コマドリの唄ーオンボロ橋の物語ー
ヒンカラカラ ヒンカララ
昨日起こった大事件
空から見ていた一部始終
私の可憐な唄に乗せ
語り聞かせてあげましょう
パクパクモグモグごっくんこ
ヘビが木の実を食べてます
食いしんぼうなこのヘビの
大好物は木の実なの
木の実になにより目がなくて
パクパクモグモグごっくんこ
そこにひょっこりリスが来て
何やら相談しています
耳をすませば悪だくみ
怖がり屋さんのあのクマを
壺に隠れて驚かす
うまくいったら採り貯めた
木の実をヘビの好きなだけ
食べてもいいよとリスは言う
任せなさいと胸を張り
壺にシュルシュルすっぽりと
吸い込まれるよに入るとさ
びっくり壺のできあがり
壺を木陰に置いたなら
リスはトトトとクマ探す
いつものところで昼ごはん
クマを見つけてチチチチチ
笑いをこらえて近づいた
ねえねえクマさん良いものあるよ
なんだいリスさん良いものって
言葉巧みに誘うリス
壺に入った蜂の蜜
一緒に食べに行きましょう
蜂の蜜には目がないクマは
ほいほい後をついていく
あそこの壺にありあまる
あまーい蜜があるんだよ
クマはウキウキ近づいて
壺の中身をのぞいてみると
パッと飛び出す緑のロープ
ぎゃっと聞こえた聞こえない
声にならない音がして
ドタドタドタっと逃げ出した
チチチチチュチュチュと笑い声
ヘビも木の実を期待して
シャラシャラシャシャシャと笑い声
そしてペロリと舌なめずり
うまくいったないったねと
リスとヘビとはハイタッチ
尻尾を組んで歩きだす
一方クマは慌てふためき一心不乱
周りも見ずにただただ逃げる
ただただただただドタドタドタドタ
尻尾を組んだリスとヘビ
ハッと気づいて笑いが止まる
クマの逃げてくその先は
オンボロ橋のかかるとこ
そっちはダメだと呼びかける
けれども聞こえるはずもなく
ドタドタドタドタドッタドタ
後を追いかけトトトトシュルシュル
クマの逃げ足速すぎて
リスヘビ全く追いつかない
ドタドタドタドタへたへたへた
クマが疲れてへたり込んだは
まさかまさかの橋の真ん中
オンボロ橋はその名の通り
いつ落ちたっておかしくない
ギシギシみしみしギリギリギリギリ
足がすくんで一歩も動けず
橋の真ん中立ち往生
ガクガクギシギシぶるぶるみしみし
大きな体が震えるたびに
オンボロ橋が悲鳴をあげる
クマは助けを呼ぼうとするが
その声よりもギシギシみしみし
ガクガク震えが止まらない
ガクギシぶるみし誰か助けて
トトトトトトトシュルシュルシュル
リスとヘビとが駆けつけた
リスがササッとクマの肩
登って耳元ささやいた
下を見ないでゆっくり行こう
大丈夫だから一歩ずつ
ヘビがクマの腰を巻き
僕がロープになってあげるよ
落ちそうになっても大丈夫
僕は丈夫な命綱
リスとヘビとが励まして
ゆっくりゆっくり一歩ずつ
トトトトシュルシュルのっしのし
ゆっくりゆっくり一歩ずつ
トトトトシュルシュルのしバキン
橋板割れて落ちるクマ
ヘビにつかまり危機一髪
すぐさまリスが手伝うが
大きなクマは持ち上がらない
クマリスヘビが絶体絶命
これは大変ヒンカラカラ
私も手助けしましょうと
クマの背中に足をかけ
バタバタバタっと羽ばたいた
これがほんとのスズメの涙
クマは全く持ち上がらない
作戦変更上空へ
ヒンカラカラヒンカラカラ
誰か近くにいませんか
ヒンヒンカララヒンカラカラ
大変なんです助けてください
呼びかけ聞きつけ駆けつけてきた
暴れん坊のアライグマ
どうした何が大変だ
よく来てくれたヒンカララ
力自慢のアライグマ
彼がいたなら百人力だ
クマリスヘビが橋の上
今にも落ちそう助けておくれ
わかった俺に任せとけ
オンボロ橋に足をかけたが
みしみしみしとすごい音
もうこれ以上乗ったなら
オンボロ橋ごと落ちちまう
さっと後ろに退いて
辺りをグルリと見回して
もう少しだけ頑張れと
クマリスヘビに声をかけ
どこかへ走って行きました
ヒンカラカラヒンカラカラ
早くしないと大変だ
みんな揃って真っ逆さま
誰か助けてヒンカララ
