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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第15話:集結! 特務戦力 




「よし、いいかオメーら。ちっとは気ぃ張って臨めよ。どんな組織で、どんな連中が集まってるかも分からねぇ。キレて他メンバーに食って掛かるとかやめてくれよ?」


「先輩が一番心配なんですが」


「あぁ!?」


「あとコトワリさんも心配なんスけど……」


「なっ! 失礼な! この野蛮人と一緒にしないでくれ!」


「んだとこの潔癖ヒステリー女!」


「「ぐぬぬぬぬぬぬ!!!」」



 ギルド本部の3階大広間前に、喧嘩っ早いコンビの怒声が響く。

 粗暴なヤンキーとマジメ系ヤンキー……。

 この二人が今のシャウトパーティー主力である。

 大丈夫かなぁ。

 大丈夫かなぁ……。



「あら? 随分と騒がしい方々がいらっしゃいますのね」



「うーわ…。今度は何だよ…」



「あっ!! 今あなた“うわ”って言ったわね! ……言いましたわね!!」



 振り返ると、金髪ツインドリルのお嬢様感溢れる少女と、青髪糸目の青年が立っていた。

 「きー!」と言いながら俺に向かって来ようとするツインドリルを、青年が笑顔で押しとどめている。


 ここに来たってことは……。

 この人も特務戦力か。

 なんていうか……。

 濃い人たちはウチのパーティーで間に合ってるんですけど……。


 そのツインドリルに続き、続々とやってくる特務戦力たち。

 総勢6パーティ、20人ほどか。

 全体的に若く、皆えらくギラギラしてる……。

 各地に点在するギルドの若手エースたちといったところか。



「あーら。随分可愛い子達が集まったわね。それじゃ、行きましょうか」



 アルフォンシーノギルドのマスターが、俺達を大広間へと通してくれる。

 ここのマスターは女の人なのか……。

 若干厚化粧だが、無駄にセクシーなコスチュームをしている。

 ……ちょっと羨ましいな。


 大広間にはちょっとした立食テーブルが設けられていて、和やかな雰囲気だ。

 マスターが「まあ、適当にくつろいでちょうだい」というので、軽食を摘まみながら、リラックスさせていただく。



「おお! この揚げ物は旨いな!」


(やめろよテメェ……。なんかみっともねぇぞ……)


「はっはっは! 出された食事は楽しんで食べてこそだぞシャウト!」



 以前、公式の場で法王の爺さんに殴りかかったことが余程トラウマなのか、縮こまるシャウト先輩。

 それを尻目に、旨い旨いと、テーブルマナー講座を早送りするような動作で盛られた魚のフライを食べていくコトワリさん。

 凄い速度で食べているのに、ナイフとフォークのカチャカチャ音は一切出していない。

 マナーが良いんだか悪いんだか……。


 「くすくす……」「おーっほっほ!」などと、ちょっと笑われてるようだが、まあ、いいか。

 あのツインドリルの子、笑い声目立つな。


 皆が思い思いに食事を楽しみながら、ちょっとした雑談を交わす。

 俺もさっきの青髪糸目くんとか、世界樹ギルドから来た猫獣人の少年とか、大陸南方ギルドのマッチョ青年とかと軽く喋ってみた。


 皆温厚で気さくな感じなので、少し安心した。

 これで嫌味な連中だったらどうしようかと心配していたのだ。

 特に南方マッチョくんは釣りや水生生物の採取もするらしく、休みの日、一緒に釣りに行こうと約束した。


 見回すと、我らがシャウトパーティーは各々、思い思いの相手と談笑している。

 が。

 愛ちゃんはテーブルの付近を不安そうにうろついていた。

 いかんいかん。

 ほったらかしにしてた。


 俺が南方マッチョ君との話を切り上げ、愛ちゃんの元に行ってあげようとすると、愛ちゃんと同じように隅の方で一人食事をしていた先ほどのツインドリルが、彼女の元にツカツカと早足で寄っていくのが見えた。

 お。

 ちょっと様子見てみるか……?


