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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
2章:ダンジョン・アングラー 大陸中央迷宮変
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第6話:一つの出会い




「いつか再び会すこともあろうかと思っていたが、まさかこんなにも早いとは思わなかったぞ! 君たちとは強い縁があるな!」



 先輩の電気鞭にあれだけ長時間縛られていながら、ケロッとして笑うコトワリさん。

 あの鞭巨大熊ぶっ倒す威力あるんすけど……。

 天使族の身体ってそんなに頑丈なの……?

 

 その横で怯え切ってる、自称転生者の方。

 ……。

 まあ、その服見るに転生者でしょうな。



「あな……あなたが矢崎さんですか……?」


「あぁ!?」


「ひいいいいい!!」



 あの大技を見たら、そりゃ先輩の方を転生者と思うだろう。

 すみません、俺の方です。

 しかし、先輩のいる手前、転生者トークをするのもちょっと憚られるな……。

 などと思っていると、コトワリさんがズイと前に出てきた。



「気を付けるんだ、この人は粗暴で乱暴で礼節を知らないぞ」


「んだとコラァ!!?」


「うっ!! 事実を言ったまでだろう!! 初対面で電流を浴びせてくる輩めが! ふん!」


「おお? なかなかやるじゃねぇかテメェ!!」



 先輩と転生者ちゃんの間に割り込んだコトワリさんが相変わらず歯に衣着せぬ物言いをぶちかまし、それに怒った先輩が電気鞭を放つ。

 しかし、コトワリさんはそれをオシャレな棒で受け止め、華麗な棒術を披露しながら先輩と組み合いを始めた。

 結構強いなアンタ!!



「雄一さん……。今のうちにちょっとお話してあげるっスよ」



 ミコトがそっと耳打ちしてきた。

 お、おお。

 確かにチャンスか……。

 もしかしてコトワリさん配慮してくれたのかな?

 ……多分違うだろうな。



「えーっと、俺がその……日本からの転生者。矢崎 雄一です。君もかい?」


「は……はい! 私、深山 愛って言います! ほんの少し前に転性してきて凄く心細くて……! 一緒の故郷の人に会えて良かった……」



 目を輝かせて俺の手を握ってくる愛ちゃん。

 年は15~6くらいだろうか?

 タイドやレフィーナと同じかやや幼いくらいに見える。



「転生者ってことはさ……。もしかしてちょっとズルい能力とか貰っちゃってたりする?」


「え……? い……一応、体の強化と免疫強化と言語自動翻訳と……武器の召喚です」



 前に突き出された彼女の掌に、ダガーナイフがボゥッ……と現れた。

 今出せるのはこのサイズが限界だそうだ。

 なんか、言っちゃ悪いが俺のに比べて随分しょっぱいな……?

「雄一さんはかなり事情が特別っスからね……」と、ミコトが苦笑いを浮かべて小声で呟く。



「こんな能力持たされて、オンボロアパートの一室に放り込まれて途方に暮れてたら、突然押しの強い人が来て、ギルドに入るんだ! 冒険に出るんだ! 転生者としてこの世界の為に戦うんだ! って凄い圧かけてくるし……」



 口をへの字に曲げて、シャウト先輩と壮絶な殺陣を披露中のコトワリさんを見やる愛ちゃん。

 ああ、俺で言えばミコトの代わりにあの人が転生当初からついてくるのと同じ感じか……。

 ノイローゼになるわ……。



「あのっ! ここでお会いしたご縁です! 私を雄一さんのパーティーに入れていただけませんか!? 私、下働きでも炊事でも何でもします!」



 先ほどから掴みっぱなしの俺の手をブンブンと振り、必死にお願いをしてくる愛ちゃん。

 い……いや、俺個人としては構わないけどさぁ……。

 ボス殿が何て言うか……。


 しばらく視線を外していた間に、ボッコボコにされたコトワリさんを引きずりながら、先輩が戻ってきた。

 よく見れば、あの激闘にあって、先輩の身体には傷一つ入っていなかった。

 いい汗かいたとばかりに、コトワリさんをゴロリと転がす。

 「ひいいいいいいい!!」と怯え、俺とミコトの後ろに隠れる愛ちゃん。



「ふぅ―――! 結構な難敵だったぜコイツ。ま、アタシに挑むにゃまだまだだがな! お? 次はテメーが相手か?」



 その言葉と目線に卒倒しかける愛ちゃんをミコトが優しく抱きかかえて庇った。



「いや、この子俺と同郷の新米らしくて、しばらくパーティーに入れてくれないかと……」


「あぁん!?」


「ひぃ……! ブクブクブク……」


「うわーん! 愛ちゃん気を確かにっス―――!」



 恐怖に耐えかねたのか、愛ちゃんはとうとう泡を吹いて失神してしまった。

 ダメだ。

 この子、守ってあげないとクエスト初回で死んじゃうわ……。



「何とか抱えてあげられないっすか? 俺も頑張ってクエスト回すんで」


「そんなヘッポコ抱えて暗黒大陸の連中や悪魔やラビリンスダンジョンに挑める訳ねぇだろ! デイスじゃねぇんだぞ?」


「そ……そこを何とかっス……。私からもお願いするっス……」



 「オメーらどうかしてんぞ……? こんな雑魚連れてく方がよっぽど危ねぇだろ……」と、ド正論を言う先輩。

 いえ、まあ仰る通りなんですが……。



「いや! 今なら私も彼女の助っ人として参戦するぞ! 今回はかなり頑丈な体にしてもらったのでな! 魔法と棒術で君たちをサポートしてみせようじゃないか!」



 早くも回復したコトワリさんが、先輩の方に手を置き、「どうだ? 得だと思うぞ」と馴れ馴れしく勧誘する。



「先輩……」


「どうかお願いするっス……」


「舎弟たっての願いだ。聞いてやっても構わないと思……ブッ!!」



 コトワリさんを裏拳で張り倒し、先輩がミコトの膝の上で介抱されている愛ちゃんをまじまじと見つめるシャウト先輩。

 まるで品定めをするかのように黙って見つめている。

 緊張の一時だ。


 しばらくして、先輩が大きなため息と共に口を開いた。



「当分ダンジョンでの戦闘には参加させねぇぞ、あとクエストの難度によっちゃ置いてくからな」


「!!」


「先輩それって……」



 俺達二人を交互に見つめ、先輩は再び大きなため息をついて穏やかな笑顔を浮かべた。

 ここに、中央大陸の迷宮事変攻略パーティーが結成されたのだ。

 どこからともなく、「ほっほっほ……」という声が聞こえた気がして、辺りを見渡したが、法王の爺さんの姿は見えなかった。

 この出会いもまた、何かの運命なんだろうか……。

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