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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第28話:ミコトとデートクエスト 第4街道を見回ろう




「この依頼受けるっスよ! 参加人数は二人っス!」



 ギルドのカウンターで、ミコトが嬉しそうに依頼書を提出する。

 あんな寒い環境に2泊3日近くいたのに、1日泥のように寝ただけでこの元気だ。

 俺はもう少し寝て過ごしたかったんだが……。

 ただまあ……。



「雄一さんと久々のクエストデートっス~。えへへ~」



 と、ヘニャヘニャにふやけた笑顔を向けてくるミコトを見ていると、多少の疲れも苦でなくなってくるから不思議だ。

 最近あんまり構ってあげられなかったしね。

 今日は久々に恋人同士水入らずで、のんびりと緩いクエストを回すとしよう。


 ひとまず第4街道の見回りと、そのついでに出来るらしい「ラッパ草」の採取クエストを受注し、俺達はギルド通用口から街の外に出た。

 無論、こんな緩いクエストには、ヒポストリや飛行クジラによる送迎などない。


 デイスのそれを遥かに上回る規模だけあって、街道はあまりにも広大。

 目的地である道祖神のある見張り小屋まで、徒歩で3時間超かかる。

 まあ、ゆっくり話しながら歩くには丁度いいだろう。

 今更その程度でへばる体ではない。


 不意に、俺の手がギュッと握られた。

「出発っス!」と微笑むミコトの手を、俺も握り返す。

 俺達は若草の香りが心地よい草原に伸びる街道を、並んで歩きだした。




////////////////




「しかしこれ、何で回収できたかねぇ?」


「バグ……っスかねぇ? コトワリさんのロック解除がまだ効いてて、それを雄一さんが使った判定で……。みたいな……」



 俺の手には、イシガキデメニギスが封じられたカード。

 コトワリさんが投げ損ねたものを俺が拾って投げ、ダンジョンが消滅する直前にギリギリ回収できたものだ。

 

 相変わらず俺には読めない文字列が日本語に混じって並んでいるが、コトワリさん曰く、回収者が俺になっているらしい。

 天使以外は使えないはずのコレを、なぜ俺が使えたのか……。

 コトワリさんは「君、親族に神か天使はいるかい?」とかいうパワーフレーズを投げかけてきたが、無論、そんなもんいるわけがない。


 天界に送ろうとしたところ、回収者でエラーが出たらしく、しばらく持っていてほしいと言われてしまい、未だにこのカードは俺の手の中にある。



「でも、仮に雄一さんに天使か神様の血が入ってるとしたら……。いつか私達にも子供出来ちゃうかも知れないっスね!!」


「だからいないってば! つか、そんな人間普通いねぇよ!?」


「でも遡ったらどうっスかね? 日本って神様多い土地柄じゃないっスか」


「いやまぁ……八百万の神々とは言うけども……。日本神話レベルまで遡ったら皆神様の血が入ってることになっちゃうだろ」


「それもそうっスね……」



 「む~」と、残念そうに膨れるミコト。

 ちょっと家系を恨む。

 恵比須様の血とか入ってたらロマンがあるんだがね。


 そういう雑談を交わしながら、街道を歩いていく。

 もう1時間半くらいは経っただろうか。

 ラッパ草の採取はもう終わったので、クエストの半分はもう終わったようなものだ。



「そろそろお昼にしないっスか? 私お腹すいちゃったっスよ」



 ミコトがいい感じの木陰と倒木を見つけて指をさす。

 少し早いが、まあ、いいだろう。

 急ぐようなクエストでもないしね。



「はいっス。今日のお昼はブラッキーの香草味噌漬け焼きっスよ」



 ミコトが解いた包みの中からは、串に刺さったブラッキーの切り身。

 シソのような香りのする香草で包み、味噌につけて二晩ほど置いたもので、磯臭さが抜けてうま味が凝縮された一品だ。


 慣れた手つきで焚火を起こし、周りにその串を刺していく。

 昼から囲炉裏風料理とは何とも贅沢な……。

 香ばしい煙が立ち、それほど空いていなかった俺の胃袋が突如として空腹に騒ぎ出す。


 ああ……。

 緩いクエストっていいなぁ。

 いい天気だし、風は心地いいし、ご飯は美味しそうだし、何より……。

 愛する人と二人きりだし。



「ん? どうしたんスか? 私への愛情でも感じてたんスか?」


「うん」


「も~雄一さんったら素直なんスから~」



 などと、適度にイチャついていると、ブラッキーの身と味噌に焼き目がついてきた。

 ではそろそろいただくとしよう。

 「雄一さん! あーんっス!」と、ミコトが俺の口の前にそれを差し出してきたので、一口で頬張る。


 お! 旨い!

 香ばしく焼けた味噌と香草が、淡白なブラッキーといい感じにマッチしている。

 皮目からくる甘い脂と、磯の香りも最高だ。

 この地域で一般的な、ソレフイ米のおこわともよく合う。


 デイスと違う食材に、初めは時々失敗していたミコトだが、もうすっかり扱いに慣れたようだ。

 特にこの米には苦戦してたな……。



「どうっスか? お米。芯無いっスか?」


「大丈夫。ふっくら炊けてるよ」



 日本の米にかなり近い、大陸西方のブリーム米は、普通に炊くだけでいいのだが、ソレイフ米は粒が大きくて芯が硬い。

 水加減や火加減を覚えるまでは、ボリボリ感を味わわされたものだ。

 しかし、ちゃんと炊けるようになれば、甘みが強く、モッチリと粘り気のあるこの米は素晴らしい。


 水分を良く吸うので、炊き込みご飯やおこわにしても旨い。

 今回はブラッキーの骨の出汁で下味をつけているが、生姜飯やガーリックライスにしても旨いに違いない。

 今後のクエスト飯も楽しみだ。



 俺達は飯を終えると、途中で折れた看板や道しるべの修理をしながら、目的地である見張り小屋まで向かい。

 街の管理本部からの指示書と、酒のボトルを2本、守衛さんに渡し、もと来た道をのんびりと戻った。


 流石に足は少し疲れたが、久しく忘れていた、二人きりでのんびり暮らしていた頃の緩い幸せを思い出せた気がする。

 あの頃の日常に戻れるよう、早くこのダンジョン騒ぎを収めないとな。


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