 会話の内容は聞こえないが、何やら愛ちゃんがしきりに謝っているように見える。

 と、同時に、最初はしゃなりしゃなりと高貴っぽい振舞だったツインドリルの動きが、段々と大振りになっていく。

 しまいには、ビクビクと怯える愛ちゃんと、両手を振り回しながら何かをまくし立てるツインドリルという構図になってしまった。

 助け船行った方がよさそう……。



「あーっと……。ウチの舎弟がどうかしたかな?」


「どうかしたかも何もよー! きー!!」



 うわっ。

 こっちも半ベソかいてる。

 キーキーと騒ぐツインドリルを宥めていると、あの青髪糸目くんがスッと割って入り、彼女の口をワシッと掴み、乱舞を制した。



「申し訳ありません。ウチの者が御迷惑を……」



 むーむーと唸るツインドリルを抱きかかえ、俺と愛ちゃんに頭を下げる青髪糸目くん。



「御迷惑もクソもありませんわ! そっちが先に、私の方を凝視してきたんですの!! ずっとですわよ、ずっと!!」


「ひっ……ひいい」



 口を挟む手を首振りで振りほどき、吠えるツインドリル。

 青髪糸目くん曰く、この子は感知スキルに優れるそうで、視線や感情にちょっと過敏らしい。

 あー……ちょっと分かる。

 敵意とか不意に感じてノイローゼみたくなる時あるよね。



「愛ちゃん、そんなにずっと見てたの?」



 俺が尋ねると、彼女は震えながらコクンと頷いた。



「ほら! やっぱりそうですの! むぐっ! むーむー!!」



 黙らされるツインドリル。

 俺は愛ちゃんになぜ見つめていたのかを聞く。

 すると、彼女は少し頬を赤らめながら。



「あの……その……可愛い服を着てるなって……見てました」



 と答えた。

 途端、青髪糸目くんの腕の中で暴れていたツインドリルの顔がボン!!と赤くなる。

 「髪もサラサラで綺麗ですし、お肌も白くて、目も大きくてキラキラしてて……」と言いながら、目を輝かせ、ツインドリルの全身をまじまじと見つめる愛ちゃん。


 沸騰したヤカンのように、ヒューと甲高い鼻息を出しながら、目を白黒させるツインドリル。

 俺の感知スキルは敵意以外は殆ど捉えることが出来ない。

 だがこの子は、好意もしっかりと捉えてしまうようだ。

 愛ちゃんから飛んで来るキラキラとした視線と感情に全身で晒され、ビクビクと痙攣する。



「あはは……お騒がせ致しました~」



 と、青髪糸目くんはツインドリルを抱えて退散していった。

 まあ、今回はああいう良い子でよかったが、荒くれ者も少なからずいる冒険者ギルド。

 ただ見つめるだけだとああいうことを招くよと、愛ちゃんに軽く忠告しておいた。


 まあ、引っ込み思案は一朝一夕では治らない。

 しばらくは、俺も彼女の近くでトレーニングの手助けをしよう。




////////////////




「さあみんな! お待たせ! これから特務戦力の顔合わせ兼、今後の行動方針の告知を行うわよ」



 テーブルの食事がすっかり片付いた頃、いつの間にかどこかへ行っていたギルドマスターが再び現れた。

 セクシーな服ではなく、パリッとした正装である。

 えらくかしこまったな……。



「いくらなんでも遅すぎないか? 特務とは言え、仮にも招いたものを長時間待たせるのは如何なものかと思うが」



 コトワリさんがチクリと文句を言う。

 まあ、確かにこういうのって普通、一通り連絡事項伝えてから立食会だよね。



「ごめんなさいね。ちょっとチーム顧問のお仕事が片付かなくて」



 顧問……?