急いでおくれアライグマ
頑張れみんなあと少し
すぐに助けは来てくれる
頑張れ頑張れヒンカラカラ
急いでおくれアライグマ
ぜえぜえはあはあ橋の下
息を切らせたアライグマ
手にはりんごを握りしめ
川へと進んでいきました
そこへダダダとキツネも合流
手伝えることはありますか
一緒にこっちに来てくれと
手招きをするアライグマ
揃って川岸着いたなら
持ってたりんごを洗いだす
こんなときにヒンカラカラ
のんきに何をヒンカララ
バシャバシャバシャバシャ
りんごを洗う
キツネも飛び跳ね
ジャブジャブジャブジャブ
辺りに飛び散る水しぶき
暴れん坊のアライグマ
さすがにすごい水しぶき
バシャバシャバシャバシャバッシャバシャ
負けじとキツネも
ジャブジャブジャブジャブ
しぶきがしぶきとぶつかって
辺りに霧が立ち込める
そこにキラリとお日様の
光が一筋差し込んで
七色輝く逆さ虹
オンボロ橋のその下に
くっきりはっきり現れた
もうダメだ
クマリスヘビは力尽き
真っ逆さまに落ちていく
けれども下には逆さ虹
クマリスヘビを受け止めて
するするするりとすべり台
そのままたもとにするりと着地
クマリスヘビは揃ってキョトン
まんまるお目目がさらにまんまる
何が起きたかわからない
オンボロ橋を眺めてみると
その下にかかる逆さ虹
なんてきれいな虹だろう
クマリスヘビはつぶやいた
ほっと一息アライグマ
りんごにガブリとかぶりつく
キツネはゆっくり毛づくろい
やっぱり君は凄いよと
言われて真っ赤なアライグマ
うるせえこんなの当然だ
真っ赤なりんごにかぶりつく
一件落着ヒンカラカラ
みんなで見つめる逆さ虹
時間を忘れる美しさ
その美しさは改めて
この森の名を思い出す
逆さ虹の森
これからも皆がこの森そう呼ぶだろう
ヒンカラカラヒンカラカラ
めでたしめでたし
まだ早い
怒りに震えるアライグマ
橋のたもとに現れて
さっきとは違う赤い顔
何があったか話してみろと
クマリスヘビに詰め寄った
あのねこれはねあのあのね
言葉に詰まったクマの横
洗いざらいに話すヘビ
ひっそりリスは逃げ出した
暴れん坊のアライグマ
リスを追いかけこのやろう
トトトトダダダトトトトダダダ
そのときクマが振り絞り
やめてと声をあげました
その声の大きさは
森全体が震えるほどで
流石の私も口つぐみ
唄うの忘れたほどでした
オンボロ橋に行ったのは
僕が周りを見てなくて
悪いのは全部僕なんだ
リスをつかんだアライグマ
お前がそこまで言うならと
リスを離して言いました
これで懲りたら金輪際
イタズラからは足洗え
ヘビは落ち込みシュンとして
ごめんなさいと謝るが
ついついリスは呟いた
アライグマだけに足洗え
チチチチまさかの洒落ですか
やっぱりお前は許さねえ
逃げ出すリスと追うアライグマ
ケンカはやめてと慌てるクマに
まあまあ落ち着けなだめるキツネ
いつもの光景戻ってきたよ
みんな仲良くドタバタドタバタ
ヒョイッとリスがクマの肩
登って何かをつぶやいた
何を言ったか私にも
聞こえないほど小さな声で
そしたらクマがニコッと笑い
リスも笑って逃げてった
今度会ったらただじゃおかねえ
じゃあなと立ち去るアライグマ
みんなありがとうとクマが言い
ひっそり真っ赤なアライグマ
最後にヘビが一言いった
まあケガなくて良かったね
最後の最後も洒落ですか
みんな陽気な仲間たち
一日経てば仲直り
明日は何が起きるだろう
ヒンカラカラヒンカラカラ
めでたしめでたしヒンカララ
それからそれからどうなった
オンボロ橋は危ないと
取り壊されて新しく
ピカピカ橋ができました
けれども誰も渡らない
みんな使うは滑り台
七色キラキラ逆さ虹
するするするりと面白い
人気になって大行列
森の仲間の遊び場に
はてさて誰が水しぶき
あげているのか橋の下
そこではみんなが川遊び
上ではするする
下ではバシャバシャ
みんな楽しく遊んでる
私もまぜてヒンカララ
バシャンと川に飛び込んだ
これでおしまいヒンカラカラ
ヒンカラカラカラヒンカララ