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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第53話:突然の別れ




「二つ名持ちの強豪、瞬撃のシュン 死す!」



 俺が持ち帰った情報は、都のギルドを震撼させた。

 これでも一応二つ名持ちパーティーの一員。

 特に疑われることはなかった。


 そして、彼が俺達を何らかの理由から警戒していたこと。

 彼の死に関わっていると思しき黒いフードの男のこと。

 それら二つはギルド本部で一度整理され、犯人の特定と、なぜ瞬撃がギルドのルールを破ってそこにいたのかという理由の分析に使われるそうだ。


 と。

 まあ。

 ここまでは俺がこの世界において公にできる範囲の話。

 そしてここからが、俺達しか知り得ない、知ってはいけない情報だ。



「ここなら誰も見てないでしょう」


「ああ、見渡した限り、人影は見えないな」



 周りに広がるのは広大な平原。

 背の低い草が生い茂るこのエリアは、薬草もなく、魔物も殆ど出ず、商業路とかでもないので、人っ子一人見当たらない。


 俺は今、ズタボロにされ、回復した体のリハビリという名目で愛ちゃん、コトワリさんと一緒に簡単なクエストを受注して出かけている。

 この難易度最初級のクエスト、1週間以上に渡って放置されていたものらしい。

 ……。

 なんだよ「綺麗な虫を捕まえてきてください」って……。

 依頼料も格安だし……。

 子供がふざけて出したのか……?


 シャウト先輩は俺達を探すために走り回って魔力を使いまくった後、大技を連発して流石に疲れたのか、今日一日は寝ているらしい。

 先輩には申し訳ないが、おかげで天界関係者だけで話せてありがたい。

 ちなみにミコトは仲良くなった東方高原のお姉さん方にお茶会へお呼ばれしている。

 相変わらずミコトは食い物に寝取られがちだ。


 まあ、それはさておき……。

 俺はポケットからカードを2枚取り出す。



「はっ!! エビザメ! シャドーメガマウス召喚!!」



 俺の叫びが大平原に木霊し、構えたカードから……。

 何も出ない……。



「それは当然だ。このカードは本来君が扱えるものではない。封印は100歩譲って出来たとしても、召喚は不可能なはずだ」


「いえ! 私も確かに見ましたよ! 先輩が召喚したサメと魚が戦ってくれたんです!」


「愛まで……。 お前たち……熱は無いな」


「痛ぇ!!」


「ひぎゃぁ!」



 コトワリさんの高速額合わせが俺と愛ちゃんに炸裂する。

 うおおおおものすごい石頭……!!

 うずくまる俺と愛ちゃんをスルーし、俺が召喚したと主張するカードをじっと見つめるコトワリさん。



「うぅ~……でも相手だって似た感じのカードでサメ召喚してきたんですよ~。何かバグ的な抜け穴あるんじゃないですか?」


「なんだとぉ!?」



 愛ちゃんのその言葉を聞いた途端、コトワリさんの目つきが変わった。

 「ひぃ~……ごめんなさい~!」と再びうずくまる愛ちゃん。

 そ……そんな不具合報告くらいでキレなくても……。



「違う!! そっちではない! 相手が似た感じのカードを使っていただとぉ!?」


「は……はい……。このエビザメって、それを倒して入手したわけですし……」


「なんということだ!! ダゴンの奴、ミコトのライブラリの魚を魔界へ!! そうか……奴の目論見が見えてきたぞ……」



 突然ガクッと膝をつき、怒声を上げるコトワリさん。

 は……話が見えないんですけど……。



「奴はダンジョンを使ってミコトの魚たちを入手し、魔物として魔界のライブラリに持ち帰る気なんだ。悪魔は司る生物や魔物に対するその世界の人々の負の感情……恐怖や悲しみ、憎しみが強いほど、世界に対して行使できる力が強まる……」



 腕を組み、俺と愛ちゃんの周りを回りながら、コトワリさんは話を続ける。



「基本的に、世界は発展すればするほど、魚や海の怪物に対する恐れを失っていく。ダゴンはそれらを司る悪魔だから、恐怖の薄れが気に入らないのだろう。それで、魚型の強力な魔物を一匹でも多く集めて世界に放流し、人々の魚への恐れを増大してやろうと考えたに違いない!」


「ああ……。そう言えば、サメを使ってこの世界の奴らに恐怖が云々みたいなこと言ってましたねぇ……」


「やはりか!!」



 うお……。

 顔近いです……。

 声デカいです……。



「そうとあれば、ダゴンや協力している転生者達にミコトの魚……特にサメのデータを渡すわけにはいかん! それと既に奪われたデータをもとに、サメやサメ型魔物が出現し始めるかもしれない……。これは急を要するぞ……」


「急を要するったって……。俺達に出来ることはこれまで通りダンジョン攻略して、そこにミコトの魚がいたら封印するって方法しかないんじゃないですか。まあ一応他の冒険者にも捜索願い出してますけど……」


「それだけでは間に合わん! ここは私が一肌脱ごう!」



 コトワリさんはそう叫ぶと、突然眩い光を纏い始めた。

 ちょっと!

 何ですか!?



「私は今から一度天界に戻り、ポセイドン様へ事を報告し、死神局を通じて魔界のリヴァイアサンへ抗議を行い、そして君たち以外の善良な転生者の元へと再臨して、悪の転生者討伐の協力を仰ぐ!」


「ちょっとそんないきなり!?」


「君たちと過ごした日々……美味だったぞ……」



 コトワリさんはそう言いながらしんみりとした表情を浮かべ、そして、光の柱となって空へと消えた……。

 

 彼女が消えた後には、空白の封印カードがどっさりと積まれている。

 えぇ……。

 えぇ~……。

 あの……魚の召喚について何も明らかになってないんですけど……。


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