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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第7話:魔法剣士アイ




 愛ちゃん、コトワリさんを迎え、5人の戦隊と化した我らがシャウトパーティー。

 イエローがリーダーって珍しいな。

 そんな俺達雷刃戦隊は、都のギルド本部に参上する。


 特務戦力顔合わせはまだ数日先だが、新入り二人の冒険者登録がまだなのだ。

 流石にギルド無所属のモグリを法王庁の名の元に連れて行くわけにはいかない。



「おお! これはなかなかに賑やかな集会所じゃないか! む! しかも食堂があるぞ!」



 と、誰よりリアクションがデカい官憲天使。

 肝心の愛ちゃんは、その何とも言えない熱気や近世的な古臭い環境に少し腰が引けている。

 うんまぁ……。

 その反応も正しいと思うよ。


「私この環境で生きていく自信ないですぅ……」と涙ぐんでいる。

 しかし……この世界で特殊技能を持たない転生者が食っていくには選択肢があまりにも少ない。

 

 商店や職人は幼年から奉公、弟子として入らなければならず、俺達は志すこともままならない。

 一次産業など、荘園領主と農奴のような様相で、行ったが最後、死ぬまでこき使われる。

 所謂公務員は世襲制状態。

 その他、輸送や給仕などは、おおかた地域の若者が席を埋めている。

 この世界のまともな人材市場は、既にこの世界の住民で飽和しているのだ。


 その点冒険者はいい。

 労働時間も仕事も自由で、リスク管理も自分の裁量で可能だ。

 ローリスク・ローリターンで安全安心、慎ましやかな生活を送るもよし。

 ハイリスク・ハイリターンで名を上げ、成り上がりを目指すもよしだ。

 

 ただ、肉体的な全盛期を超えた後の不安と、死の危険には常に晒される仕事ではあるが……。

 平均寿命30歳とかいう界隈だしね……。

 俺達は結構貯蓄があるけど、生活苦にして自ら命を……みたいな人も多いんだろうなぁ……。



「うう……帰りたいよう……お母さん……」



 ダメだ……。

 気の毒過ぎる……。

 聞けば、生前大火事のショッピングモールで子供を庇い、燃え落ちてきた建材の下敷きになって死んだらしい。

 もっといいチートスキル授けてあげてよ天界の転生窓口!!



「来ちゃったからには仕方ないさ……。俺も力になるからさ」


「ぐすっ……よろしくお願いします……」



 コトワリさんが何か無神経な一言を吐こうとしたが、ミコトがすかさずヘッドロックで阻止した。

 ナイスブロックだミコト。



「おい、何ゴチャゴチャやってんだ。さっさとギルドカード作れ」



 先輩に急かされ、俺は愛ちゃんをギルドの受付窓口へと促す。

 ミコトもコトワリさんをヘッドロックのまま連行してきた。

 ギルドカードの発行は至って簡単だ。

 マジックアイテムであるカード発行機に手を置き、自身の生体データを吸わせるだけ。


 デイスギルドの発行機は旧式だったが、ここのは最新式だそうで、俺達が怠っていたジョブスキルの査定と覚醒まで一律でやってくれるらしい。

 ギルドカードと共にジョブスキルプレートがカシュッと射出された。



「へぇ。ルーンナイトか……。お前もなかなかのレアジョブスキル持ってるじゃねぇか」


「る……ルーンナイト……?」


「魔法と剣術を駆使して戦う遠近両刀の上位ジョブだよ」


「ああ、良いんじゃねぇか? お前の武器召喚スキルと合わせりゃ、フレキシブルな戦法が展開できそうだぜ。補助スキルの魔力節約も優秀だぜ」


「そ……そうなんですか……。はい……」



 あ、愛ちゃんちょっと嬉しそう。

 ちなみに、コトワリさんはプリーストだった。

 「わ……私は仮にもエンジェルなのだが!? せめてエンジェルナイトだろう!?」などとデカい声で機械にキレだしたので、ミコトが締め落とした。

 一応ミコトより格上の人なんだよねその人……?




////////////////




「いいか、アタシらはこれから難易度が高めのクエストを連続でこなすことになる。お前を常に守ってやるわけにはいかねえんだ」



 愛ちゃんに基礎的な魔法を覚えてもらい、とりあえず食堂で飯を食う俺達。

 山盛りの焼き貝を挟んで、シャウト先輩が愛ちゃんに険しい表情を向ける。

 「は……はいぃ……」と、縮こまる愛ちゃん。

 そんなに怖がらなくて大丈夫だよ……?



「つーわけでだ、お前にはこの3日で冒険者としての基礎の基礎を叩きこむ。アタシがクエスト出してやるから、それを全力でこなせ」


「はひぃいい……」


「お前ホントにやる気あんのか!?」


「ひいいいいい!!」


「せ……先輩もう少しお手柔らかにっス。愛ちゃん怖がってるっスよ」



 ミコトの言葉に「ったく……!」と言って貝を頬張り出す先輩。

 「お前らも食え」と目配せしてきたので、俺も貝をいただく。

 お、クリーミーなムール貝みたいな味だ。

 海が近いおかげで、ギルドの食堂で新鮮な海産物が食えるのは嬉しいな。



「まあ愛ちゃん、とりあえずここは頑張ってみよう。俺達もサポートするから」


「そうっスよ! 誰でも最初は不安っス!」


「……そうですよね。もうここまで来ちゃったら、やるしかないですよね……。武器召喚なんてスキルも貰っちゃいましたし……」



 生前の話を聞くに、気弱ながら芯は強い子なのだろう。

 恐怖に潤んでいた瞳に光を宿しながら、グッと胸の前で握りこぶしを作って見せた。



「ともかくだ、今日この後すぐ一発目のクエスト行くからな。覚悟しとけよ」


「……分かりました。頑張ります!」


「へへ……。ようやくいい返事が出来るようになったじゃねぇか。ほら、お前もちゃんと食え」


「あ、はい! いただきます!」



 愛ちゃんは先輩が差し出したフォークに刺さった貝の身を一口で頬張り、ニコリと笑って見せた。

 ところで、この一連の下りの中、妙にコトワリさんが静かだなと思っていたが……。

 ミコトの隣で貝の旨さに恍惚としていた。


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