これがサンタさん効果ってやつか
その日俺は急いで家に帰った。皆から否定され悔しかったため、ちゃんと確認したかったのだ。
玄関の戸を勢い良く開け、俺はただいまも言わず自室に駆け込む。そしてランドセルを下ろすとゲームに駆け寄った。
そして素早く側面にある電源ボタンをスライドさせ、画面を食い入るように覗き込む。
画面に電源がつくと見慣れた映像が流れだすが今の俺にはその画面をゆっくり見てる余裕は無く、ボタンを連打してコンティニューを選択する。
「やっぱりみんなが言ってるのは嘘じゃないか」
メニュー欄を見ながらぽつりと呟く。ゲームの中では百レベを超えたモンスターたちが大人しく待っている。そして図鑑を見てもコンプリートした図鑑と、まだ半分も超えていないもう一つの図鑑が映し出されている。
なんで皆嘘なんて言ったんだ? そう思っていると階段をたんたんと上ってくる音が聞こえた。扉の方に顔を向けると予想通りお母さんで「そんなに急いでどうしたの?」と首を傾げながら聞いてきた。
俺はただいまも言わないで!っと怒られると思っていたが違ったため、試しにお母さんに学校であったことを話してみる。
「ふーん、それは変ねぇ?」
「でしょ! 皆嘘って言って笑うんだ」
「ん~、今度みんなと遊ぶときにゲームを持ってったら?」
お母さんの発言ではっとなる。そうだ、この画面を見せればいいんだ。そうしたら嘘じゃないと分かってくれる。
俺は悩みが解決したことを喜ぶ。だってこれで心ゆくまでゲームできるだろ?
充電器からゲームを抜き、俺はいつものようにベッドに上がりふかふかのクッションを抱きかかえながらゲームを始めようとする。
しかし、そこでまた母上がファインプレー。
「あと可能性があるとしたら皆福ちゃんほどゲーム進んでないんじゃない?」
だってずっとやってるものね。そう言ってお母さんが少し呆れた顔をしながら笑うが、そのときの俺には聞こえていなかった。
なるほど、その可能性はある。だって友達は習い事をしている奴が多い。皆放課後は俺より暇な時間が少ないため、ゲームが進んでいないかもしれない。
むしろその可能性がとんでもなく高いのではないだろうか?
俺はにまにま笑う。皆俺にゲームを抜かされたことが悔しくて言っていたと分かったからだ。
ふふん、昔から習字を習っていた俺だ。集中力だけは無駄にある。同じ三十分でも皆と質が違ったりしたのだろう。目指すは効率の良いプレー、時間を無駄にしてなんかたまるか。
ん、待て待て。俺のことをなんて呼んだ?
「ちょ、お母さん、福ちゃんって呼ばないでって何回も言ってるじゃん!」
「あら良いじゃない。福太郎で福ちゃんって可愛いでしょ? じゃあお母さん下にいるから、きりが良いところでおやつ食べに来なさい」
そう言ってお母さんはまたたんたんと音を鳴らしながら階段を下りて行った。扉を開けっ放しで行ったことにムッとなるが、今日は良いことを聞けたので許してあげよう。
* * * *
* * * *
「ふくたが例のゲーム見せてくれるらしいぜ」
「マジでーー」
久しぶりに皆で公園に集まったとき、俺は家からゲームを持ち出した。初めて外に出したが、落としたらどうしようという疑問が頭から離れない。俺は促されるとゲームを入れてきた巾着袋をそっと開け、中から取り出す。
そして流れるような動作ですっと電源をつけ____
ってあれ、あれれれれれ!? つけられない!
横をいくらスライドさせても画面は真っ暗なままでうんともすんともいわない。
「なんだよ、充電ぐらいちゃんとして来いよ」
そう言って画面を覗き込んでいた友達が呆れたように言ってくる。
待って、ちゃんと充電してきたんだ。そう思うが画面がつかないという初めての事態に俺は焦っていた。
その横で友達たちはゲーム機に電源をつけ、俺を呼ぶ。
「ほら、見てみろよ」
そう言って俺よりガタイの良い友達は見やすい様に画面を傾けてくれた。
すると確かに、確かに
「レベルがMAXになってる……!」
「そう言ってるだろ~?」
そう言って友達はにかっと笑う。けど俺は見たものが信じられず、びっくりした姿のまま固まっている。
なんで、なんで?? 出てくるモンスターは一緒だった。でもMAXって表示されている。
何か違うところ、違うところがあるのか?
「もうちょっと見せて!」
許可をもらいカチカチといじる。図鑑は……一つ。でもモンスター達は一緒だ。操作法も変わってるところは見当たらない。
何が違うんだ……。絶対あるはずなんだ。
やり始めた時期? 一日の使用時間?
いやでもそんなので変わるわけがない。
…………。
あ、あった!
俺はサンタさんからゲームをもらってる!!
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初めてのローファンでドキドキしていましたがブクマ、評価も少しづつつけてもらえて嬉しい限りです
では次話もよろしくお願いします






