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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第14話:ベイエリアのブラッキー落とし込み




 アルフォンシーノの釣具屋は、デイスのそれよりもずっとデカい。

 そして品ぞろえは海用が中心だ。


 街の中まで入り込んだ広大な貿易港と、それに連なる運河の数からして、東京や横浜のようなベイフィッシングが盛んなのだろう。



「先輩! これキラキラして綺麗ですね!」


「わ! 危ない危ない!」



 愛ちゃんがスプーンと思しき疑似餌を摘まみ、針をブラブラさせながら俺の顔に近づけてきた。

 「お父さんとしたことがある」と言っていたが、この様子じゃ、ハゼ釣りくらいしかしたことないな……。

 まあ、竿の使い方を分かってるだけマシか。


 釣具屋のオヤジさんに、今釣り頃の魚を聞くと、「ブラッキー」という魚を勧められた。

 話によると、今愛ちゃんが摘まんでいる疑似餌を岸壁に落としこんで釣るらしい。

 ……。

 ああ、なるほどそういう感じの……。

 何となく、俺達の世界におけるどの魚なのか分かった。



「え! コレで釣れるんですか!? やってみたいです!」



 と、愛ちゃんも背中を押すので、俺は赤い疑似餌を3つ買い、彼女に渡した。

 愛ちゃんってトレードマーク赤っぽいしね。

 釣り竿は……。

 とりあえず俺が召喚したの使わせよう。


 俺が店を出ようとすると、愛ちゃんは「あ! ちょっと待ってください!」と言って店の中へ小走りで戻り、すぐに戻ってきた。



「はい! お揃いで釣りしましょう!」



 そう言って愛ちゃんが差し出したのは、俺が彼女に買ってあげた疑似餌の青バージョン。

 「先輩って青って感じしますよね!」と笑う愛ちゃん。

 どうしようこの子、めっちゃ可愛がろ……




////////////////




 親父さんに教わった釣り場は、以前キバスズキ釣りをした岸壁の近くだった。

 やっぱりか。

 話を聞くに、その魚は岸壁についた貝や甲殻類を食べている。

 この岸壁群の壁面は貝や海藻がビッシリモサモサなので、釣れそうだと思っていた。


 見降ろせば、水面付近の壁面に、黒い貝が群生しているのが見えた。

 うん!

 いい感じに潮が引いてるな。

 遠方の海岸線を見ると、干潟のような地形が広がっている。

 ほぼ干潮か。



「ひえええ……結構高くないですかぁ……?」



 愛ちゃんは海面の遠さに、少し腰が引けている。

 大型船が停泊する港だけあって、岸壁は結構な高さだ。

 「わ!」と肩に手を置くと、「ひいいいい!!」と叫び、俺の胸にしがみ付いてきた。

 ゴメンゴメン!

 悪かったから放してくれ! 落ちる!



「先輩~……脅かさないでくださいよ~……」


「ゴメン……マジでごめん……ついつい……」



 半べそでへたれ込む愛ちゃんを引っ張り起こし、竿とリールを召喚して渡す。

 「わ! 本当に釣り竿が出ちゃった!」と、新鮮なリアクションをしてくれる愛ちゃん。


 彼女に渡したのは、8ftのシーバスロッドに2500番のスピニングリール。

 ラインはPE0.8号にフロロカーボン3号のショックリーダーを結わえ付ける。

 仕掛けはもちろん、先ほど買った赤いスプーン状の疑似餌だ。



「投げ方は分かります! せーい!」



 と、早速それを沖へと投げる愛ちゃん。

 おお、意外と良いフォーム……。

 いや!

 違う!

 そっちじゃない!


 彼女に仕掛けを回収させ、投げる方向を指さす。

 狙うは岸壁スレスレだ。



「え! あんなところ……投げられますかね……? えい!」



 と、疑似餌を岸壁際に投げ込む愛ちゃん。

 ちょうど貝の群生地帯のすぐ横に着水した疑似餌は、スルスルと沈んでいく。

 なんだ、上手いじゃないか。



「えっと……これで巻けばいいんですか?」


「いや、ひとまずは巻かなくていい、糸の動きと、竿の手ごたえに注目して……」



 沈んでいく仕掛けの先を指さし、彼女の視線をラインに集中させる。



「あ、今アタリあったよ」


「え!? 何がですか!?」


「もう一回投げて、今度はもっとよーく見ててごらん」


「はい!」



 釣具屋のオヤジさんに習った釣法だが、俺には経験がある。

 クロダイのルアー落とし込みだ。

 やはり、アタリの出方まで同じ……。

 キーバスに続き、懐かしい雰囲気の魚に会えそうな気分で胸が高鳴る。


 再び投入された愛ちゃんの疑似餌が、左右に揺れながら海中へと消えた。

 さあ愛ちゃん。

 分かるかな?


 疑似餌は一定の速度で沈下していく。

 ラインはそれに合わせ、一定の速度で沈んでいく。

 愛ちゃんにはラインのテンションが一定になるように、沈下に合わせて竿を海面に向けて傾けさせる。

 その沈むラインが、一瞬「フッ」と緩んだ。



「あ! 今のアタリですか!?」


「はいアワセ!」



 彼女がアタリに気付いた瞬間、俺は彼女の手を取り、竿を勢いよく跳ね上げさせた。

 直後、愛ちゃんの竿が「グン!」と曲がった。



「ラインが岸壁で擦れないように、竿はこの角度!」


「はい!」



 PEラインは感度抜群な代わりに、瀬ズレには激弱だ。

 竿を岸壁に対して90度の角度で保ち、それでいて極力前へ突き出させる。

 幸い、それほど大きな魚じゃないようで、愛ちゃんがヒーヒー言いつつしばらく引きを耐えていると、じわ~っと水面へ上がってきた。


 たも網を召喚し、魚を取り込む。

 わお! ブラッキー!


 愛ちゃんが釣り上げた魚は、元いた世界のクロダイにそっくりだった。

 より黒が強く、口先が尖っているくらいか……。

 和名で呼ぶなら……。

 クチナガクロダイかな?



「やった! やりましたよ先輩! 写真撮りましょう写真!」



 そう言ってポケットに手を突っ込む愛ちゃん。

 「あ……アハハ……」そうでした。

 と、我に返り、舌を出して笑う。


 写真かぁ……写真なぁ……。

 何か代替できるものとかあったらいいんだけど……。


 そんなことを考えていると、目の前に愛ちゃんの掌が差し出された。

 「せーんぱい!」と、笑う愛ちゃん。

 俺はその手に自分の手をパチンと当て、軽いハイタッチを交わした。


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