は今女湯だから入りに行くんじゃねぇぞー!」という叫び声を残して。



 英気を養うねぇ……。

 ……。

 釣りでもするか!


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