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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
1章:ダンジョン・アングラー 大陸西方迷宮変
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第11話:水没森林の迷宮




「ケケケケー――!!」



 カエル顔のひょろ長い魔物が、四方から迫りくる。



「せい!」


「ウィンドスラッシュ!」



 俺の氷手裏剣が、エドワーズの風刃が、それらを迎え撃つ。

 カエルのようなヌルヌル柔肌は、俺達の牽制攻撃でも深く傷が入り、青色の体液をまき散らす。

 深手を負った2体のフロッグリンは、グデンと仰向けになってビクビクと痙攣し、やがて動かなくなった。


 それを見た残りの個体は、ゲロゲロと喉を鳴らし、凄いジャンプ力で一斉に逃げ去って行く。

 その後を追跡する、白い鳥のような物体。

 ビビの持つ追跡魔法だ。

 レンジャーのジョブスキルを備える彼女は、回復、攻撃のほかに、このような追跡魔法や隠密魔法を得意としている。


 彼女の誘導に従い、後をひっそりとつけていくと、なるほど、木のうろにポッカリと迷宮が口を開けていた。

 やはり、ラビリンス・ダンジョン由来の魔物だったようだ。



「フロッグリンがいるってことは、湿地帯の迷宮だと思う。気を付けていこう」



 リーダー面で先陣を切り、ダンジョンに入っていこうとするエドワーズ。

 普段なら何気なく先鋒を任せる俺だが、不意に、ミコトとシャウト先輩の顔が脳裏を過った。



「うぉい!? ユウイチお前何やって……!」



 なぜそんな行動に出たのかは分からないが、俺はエドワーズをぐいと押しのけ、我先にダンジョンへと足を踏み入れようとした。

 だが、既にエドワーズは半分ダンジョンへ身を乗り出しており、一人分くらいの幅しかないゲートの淵に二人仲良く引っかかってしまった。

 痛てててて!! 詰まる!!



「詰まる! じゃねぇよ!? お前どうした!?」


「いや、ここで先陣を切らせるのは俺のパーティーと先輩の二つ名の沽券に関わる気がして……!」


「おー……! そうかい! お前もそういうこと考えだしたか! 張り合いあるじゃねぇか!!」


「ぐぬぬぬぬ!!」



 俺の上手く言葉にできない感情を超速理解したエドワーズが、いっそう力を入れてゲートをくぐろうとする。

 こいつ……!

 今まで意識したこともなかったけど、こんな場面でも俺と張り合おうとしてたのか……!



「バブル!」


「うおっ!?」


「どへぁ!?」



 背後から魔法詠唱が聞こえたかと思うと、俺とエドワーズの身体はゲートをツルンと抜け、ラビリンスに顔面スライディングで突入した。

 振り返ると、ビビがゆっくりとゲートをくぐって来た。



「メンバーがラビリンス・ダンジョンのゲートに引っかかった時にも泡魔法……と」



 彼女が手にする魔法教本には、タンポポの花弁のごとく無数の付箋がつけられていた。




/////////////////////////////////////




 突入したラビリンス・ダンジョンは、想像以上に高湿度だった。

 広大な森が丸々湖に浸っているような環境で、俺達が降り立った場所も、枯れ果てた巨大樹の切り株の上だ。

 湿地というか、完全に水没森林である。



「こんな場所……どうやって攻略すればいいんだ!?」



 エドワーズの声が、檻のように広がる木々の根に木霊した。

 すると、突然前方の湖面にブクブクと泡が立ち、ケロケロという鳴き声と共にフロッグリン達が次々飛び上がってきた。

 うわ! 奇襲!?


 剣を構えて迎え撃とうとするが、彼らは俺たちの射程に入ることなく、切り株の下を走り抜けていった。

 俺達を狙ったんじゃないのか……?

 しかし安堵も束の間。

 今度は足元を凄まじい振動が見舞った。

 地震!?


 地面に伏せてそれをやり過ごす。

 水面が激しく波打ち、水しぶきが俺達まで降りかかってきた。

 震度7くらいあんぞこれ!!



「地震は火山活動や大地の変動によって起きる現象、地中を移動する巨大魔物が原因の場合もあります! 過去の例として大陸東岸を58年前に襲った海底火山の噴火と、それに伴う地震、津波が有名で……」



 半泣きになりつつ、俺の後ろでご丁寧に解説を始めるビビ。

 いや、今その情報はいらないから! じっとしてなさいって!

 カトラスで地震に慣れているエドワーズを見ろ!

アイテムポーチを頭にかぶせ、頭上からの落下物に備えつつ、手足でしっかりと地面を掴み、転倒を防いでいる。

 彼の対地震防御姿勢は完璧だ!


 俺は二人の傍に身を寄せ、上から落ちてくる枝や木の実からオートガードで守ってやる。

 そうこうしている間に、揺れは収まり、水没森林はもとの静けさを取り戻した。

 切り株の下では、落ちてきた木の実や小動物を食いに、大小の魚たちが泳ぎ回っていた。

 ……!

 くっ……静まれ俺の右手!

 疼きだす釣り人の性を理性で抑えつける。



「……釣具召喚!!」



 俺は本質的には冒険者としてダンジョン攻略を進めたいと考えているが、未知の魚を前にしては釣りたい欲も食べたい欲もコントロールできない……。



「あ……あのユウイチさん……?」


「はぁ……やっぱり相変わらずだよなぁ……」



 という声が後ろから聞こえてきた。

 しかし俺は「アングラーのジョブスキルを生かすにはそのダンジョンの魚を釣って食う必要がある」という言い訳を身に着けてて、クエストの最中に竿を出すことに慣れているぞ。


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