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俺は魔王になったりしない  作者: エル
第四章 月下の決闘

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東域国 ②

 

 朝。

 通された居間でその光景を見た時、ボクはなんとも言えない気分を味わった。


「おはようロッテ」


「……なに、飲んでるの」


「ふむ、みそ汁と言うらしい」


 エリザはすでに器用に綺麗な持ち方でお箸を扱っていた。床に座っているのにも慣れた様子で、綺麗な正座維持したまま、御椀を傾ける。


「……美味いぞ?」


 そうじゃない。その汁物に疑問を持ってる訳じゃない。

 君のその馴染みっぷりに頭を抱えているんだよボクは。


「ああ、ロッテさん。おはようございます」


「おはよう、ナユタ」


「エリザさん、こちら御飯のお代わりです。それとこちらは納豆というモノです。よろしければ」


「かたじけない」


「………………」


 この姫御子様は普通にニコニコしていらっしゃるが、この光景に疑問とかないのだろうか。


「えっと、あの、なんかすみません」


 なんとなく謝ってしまうボク。


「いえいえ、私、たくさん食べる方って好きなんです」


 能天気に答えるナユタ。その様子からお世辞とかではなさそうだった。


「それで、ロッテさんはどうされますか?」


「……頂きます」


 結局ボクもそう言って用意されいていた御膳の前に座るのだった。



「こちらをどうぞ」


「なにこれ?」


 朝食の後、ボクたちに護符が一枚ずつ差し出される。


「この護符は身に着けていれば、その間だけ姿を変えてくれます。髪と瞳の色が変わる程度のものですが、それでも十分効果を発揮してくれると思いますよ」


「変装と言う訳か」


 満足そうに食後のお茶をすすりながら、エリザはその護符をしげしげと眺める。一方ボクの方は、構造が気になってちょっと、念入りに観察をした。見た目にはそれほど強力な魔力は感じない。どちらかと言えば魔力を結い合わせてる感じだ。


 この国の魔術はこういう細かい術式が多い。


「けど、どうして急にこんなの用意してくれたの?」


 昨日今日で用意するの、結構大変だったろうに。


「あ、はい、それはですね」


 ナユタは満面の笑みを浮かべて。


「今日は、一緒に町を見に行きましょう」


  

「あの、ボク達お尋ね者なんですけど」


「私が身元を保証すれば大丈夫ですよ」


「いや、けど」


「いいからいいから」


 その一言と笑顔に押されて、結局町まで下りてきてしまうボク達。


「それで、目的は?」


「いえいえ、目的なんてありませんよ。この国に来てなにもしないでいるのも退屈でしょう?」


「…………」


「こんな機会は滅多にありませんし、どうせなら楽しんではいかがですか」


 ボク達は、旅行に来たわけじゃないと突っぱねるのは簡単だけど、お世話に色々とお世話になってる手前、断りにくい。


(まあ、この国のことを知るにはいい機会だし。目立つようなトラブルさえ起こさなきゃ、それで)


 そう思ってた。



 思ってたんだけど。


「おう、なんだ姉ちゃん。女が刀なんか下げちゃってよう」


「化粧道具じゃねーんだぜ、そいつはよう」


「危ねえからこっちに寄越しなよう。そこの質屋に預けといてやるからさあ」


「ほう」


 なんだか息をするようにトラブルに巻き込まれていた。


「ちょ、ちょっと」


 ボクたちはお尋ね者なんだから、あんまり目立った行動はまずい。


「安心しろ」


 そう言って前に出るエリザ。良かった。エリザもそれくらいのことは分かってくれているようで……。前?


「こういった輩は騎士学校時代から残らず叩きのめしてきた」


「だー!全然通じ合って無いじゃん!」


「さあ、かかってこい」


 かかってこいと言いながら、男三人相手に殴りかかりに行く。勢いはいい。躊躇一切なし。

 ここ数日の付き合いでなんとなく分かったことがある。エリザは基本的に脳味噌まで筋肉で出来てるタイプ。つまり。


(ボクの苦手なタイプだ)


「あの!おバカ!」


 バカにつける、薬、無し。

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