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俺は魔王になったりしない  作者: エル
第四章 月下の決闘

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「ねえ!アル!」


「おう、どうした」


「これ!はやいねー!」


「何言ってやがる。空飛べるくせに」


「それとこれとは話が別なの!」


ハイウェイを二人乗りで走る。ヘルメットにゴーグルつけたロッテは今にも立ち上がりそうだった


 ああ、これは嘘だ。


「気持ちいいねえ!アル!」


「うるせえよさっきから!ヘルメットにマイク繋がってるからそんな大声出さなくて聞こえてるっつーの!」



 こっちの世界にロッテがいるはずないのだから、これは嘘だ。俺の心が作った虚構の幻。



「あははは!」


キラキラと輝き砕けていく懐かしき人工の光たち。周りの自動制御の安全志向共を追い抜かし、嘲笑ってやる。そんな運転のどこが楽しいのかって。



 嘘だってわかっていて続けた。俺には、幸福の全てを捨てられるほどの意気地はなかったから。

 やっぱり俺は、情けない奴だった。


「たまにはこう言うのもいいだろ」


「そうだね!なんだかよくは分からないけど気持ちいいや!」


 消えるなと望むのか。


「ねえ、アル」


声がする

消えて無くなりそうな、聞いたこともないような


ただ、忘れているだけのような


「もう、いいんじゃないか」


「え?」


不意に、消失感を覚える。振り返ってはいけない。重力に身を任せなけばいけない。きっと確認ということをすれば、この人は消えてしまうから。


「ここがゴールで、この先はなくて、ここまでで、全部終わりで」


「それは」


ああ、それはあの日見た銀の流線

過ぎていく世界の虚実

そうして、俺の消失


「駄目だ」

 

不意に、デタラメな声がした。

地の底から響くような、怨嗟の呪縛。


「許すものか」


止まることを許さない。


「お前が死ぬか、世界を壊しつくすまで」


決して、お前は許されない。


「アル」

「喋るな」


それは、俺の声だったから、それとも、呪いの声の主だったか。


少なくとも、背中に感じていて何かは、とっくに消失していた。


「さあ、続けろ」


 俺の意識は、浮上を迎える。

 けど、俺は。


もう、本当は、終わりにしたいんだ。


 ああ、畜生。




「エリー」


 身体が、重い。嫌な、夢でも見ていた気がする。


「くそ」


 消耗が激しい。

 日に日に、精神が削られていくような気がしていた。

 もう、何日もよく眠れていない。

 食事も、ロクに喉を通らないし、脳が、あの日からいつだってじくじくとした痛みを発している。このままではいつか、脳が腐敗してしまうんじゃないだろうか。


「それでも」


 それでも、やらなければいけないことがある。

 もう、戻れはしないのだから。


「さて」


 強情なあの男はもう、答えを出せたんだろうか。


「う、く」


 頭痛が酷くなる。

 俺は、意志の強いあの男からその気高さを揺さぶって何がしたいのだろうか。

 いや、そもそも。

 あの高潔な男が俺の示す欲望に屈する所など、本当に見たいのだろうか?


「っぐ!」


 やめよう。

 頭痛は、酷くなる一方だった。

 調整の利かない電脳は、今の俺にはお荷物でしかない。


「はやく、はやく」

 

 目的を、達成しなければ。

 もしくは。


(終わって、くれるのなら)


 それでも、俺は良かった。



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