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7話

”最初の仕事はうまく行ったようですね、この調子ですよ”


クリスマス頃になって、ダンテくんからメッセージが届いた。

あれからあきこ先生は学校をやめた。


前の人生だと、あきこ先生は私が6年になるまではやめなかったんだけど、きれいさっぱりやめたね!

まあいっか!

ゼーレさんが何も言わないから、ちゃんと運命に添ってるってことでしょ。


今は冬休み。

親たちは娘の中身が未来のおばちゃんになっていることに全く気付いてない。

無関心なわけじゃなく、忙しすぎるんだわあの2人。

2人ともフルタイムで働いてるからね。

今、母さんが38歳で、死ぬ前の私と一緒。

体力落ちてくるし疲れは抜けないし。

プチ更年期だがなんだかでやたら体調悪いし。

当時は親が忙しくて少し寂しかった時もあったけど、今はむしろ親たちを応援アンドサポートしてるよ。

家事は華子にお任せ!ってね。


昨夜は一般家庭のお決まりのクリスマスパーティをして、プレゼントに誕プレを兼ねて高学年向けの本をもらった。

そう、幼女華子、9歳になりました。

兄貴は毎日部活。妹は明日から冬休みで私は一人でお留守番だった。


プレゼントの本の中身は、前の人生で何度も読んだからほとんど暗記している。そのため今から読むのはちょっと億劫。宿題も終わってる。だって私は元おばちゃん。いや、はっきり言おう、元アラフォー、小学3年生の宿題なんてちょろすぎて悲しくなる。

字が下手に見えるように努力したくらい。


「暇ー。」

ゼーレさんは暖房機の前で寝ている。九郎さんから仕事の話もない。

あまり暇すぎて、私は来たるべき高校受験に向けて兄貴の部屋から問題集を持ち出してきた。

まだ少し先だけど、私は超難関高校に進学、さらに難関大学へ進み静に会う。

今から準備しときゃ、もうあの血の滲む受験勉強しなくて済むでしょ。


それに、学力で身を鎧う、ではないけど私の哀れな中学時代は、勉強することでいじめから身を守ってたからね、そりゃもう今からやるしかないでしょ。

え?理屈が良くわからない?

つまりこういうことよ。

いじめられないためには、いじめっ子と極力顔を合わせないこと。

教室にいなければいい。

学力高いと、保健室に逃げ込もうが多少遅刻早退しようが、体育見学しようが担任も文句言わない。

なんでも受け持ちのクラスから難関校に進む生徒がいたら自分の評価上がるらしく、やたら協力的だったわ。

しかしいじめにはノータッチ。

くそ笑える。


嫌な世の中だよねー。


おばちゃんぽいため息をついて兄貴の問題集を開く。

サクサクっと解いてみせましょう。

数学得意だったんだー。


あ、あれ?

やべー・・・かなり忘れてるわこれ。ウケる。


って。

いやぁあああ。

なんでえええ。

頭をかきむしる私の肩を、ゼーレさんがニヤニヤしながら、最近やたら毛艶のいい尻尾でぽんぽんとたたいた。


そんな毎日を過ごしながら私は3学期の始業式を迎えた。

始業式の日は半ドン。

半ドンの意味は・・・ぐぐって。

最も、もうドンなんてものはなかったけどね!


帰宅後、ゼーレさんに土地神が訪ねてきた。

はいはい、もう何が起きても驚きません。

訪ねてきたというか、部屋の中に女児がすいっと現れた。

ちっさ!

私よりちっさ!幼稚園児くらいやで、これ。

『久しいな、土地神。怪我はもう良いのかい。』

ゼーレさんが首をもたげる。

「ああ、かすり傷だったでな。ところでタマよ、また大きくなったな。毛艶もよい。おぬし、この間の魂返さずに食べたのであろう。」

『そんなわけないだろ、ということにしといとくれ。』

土地神がゼーレさんの顎をさっと撫でる。

や、やめたほうがいい、と言おうしたら・・・。

なんと!ゼーレさんがゴロゴロ言ってるじゃありませんか!

ふえぇぇ。

私には触らせさえしないのにー!

何者よ、この超幼女。

「聞こえておる。」

「あ、すいません。」

紺の吊りスカートに白いブラウスとピンクのカーディガン、ご丁寧に黄色い帽子までかぶってるよ。

「かまわぬ。お主が例の不幸の女神か。ふむふむ。」

土地神が一通り私を眺めて

「気の毒に」

と、つぶやいた。

う、うん、ありがとう?なのかな?

「ときに、先日は世話になった。タマに華子、礼をいうぞ。」

そういうと園児バッグからポッチーを2箱取り出した。

赤いパッケージ、そんなに変わってないわー。

「おすそわけじゃ。」

『おや、いいのかい。』

「当たり前じゃ、木像は返され祠は建て替えられた。ポッチーも3ダース供えられたぞ。」

土地神がほくほく嬉しそうに報告する。

『よかったね、あたしも久しぶりに楽しかったよ。』

「しかしあいかわらずお主らのやり方はエグいのぅ。」

よっこらしょ、と土地神が腰を下ろした。

元事務職の本能みたいなもので、私は反射的にキッチンでお茶の用意を始めた。

熱い日本茶とお漬物を用意して戻ると、2人はどうも次の仕事の話をしているようだった。


「鬼が生まれるぞ。」

『ほぅ。』

土地神の言葉にゼーレさんの目がキラっと光った。

「哀れな女での、おそらく今日までの命だ。だが未練が異様に強くての。」

土地神は私が出したお茶をずずっとすすった。超幼女だけど仕草がBBAだなおい。

おばちゃんもこれほどじゃないよ。

「生まれ変わって邪悪であればその魂食べてしまって良い。しかしその本性正なれば、しかるべき世界に送ってやってほしい。茨鬼には連絡してある。九郎はタマに任せると申しておる。」

『はいよ。』

ゼーレさんがにやにやしている。

食べたいんだなこれ。

高位の存在とか言ってるけどかなりわかりやすいよ、このお人は。(人じゃないけど)

きっとあきこ先生の魂も返さずに食べたんだろうし、魂が好物なんだろうね。

はっ、だからゼーレ?だからタマ?今度ソウルさんて呼んだら怒るかな。


「うまい茶であるな。そなた、巫女にならんか?」

わーい、超幼女にほめられたー!スカウトされたー!

『ばか、あんたには使命があるんだよ。さっさとお乗り。仕事に行くよ。』

ゼーレさんにペシッと尻尾でおしりをはたかれる。

はいはい、すみませんでした。

じゃ、ごゆっくり・・・

「ワシのことは気にせずとも良い、適当にやる。居心地もいいでな。頼んだぞ。」

土地神は自分の家のように寛いで手をひらひらと降った。

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