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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
第1章:オーダー! 恐怖の魔女会議
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第2話:選ばれし者




 待ち時間も特になく、さっささっさと通された先は、赤いカーペットに白い漆喰の壁、そして所々に金の装飾が施された柱や燭台……。

 そしてデカい椅子にちょこんと腰かけた少年。



「依頼を受けていただき、ありがとうございます」



 そう言って、彼はコクンと小さくお辞儀をする。

 利発そうなお子さんですこと。

 俺も軽い会釈で返すと、少年は満足げに微笑んだ。

 あら可愛い。


 ……。

 いや、どなたですか?



「貴様あああああ!! 陛下の御前であるぞ!! 頭が高い!!」


「うぉわぁ!?」



 この世の終わりのような絶叫と共に、凄い勢いで頭が押され、地面に叩きつけられた!!

 痛ってぇ!?

 一瞬暗転した視界の外で、「痛てぇ!?」「ふぎゃっス!?」「きゃあ!?」という叫びが聞こえる。

 俺の仲間は全員やられたようだ。


 いや!

 それは今はどうでもいい!!

 あのショタが皇帝なの!?



「ああっ! そんな乱暴なことはいけません!」



 ショタ皇帝の慌てふためく声が聞こえる。

 直後、「はは――――!!」と、俺の横に小隊長がひれ伏した。

 今のアンタか!!



「怪我はありませんか? 直属の部下がとんだ無礼を!」



 皇帝はデカい椅子から腰を上げると、俺達の方へと早足で向かって来て、俺の前で膝をつきながら心配そうに見降ろしてくる。

 あれ……?

 あれれー……。

 なんか思ってた皇帝と違う!


 もっとこう……。

 ド派手で豪華絢爛な部屋でふんぞり返ってて、ウチのパーティーを見るなり「おいそこの金髪。余の夜伽に参れ。さもなくば皆極刑に処す」とか言ってくるような奴だとばかり……。

 こんな……。

 あどけなさの残る純情キラキラショタだなんて……!



「ほっほっほ……。陛下が想像と違うとでも言いたげじゃのう」



 と言いながら、皇帝の後ろから突然ヌッと出てくる法皇サマ。

 相変わらず認識の外から現れますねアナタ……。



「申し遅れました。私がこのブルーフィン帝国第13代皇帝 アルバコア・ブルーフィンです」



 俺のような下々の者の手を引いて立ち上がるのを手助けしてくださる美少年陛下。

 ヤバい、ときめきそう。

 小隊長に教わった帝国式敬礼をすると、陛下は上品なしぐさでそれに返礼をしてくれた。

 あっ、ダメだ。

 ちょっとときめく。


 ミコトと愛ちゃんはもの凄く母性を刺激されたようで、目を輝かせながら敬礼をしている。

 シャウト先輩は特に敬礼とかせず、辺りを見回しながら「ケッ……」と落ち着かない様子だ。

 こんな時にも敵襲の警戒でもしてるんだろうか……。




////////////////////




 「立ち話も何ですし、どうぞかけてください」と陛下が言うので、俺たちは豪華絢爛とは言い難い、しかし質素というわけでもない、高級家具屋とかで買えそうな感じの席についた。

 俺たちの対面には法王サマとあと一人……。

 なんか地味目なメガネの美人さんが陛下を挟むように座る。



「この度は無理な依頼をしたばかりか、無礼な扱いをしてしまい、重ね重ね申し訳ありません。本来であれば、こういった神事とも言うべき行事は我々、もしくは法王庁にて執り行われるべきものなのですが……」


「魔女の連中がこいつらを指名してきたってこったな?」


「ええ。彼女たちの要望を反故にしてしまっては、町の一つや二つ、それどころか大陸が更地になりかねませんので」


「そのための犠牲とありゃ、ウチの舎弟二人の命なんざ軽いもんだもんなぁ」



 頭を下げる陛下と、不機嫌そうに言い放つ先輩。

 そして「貴様ぁぁぁ!! なんだその言葉遣いはぁぁぁ!!」とか叫びながら、部屋の外へ連れ出される小隊長。



「ほっほっほ……。何も犠牲にしようと思って起用したわけではないのだぞ雷刃」



 この期に及んでにこやかな笑みを称える法王サマを、すごい形相で睨む先輩。

 すると法王サマは「議会の取りまとめた記録をここへ」とメガネ美人さんに言う。

 あれ、議会関係者の方なのね。


 メガネ美人さんはコクッと頷き、紙を何枚か取り出し、俺たちに配った。

 なになに?

 「過去1600年間の魔女会議における接待役の選出と顛末」とな。



「その記録を見ていただきたいのですが、これまで開催された443回の魔女会議において、死者数は798人。接待役全滅が340回。1人死亡が90回。2名とも生還が13回となっています」



 いや凄い死亡確率!?

 シャウト先輩はもはや猛獣のような歯ぎしり音を立て始めている。

 そんな先輩を法王サマが「まあ待たれよ」と手で制した。



「歴史上、接待役の殆どが現在の皇立騎士団に当たる組織から選出されるのですが、ごく稀に、全く無関係の人物が選出される場合があります」


「それが魔女さんの指名……というわけっスね」



 ミコトが顎の下に指をあてながら言う。



「そうです。過去に7例あるのですが、この場合において犠牲者は出ていません。つまり、あちらから指名される限りにおいて、接待役の身の安全は保障されていると言っても過言ではないかと」



 ほへー……。

 よく調べたなこりゃ……。

 確かに、農村の姉弟、雪山の家畜飼い、冒険者等々、突然高貴ならざる身分の人間が接待役に選出されている。


 ただ……。

 注釈として差し込まれた文章に気がかりな点が……。



「お気づきになられましたか?」



 メガネ美人さんがメガネをクイっとやりながら俺にドヤっとした顔を向けてくる。

 いや、ドヤるとこじゃないでしょこれ……。

 この法則に則るならば、魔女たちによる指名が起きた翌年には、決まって大災厄が訪れているのだ。

 そしてその大災厄を鎮める選ばれし者……。

 それは決まって魔女会議の接待役になっている……と。



「ユウイチさん。アイさん。貴方達は天に選ばれし者。貴方達にとっての魔女会議は生死を問われる場ではない。重要なのはその先……大陸を襲う災厄を払う勇者となっていただきたいのです」



 陛下の顔が、可愛らしいショタから、一国の君主の顔に変わり、声変わりもまだの高い声にも拘らず、重厚感のある響きとなって鼓膜を揺らした。

 えぇ……。

 騎士団と皇帝の威信だけでもうお腹いっぱいなのに、なんでもっとデカい物がおぶさって来るの……?


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