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異世界フィッシング ~釣具召喚チートで異世界を釣る~  作者: マキザキ
1章:ダンジョン・アングラー 大陸西方迷宮変
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第9話:緊迫の謝罪会




「……」


「……」



 ギルド本部の奥にある狭い個室で、俺の向かいに座った少女は、俯いたまま微動だにしない。

 俺も釣られて無言にならざるを得ない。

 部屋の出入り口には、シャウト先輩が腕を組みつつもたれかかり、目をつぶったまま俺達の様子を伺っている。

 ミコトや相手の仲間たちは部屋の外で待機中だ


 なんでこんな重苦しい事態になっちゃうかなぁ……。

 俺は別に怒ってないんだけど……。

 なあ、レフィーナ……。



「……」



 体面に座るレフィーナは、唇を少し震えさせて何かを言おうとしたが、再び俯いてしまう。

 なんでも、俺に対する無礼、非礼に関して一対一で謝罪をしたかったらしい。

 ただ、パーティーメンバーに対する侮辱があれば、そのリーダーが決着をつけるのが冒険者一党のしきたりとのことで、シャウト先輩が出てきてしまったのだ。


 先輩も「メンバーが後輩と意見の相違で仲違いした」程度のことで新米イビリをするような人ではない。

 だが、仮にも法王庁より指名依頼を賜る二つ名一党の党首としては、なあなあで済ませるわけにもいかなかったらしい。


 「アタシはあくまでも見届けるだけだ」とは言ったものの、怖い先輩で有名な人が同席しているとあっては、「ごめんなさい」の一言で済ませるのかと、誰でも勘ぐってしまうに違いない。

 「んな謝罪でスジが通ると思ってんのかオラァ!!」とか言われて殴られそうだもんね……。

 大丈夫だぞレフィーナ、先輩はそんなことでキレたりはしない。



「……申し訳ありませんでした!!」



 突然、意を決したように椅子を蹴り、レフィーナが勢いよく頭を床に叩きつけた。

 俺も、シャウト先輩も思わずビクッとしてしまう。



「己の実力を過信し、先輩を侮辱した上、敗北するという無様極まりない結末。挙句、結果として先輩にさらなるご迷惑をかける最低の体たらくぶり……申し訳ございません!! このクズめに折檻を……そしてどうかお許しを……!!」



 そう言いながら器用に服を脱いで全裸土下座に移行しようとするレフィーナを、俺と先輩が止めに入る。

 うわ! すっごい汗!!

 「申し訳……ありません……」と、脱水症状か意識を朦朧とさせながら、うわ言のように呟き続けるレフィーナを部屋の外へ連れ出す。


 知らない間に、部屋の外にはミコトとレフィーナのパーティーメンバー以外にもギャラリーができていた。

 服をはだけさせ、汗にまみれたた新米女冒険者が半裸で担ぎ出されてきたとあって、辺りがザワつく。

 シャウト先輩がひと睨みすると、「ヤバイヤバイ」と散っていったが、色々と誤解を受けそうな……。

 まあ、シャウトパーティーの沽券は守れただろう。

 でも法王庁のブランドに傷つけてねぇかな……?




////////////////




「なあユウイチ……お前らあの部屋で何したんだよ……」


「やっぱシャウト先輩ってドS調教とかすんのか!?」


「俺も電気鞭で叩かれてぇ~」



 などと、ギルドの食堂で絡みまくってくる知り合いやら同期やら。

 めんどくさいが、「別に大したことはしてねぇよ。ちょっと先輩の圧が怖くてあの子が取り乱しちゃっただけだ」と、やんわり、それでいて的確に事実を伝える。

 まあ、それを鵜呑みにしてくれる奴など皆無なのだが……。

 全く……下世話なネタ好きだもんなぁ、冒険者ってのはどうにも。



「おいおい、お前また話題の人になってんのか? 羨ましい限りじゃねぇか」



 下衆の勘繰りにウンザリしながらイノシシステーキを食べていると、エドワーズが山盛りの炒め飯を持ってやって来た。

 微妙に久しぶりだなお前。



「ああ、相変わらずカトラスに入り浸ってたからな。どうよお前これ、肌超スベスベだぜ」



 そう言って腕や足、胸元をまくり、ツヤッツヤの素肌を俺の眼前に露出してくる。

 やめい!

 公衆の面前でそんなに肌出すな!



「そのまま思わずペロッと……ペロッと……」



 という、言葉と荒い息使いが背後から聞こえたが、スルーする。



「お前もラビリンス・ダンジョン攻略してるんだって? 随分やる気出してんじゃねぇか」


「半分は先輩の沽券の為だけどな」


「でももう半分はお前の意思ってことだろ? いいじゃねぇか! お前がそうじゃねぇと、オレもライバルとして張り合いがねぇ」


「誰がライバルだっての……」


「かー! もうオレは眼中にないってかい! かー!」


「だー! 昼間から暑苦しいなお前は! 俺は朝からよく分からん謝罪会開かされて疲れてんだよ! 何だよ!? 用事があるなら端的に! 無いなら夜まで放っといてくれ!」



 スベッスベの腕で絡んでくるエドワーズを払いのけ、ステーキを頬張る。

 するとエドワーズはタハハと笑い、自分の飯を食べ始めた。



「いやな、デイスに戻ってきたらお前がラビリンス・ダンジョン潜ってるって聞いてよ、せっかくだし久々の合同パーティーでラビリンス・ダンジョン攻略でもしてえなって思ったんだ ハムハム」


「なんだ。それなら先に言えよ ムグムグ」


「お!? 良いのか? 一回は断られると思って口説き文句も用意してたんだが ハフハフ」


「お前どうせ俺が了解するまで付きまとってくるだろ ムグムグ」


「よく分かってるじゃねぇか。それでこそオレのライバルだ ハムハム」


「ライバルじゃねぇって……」


「照れんなよ」



 実を言うと、俺も久々にエドワーズらとクエストに出たいと思ってはいた。

 こいつらのレベルアップの程も見ておきたいし、それにここの所、頼ったり頼られたりで、少しプレッシャー感じてたしな。



「ふふ……ふぉおおおおお……」


「うわ! コモモ凄い鼻血!」



 そんな声が背後から聞こえてきたが、まあ、スルーしておこう。


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