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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第26話:クリスタル雪原迷宮 戦闘! 魔魚イシガキデメニギス




「ふん!! っス!!」



 ミコトが大剣を構え、魔物と化したイシガキデメニギスの噛みつき攻撃を真っ向から受け止める。

 およそ生物の生じさせるそれとは思えない音と共に火花が散り、ミコトの身体が数m後退する。


 だが、クリスタルを飴細工のようにかみ砕くその歯をもってしても、インフィート製合金には傷一つ入らない。

 刃を歯に挟ませたまま、じりじりと魚体を押し返していくミコト。


 俺はすかさず飛び上がり、イシガキデメニギスの頭と首の境目、脊髄めがけてテレポート斬りを叩き込む。

 しかし、俺の剣が命中するより早く、敵はミコトの剣を離し、雪空へと退避していく。

なっ……!


 ドームの中の複眼か……!!

 常にギョロギョロと動き、周囲を監視している複数の目が、攻撃回避に一役買っているらしい。

 しかもテレポートの動きを察知して回避行動を取れるとは、恐ろしい反射神経だ。



「また来るっスよ!」



 ミコトが再び剣を構え、敵の突進に備える。

 突っ込んでくる敵の顔面目掛けて氷手裏剣を放つが、あっさりと回避されてしまう。



「まずはあの目を潰さなきゃダメだ! まるで当たらねえ!」


「了解っス! 今度の突っ込んで来たら、私の剣にアイツをバインドして動きを止めるっス! あとは顔面タコ殴りっス!」


「よし! それでいこう! 電気出しそうになったら逃げろよ!?」


「お任せっス!」



 雪面を削り取りながら突進してきたイシガキデメニギスを、ミコトが再び受け止めた。

 性懲りもなく剣を齧る魚影目がけ、ありったけのフロロカーボンを召喚して、ガッチリと拘束する。



「うりゃああああああっス!!」



 ミコトはそのまま勢いよくバックドロップし、敵の巨体を思い切り雪原へ叩きつけた。

 強烈な衝撃に、ビクンと魚体を痙攣させ、激しくのたうち回るイシガキデメニギス。

 俺とミコトが全力でフロロカーボンを掴み、その動きを封じ込める。



「い……今っス!!」


「あ……愛ちゃん!」


「え!? 私ですか!?」



 思ったより激しい敵の抵抗にミコトも俺もいっぱいいっぱいだ。

 となると、今動けるのは愛ちゃんしかいない!



「えと……えと……ファイアショット!!」



 愛ちゃんが敵の顔面目掛けて火炎魔法を放つ。

 低級魔法だが、雪原の生物には十分な威力となるだろう。

 が、予想外の事態が起きた。


 愛ちゃんの魔法が放たれた瞬間、イシガキデメニギスの頭部が激しく発光を始めたのだ。

 そして……。



「熱っ!!」



 小さな炸裂音と共に悲鳴を上げて倒れる愛ちゃん……。

 何!?

 一体……どういうことだ!?



「雄一さん!! バインドが……!!」



 ミコトの声に、ハッと向き直ると、敵を拘束していたフロロカーボンが熱でドロドロと融解を始め、プチプチと音を立てて千切れ飛んだ。



「きゃあっス!?」


「うわぁ!」



 俺とミコトを吹き飛ばし、勢いよく空中へ逃げていくイシガキデメニギス。

 クソっ!

 逃がすか!!



「ウォーターブラスト!!」



 俺は渾身の魔力を込めて、激流魔法を放った。

 しかしその直後、凄まじい勢いの水流が俺の頭上から降り注いだ。




////////////////




「あわ……はわわわわわわわ……」



 少し後、俺は大型ウニの残骸と思しき洞窟の中で寒さに震えていた。

 すぐに着替えたので被害は最小限で済んだものの、一瞬で体温と体力をごっそり持っていかれた気分だ……。



「すまねぇ……アタシが真っ先にヘマこいたばっかりに……」


「まさか魔法を乗っ取って使ってくるだなんて……私、弱い魔法しか使えなくて助かりました……!」



 俺の横には、シャウト先輩と愛ちゃんがそれぞれ軟膏を塗られたり、患部を冷やされたりして横になっている。

 軽量鎧が直撃は防いでくれたものの、愛ちゃんの肩には痛々しい熱傷の跡が刻まれている。

 ご……ごめんね愛ちゃん……。


 俺達のいるウニかまくらには焚火と鍋が置かれ、ちょっとしたサウナのようだ。

 鍋にはコトワリさんが調合してくれた治療薬が沸き立ち、キズや凍傷を癒してくれる。



「具合は大丈夫かい? 力になれずすまなかった」



 コトワリさんが治療結界を張りながら、かまくらを覗き込んできた。

 シャウト先輩は少し決まりが悪そうに「ああ、大丈夫だ……。ありがとよ」と返す。

 時々めんどくさいが、頼りになるなぁこの人……。

 長らくヒーラー不在だった分、総崩れになった時の有難みが身に沁みるよ……。



「しかし、どうする? あの敵、想像以上に厄介だぞ。勝ち筋は見えるのか?」


「参ったことに、アタシは滅法相性悪いぜあいつ……。決め技大概魔法だからなアタシは」



 弱音を吐く先輩。

 無理もないか……。

 先輩に至っては自慢の電気魔法が通じないばかりか、跳ね返されてやられたとなれば、そりゃ自信もなくなるというものだ。



「ユウイチはどうだ? 結構長く張り合えてたみたいだが」



 少し不安そうな顔で聞いてくる先輩。

 ただ、俺は少しではあるが、勝利の可能性を見出していた。

 魔法を跳ね返してくる特殊能力は恐ろしいが、幸いにも、召喚スキルは跳ね返せないようだ。


 その証拠に、敵はフロロバインドで拘束はできた。

 あと、氷手裏剣はわざわざ回避していたあたり、複雑な形質変化は反射できない可能勢が高い。

 つまるところ、俺とミコトが取った戦法は途中まで正解で、最後の最後の詰めでしくじったというわけだ。



「なるほどな。ただ、同じ戦法が二度通じるかね……?」


「ええ、それなら俺に秘策アリです! ていうか魚にやられて引き下がってたら釣り人の名が泣きますんでね!」



 そう言うと、先輩は「オメーらしいな」と微笑んだ。

 愛ちゃんも「リベンジしたいです!」とガッツポーズを作っている。

 俺達3人の回復、そして天候の好転を再戦の契機と定め、それまでは薬湯サウナで体を癒すこととする。



「あれ、ところでミコトはどうしたんです?」


「ああ……彼女は今、『よくも私の作った子を魔改造してくれやがったっスねぇ! あまつさえ雄一さんや先輩や愛ちゃんに怪我させるとは!!』とか言いながら悪魔人形釘打ちしてるよ。しばらくはそっとしておいてやってほしい」



 とりあえず、落ち込んでいる風ではないので安心した。

 ただ、ミコトがこれ以上怒ったり悲しんだりしないためにも、この騒動は一刻も早く解決してやらないとな……。


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