騎士二人 幕間
「それ、本当」
「はい」
伝えたいことがある。そう言われて招かれたエレンの私室で、ボクはその事実を知った。
「アルフレッドさんの足取りが掴めました」
「アルは、今どこに……!」
ボクは自分が焦っているのを自覚したけど止められなかった。
アルが、見つかった。
あの夜以降、どこかに行ってしまってどこにも姿を見せなかったアルが。
「落ち着いてください、ロッテ。まだ、手掛かりが掴めただけです」
ボクの勢いに呑まれず、むしろ淡々とエレンは答える。
「それらしき姿が見つかったのは北域のほうです。それも、すでにカークさんに追ってもらっています」
「カークに」
なんで一緒に言ってくれなかったんだ、と言いかけて踏みとどまった。
エレンには立場がある。近衛の騎士に頼みごとをするのと、外様の魔術師を招くのじゃ意味合いが全然違ってくるんだ。
これでも、きっと精一杯早くボクに伝えてくれたんだろう。
「なら、ボクも行く」
まだ、研究の成果は出てない。
アルに何かをしてあげられるとは限らない。だけど、追わないでいることは、できそうもなかった。
「……わかりました。これを」
そう言ってエレンが差し出したのは、小さな地図だった。
「ロッテ専用の、一番早く目的地にたどり着けそうな道程を記してあります。これを、使ってください」
「エレン、ありが……」
その地図に手を伸ばしかけて、止まる。
これを用意しているとき、エレンはどんな気持ちでいたんだろうか。本当は、自分が飛んで行って、アルと会って話がしたいだろうに。
「ロッテ?」
「うん。エレン。いつも助けてくれてありがとう」
しっかりと、それを受け取る。赤い点線には、ボクが箒で飛ぶべき場所が書いてある。
本当に、ありがたい。
「急げば、明後日の朝には向こうにつくでしょう。それから、カークさんと合流してください」
「うん、そうする」
つまり、休まず飛べば明日の夜にはたどり着ける。
「……ロッテ」
「分かってるよ。きっと、アルを」
「それだけではありません。あなたも、無理はしないで」
エレンは不安そうな顔を覗かせて、ボクの手を取った。
「あなたまで失ってしまったら、私は」
ボクの手を包むその両手は、なんだか固くなで、強ばってる。
エレンは変わった。あの日から。妹のように思っていた人に裏切られて、それと同時に、アルを自分のせいで失ったと思って。
「よろしく、お願いします」
ボクが何かを言う前に、エレンは自分から手を離す。
その手をもう一度、今度はボクのほうから手を伸ばして、掴もうとして、やめた。それは、もうボクの役目じゃない。
「行ってくるよ」
少し、気合を入れなおすために帽子を深く被りなおす。
「ええ、必ず帰ってきてください」
「ねえ、エレン」
部屋から出る直前に、ボクは立ち止まって尋ねる。
「大丈夫、だよね」
何を、とは言わなかった。ただ、漠然とした不安を、口に出しただけだった。
「はい。大丈夫ですよ、きっと」
「そっか」
その一言で、痛感させられる。
早く、アルをエレンのもとに連れ戻さなければいけないと。
強く、強く、そう思う。