 あ~……。

 そういう形で来るわけ……。



「それではお入りください! 法王様!」



 真昼の日が差すステンドグラスを背景に、ゆっくりと広間に入ってきたのは、やっぱり……。

 顔なじみの法王の爺さんであった。



「でっ……出たぁ―――!!」



 と、シャウト先輩が滑り込むようにひれ伏す。

 法王の爺さんは「ほっほっほ……それほどかしこまらなくてもよいよい」と笑い、先輩に起立を促した。

 今度は若竹のように直立する先輩。


 法王の爺さんは老体とは思えない動きで俺達のテーブルの中心までやって来て、随分と質素な椅子を召喚して座った。



「これくらいにしておかんと、怖がる子がおるようでな」



 等とジョークを飛ばすと、周囲から笑い声が上がった。

 顔を赤くして、俺の後ろに隠れる先輩。

 「どうした貴様らしくもない」と、笑うコトワリさんの肩にも手を回し、俺と並べて人間衝立にした。


 ね?

 愛ちゃん。

 こういうとこ可愛いでしょ先輩って?



「さて、時間も限られておるし、本題から言わせてもらうがのう。君達には今後、大陸中央に出現する全てのラビリンス・ダンジョン攻略を一手に担ってもらおうと思っておる」



 法王の爺さんが前置きも無く単刀直入に任務を言い渡してきたので、メンバーに緊張が走った。



「知っておる者もおるかとは思うが、最近、ラビリンス・ダンジョンを悪用し、世に混乱をもたらそうとする勢力がおる。そういった者たちの勝手を許さないために組織されたのが君達じゃ」



 俺は事情を知っているので、何となく分かるが、それを知らないメンバーはポカーンである。

 見かねたギルドマスターが補足する。



「今後、大陸中央でのラビリンス・ダンジョン攻略を受注できるのはあなた達だけになるわ。これでダンジョンを攻略すると見せかけて、資源や遺物を不法に収集したり、危険な魔物を解き放ったりする連中を阻害しようってわけ。お分かり?」



 ご説明ありがとうございます。

 マスターはさらに続ける。



「あなた達以外でラビリンス・ダンジョンを攻略する者は、違法になるわ。あなた達にはそういう輩と現場で遭遇した場合、逮捕、もしくは討伐する権利も付与されることになっている。法王庁の権限においてね」



 ざわつく大広間。

 なるほどね……。

 いかにも温厚で人格に優れた人間が選ばれてる理由はそれか。

 警察ヒーロモノによくある、犯人怪人の現場での抹殺を許可されるかのような強権を悪用しないような人を選んだというわけだね。


 その証拠に、と、大陸ギルド総本部のロゴと、法王庁のロゴが刻まれた印籠的なものが格パーティーのリーダーに渡される。

 ご丁寧に名前付きだ。

 「これを提示して、立ち退き勧告に従わなければ、現場判断で逮捕、抹殺を許可するのでな」などと、穏やかな声で物騒なことを言う爺さん。


 それに続き、今度はメンバー全員に、金色のプレートが手渡された。



「魂を守る札じゃ。悪魔系の敵が稀に使う、即死魔法や魂への呪縛攻撃から君らを守ることが出来るからの」



 と、笑顔でまた物騒なことを言う法王の爺さん。

 ああ……。

 確かに転生連中はそういうの持ってる奴いそうだもんね……。


 俺と愛ちゃんへの配慮なのか、転生者とか暗黒大陸からの渡来者に関しての話は無かった。

 ありがたいが、それが後々妙なトラブルにならなきゃいいけど……。



「ほっほっほ……。それじゃあ、今後の活躍を期待しておるよ。おっとすまん、次の公務の時間じゃな」



 そう言って、部屋から出て行く法王の爺さん。

 と、突然クルリと振り返る。



「そうじゃそうじゃ、忘れておった。君達には今日この後、親睦を深めるためのクエストを用意しておるからの。詳しくはギルドマスターから聞いとくれ。ではさらばじゃ!」



 法王の爺さんがパチンと指を鳴らすと、その姿がパッと消える。

 「それじゃあ、特務クエスト第一号を出すわよ~」とギルドマスターが手を叩き、天井にぶら下がっていた紐を勢いよく引いた。


 すると、「アルフォンシーノ名物、オオビーナス貝の潮干狩り」と書かれた垂れ幕が、キラキラと光る紙片と共に降ってきた。


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