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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第41話:新兵器到着!




 俺たちはマーゲイにもらったユミウオ(俺呼称)をさっそくギルドの調理スペースに持ち込み、捌きにかかる。



「さーて! どう料理するっスかね~?」


「これ頭の部分は食えなさそうだな……。めっちゃ固いぞ」


「この弓みたいになってる部分はかなり太い骨っスね。あ、これ折りたためるっスよ」


「おお、これ面白いな。どういう原理か知らないけど、この動きが魔力光弾撃つギミックなんだろうな」



 ギミックだけ見れば、なんかヒーローものの玩具みたいでちょっとカッコいい。

 これ保存しときたいな……。



「顔に出てるっスよ? せっかくっスから、骨だけ持って帰るっスか?」


「ぜひ!」



 手にした魚の記録を残す手段として、有名なのは魚拓だろう。

 だが、それ以外にもある。

 

 例えば剥製。

 プロショップとか、船宿にたまに飾ってあるやつだ。

 魚で型を取って石膏などで模型を作り、そこに魚の頭や皮を張って作るのが一般的だ。


 そしてもう一つ代表的なのが骨格標本だ。

 ミルワームなどを使って肉を除去しつくし、乾燥させて標本にする方法だ。

 その亜種に、石鯛の歯を標本化するというのがあるのだが、今回はこれを模倣して、ボウガン頭蓋の標本を作ろうと思う。



「じゃあ私は切り落とした身の方をさばくっスから、雄一さんは頭の方をお願いするっス」



 と、快く頭をパスしてくれた。

 趣味に理解ある嫁で助かる。


 俺は早速、沸騰させた湯に魚の頭を入れる。

 しばらく強火で煮込んでいると、だんだんと湯が白く濁り、身がホロホロと崩れ始めた。

 割と旨そうだなこれ……。


 俺は魚の頭を木箸で押さえながら、木べらで皮と身をこそぎ取っていく。

 これをしっかりやらないと、後ですんごい臭う。

 あと、すんごい腐る。


 元の世界では鯛でやらかして、母さんと姉さんに無茶苦茶怒られたっけか。

 俺の部屋にあるシーバス骨格標本……形見として大事にしてほしいもんだ。


 おおかた肉と皮がなくなったところで頭を打ち上げる。

 煮汁を潮汁にできないかと一瞬迷ったが、普通に激生臭かったのでやめた。

 魚の頭で汁作ろうとしたら、一回焦げる寸前まで焼かないとダメだ。

 しかしそれをやると骨が痛んで標本にする前に割れてしまう。

 なかなか両立できないのが辛いところだ。


 それはさておき、頭がまだ温かいうちに、残った細かい身をミニ木ブラシでこそぎ取っていく。

 ホロホロになった身は容易に剥がれ、骨格のシルエットがはっきりしてきた。

 ん?

 この魚、目の穴の後ろにもう一個穴があるな。

 なんだろ?


 何かは分からないが……ここに指突っ込むと、何とも言えないヒーローなりきりアイテム感。

 意味もなくポーズをとり、指を弓の弦がかかる位置に沿わせてみる。

 これで指を離したらこう、魔力光弾がバーン!と……。



「あ痛っ!!っス!!」



 突然魚の骨の口元から青い光弾が発射され、ミコトの大きめの尻に命中した。

 「痛っったーっス!! 雄一さん何したんスかぁ……!?」と言いながら、尻をさするミコト。



 え!?

 ええ!?

 何今の!?

 なんか出たよ!?




////////////////////




「もう~。びっくりしちゃったっスよぉ」



 そう言って尻をポリポリとかくミコト。

 マジでごめん。



「でもびっくりしちゃったスねぇ。この子の骨って武器になるんスね」


「マジでびっくりだよ。この魚は多分、ここの穴に魔力を貯めてて、それを弓型の器官で制御して魔力光弾にして発射するんじゃないかな。それが俺の魔力に反応したんだろう」


「面白い生態っスねぇ。テッポウウオみたいに水面外の獲物を狩るんっスかね?」


「かもしれないな。マーゲイが撃たれたらしいし」


「割とおっかないっスね」



 そんな話をしつつ、ミコトが小皿を2枚持ってくる。

 塩焼きと煮つけだ。

 身は至って普通の白身である。



「あ、普通においしいっス」


「美味しいな、普通に」



 あんな変わった頭を持ちながら、身はマスを思わせる川魚の味だった。

 コケ系の臭みがないことから、肉食性なのかもしれない

 ただ、まあ、うん。

 普通……。



「ご飯欲しいな」


「あ! それ私も思ったっス!」


「俺が頭茹でがてら炊いとけばよかったなぁ」


「まあ、無いものはしょうがないっス! また今度他の魚おかずにご飯食べるっスよ」


「そだね」



 少しさびしさを覚えながら魚の身をほじっていると、俺たちの目の前に、握り飯が二つ、トン、と置かれた。

 うお!?

 何この僥倖!


 見上げると、あの南国の太陽を思わせる笑顔がてかてかと光っていた。

 ターレル!



「いやぁ~。ユウイチに荷物届けに来たら、二人がご飯食べたいって呟いてたからさぁ、ひとっ走り買ってきたんだぁ~。あ、とりあえず一口どうぞ~」



 君は何だい、福の神かなにかかい?

 お言葉に甘え、彼がくれたおにぎりに、ユミウオの煮つけを乗せ、一口いただく。

 オゥ……旨い……。



「はっはっは~。喜んでくれたようで嬉しいよ~」


「マジでありがと! これはたまらなく旨いよ!」


「物足りなくて困ってたんすよぉ~。マジ感謝っス~」


「それは良かった~。じゃあ、これ置いていくね~」



 そう言って大き目の木箱をテーブルに置き、調理スペースを後にするターレル。

 荷物の中身も明かさずに……。

 ……。

 まさか!?


 俺は慌てて箱を開け、緩衝材に入れられた木くずの中から、木の樽を掘り起こした。

 この匂い……。

 醤油……!!

 ターレルが言ってたキージャ・マってやつだ!

 もう取り寄せてくれたのか!



「ターレル!!」



 俺は慌てて廊下に飛び出し、ターレルを呼び止めた。

 「ありがとうございますっ!!」と叫び、体を90度に曲げて頭を下げた。

 ターレルは明るい声で笑い、「そんな大げさだよ~。また一緒に釣りしに行こうね~」と言い、去っていった。

 俺は彼の姿が扉の向こうに消えるまで、頭を下げ続けた。

 神様仏様ターレル様である。


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