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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第52話:影の遺跡迷宮 雷刃閃く




「大丈夫かユウイチ!! この魚人野郎!! てめえただじゃおかねぇぞ!!」



 案の定ボッコボコのメッタメタにされ、ボロ雑巾のような状態で食われるのを待っていた俺の頭上から「バチバチバチ!!」という音と共に光が降り注いだ……。

 これは……お迎え……?



「雄一! しっかりしろ!! 今治療してやるぞ!」



 温かい感覚が全身を包み、なんだか気持ちいい。

 目を開けた先には……後光を纏った麗しい天使様。

 あぁ~……俺……天に召されちゃったよ……。



「マズい! 意識が朦朧としている!! ふん!! ふん!!! ふん!!!!」


「……!! ぶっ!!! 痛っぶふぅ!?」



 温かい光と共にものすごい威力の平手打ちが3発降り注ぎ、幽体離脱しかけていた俺の意識が肉体へと還ってきた。

 こ……コトワリさん!



「良かった! 間に合ったようだな! ミコト! シャウト! 雄一はまだ息がある!」



 そう叫ぶコトワリさんの持つ杖から、清らかな光が溢れ出し、俺の傷を癒していく。

 発射される歯で穿たれた腕の抉れ傷も、すれ違いざまに切り裂かれた右足も、見る見るうちに流血が止まり、肌が再生してくる。

 痛っ……! 痛だだだだだだだ!!!

 細胞の超活性化とかそんなんで皮膚の内側が痛くて熱い!!



「堪えるんだ雄一! 幸運にも君の再生速度は尋常ではなく早い! もう少し頑張れ!」


「いぎいいいいい!!」



 激痛に歪む視界。

その中に映ったコトワリさんの肩の向こう側では、シャウト先輩がレッサーダゴンⅡ(俺命名)を相手に、大立ち回りを演じていた。


 バチバチと光る稲光を身に纏い、俺の飛行スキルを使った高速ホバリングスライドでも全く避けられなかったサメの歯ミサイル、飛びかかり噛みつきを易々と回避し、そしてすれ違いざまに電撃鞭を、電撃剣を次々に撃ち込む。


 その度に、俺の決死の双剣乱撃で傷一つ入らなかった頑丈過ぎる鮫肌が斬れ、裂け、漆黒の粒子が噴き出ていく。

 強い……!

 やっぱり先輩……強いよ……!


 切り裂かれた骨身に流し込まれた電撃で全身が麻痺したのか、ゴロンと転がり、ビタビタともがくレッサーダゴン。

 アイツがこんな……赤子みたいに……。



「ギシャシャシャシャ……テメェなかなかやるじゃねぇか……。なら、こういうのはどうだ?」


「はっ……!!」



 レッサーダゴンがそう言って笑うと、突然先輩の身体がガクンと沈んだ。

 何だ!?



「シャーッシャッシャッシャ!! コイツはもう俺の瘴気で魅了済みなんでなぁ!!」



 先輩の身体の周りを黒い魚影が渦巻く。

 シャドーメガマウスの影分身体!!

 俺の時はてんで大人しかったくせに……!

 親玉が負けそうだから加勢してきたってか……!


 下半身を別の空間に捕らえられた先輩は、身動きできないまま、今度は両腕を影に飲まれてしまう。

 ヤバい!

 あんな状態にされたらいくら先輩でも……!



「テメェみたいな気の強そうな女はこれで嬲り殺してやるぜ……。ゲシャーッシャッシャッシャ!!」



 そう言いながら、見覚えのあるタコ形態へと変化していくレッサーダゴン。

 先輩がやられる!!

 いろんな意味でやられる!!

 コトワリさん! 先輩を援護しないと……!!

 俺にかかりきりのコトワリさんに向かって叫ぼうとするが、まだ口が言うことを効かない……!!


 そうこうしている間に、先輩の四肢に、胴に、首に、レッサーダゴンのタコ足が巻き付いていく。

 彼女の身体が、触手とレッサーダゴンの身体に覆われ、激しく締め付けられていく。

 先輩―――!!



「随分荒っぽいじゃねぇか……。そんなにアタシの体が気に入ったってか?」



 不意に、落ち着き払った先輩の声が聞こえた。

 巻き付かれた人が発する声ではない。

 俺が声のする方へと目線を向けると、先輩は一段上がった吹き抜けの階層から下を覗き込んでいた。

 え!?

 どういうマジック!?



「な……!! ぎゃああああああああ!!」



 突然、レッサーダゴンの身体が激しい雷光に包まれた。

 え!?

 えぇ!?


 「ついでに食らっとけ!!」と、先輩が宙を舞い、短剣をレッサーダゴンの脳天、そして身を揺すってこの場を逃れようとするシャドーメガマウス目掛けて投げつける。

 そして、特大の魔力を両腕に込めると、セクシーファッションモデルのような姿勢で頭上に交差させ、レッサーダゴン目がけて指先を振り下ろした。



「サンダー・ブレイク!!」



 先輩の指先から目も眩むほどの閃光が走り、コンマ数秒後、「ドーン!」という耳が裂けそうなほど強大な雷鳴が遺跡の吹き抜けを揺さぶった。

 その一撃はレッサーダゴンの身体を一瞬で消し飛ばし、そこからさらに誘導した雷撃がシャドーメガマウスの巨体な頭部を炭化させる。


 焦げ臭い匂いが漂う中、辺りを舞っていたシャドーメガマウスの影分身体達がさらさらと闇に溶けていった。

 もう生きてはいまい……。


 しかしすげぇ……。

 あのレベルの敵をあっという間に……!

 久しぶりに先輩の本気を見たが、やっぱり次元が違う……。



「おい! コトワリ! コイツに何かすんだろ!? 体の中のキーストーンは見えてっから、さっさと用事済ませろ!」


「お……おう!」



 シャウト先輩の怒声に、コトワリさんはカードを取り出してシャドーメガマウスの元へと歩き出した。



「ま……待って下さい!!」



 ようやく絞り出した声を上げながら、俺はコトワリさんのスカートの裾を掴む。



「それ……! 俺に封印させてください……!」



 ………。

 …………。

 ……………。


 しばしの沈黙。

 遠く頭上から、ミコトの「愛ちゃんも無事っス―――!」という声が聞こえた。


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