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俺は魔王になったりしない  作者: エル
第三章 二人の騎士

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騎士二人 幕間


「それ、本当」


「はい」


 伝えたいことがある。そう言われて招かれたエレンの私室で、ボクはその事実を知った。


「アルフレッドさんの足取りが掴めました」


「アルは、今どこに……!」


 ボクは自分が焦っているのを自覚したけど止められなかった。

 アルが、見つかった。

 あの夜以降、どこかに行ってしまってどこにも姿を見せなかったアルが。


「落ち着いてください、ロッテ。まだ、手掛かりが掴めただけです」


 ボクの勢いに呑まれず、むしろ淡々とエレンは答える。


「それらしき姿が見つかったのは北域のほうです。それも、すでにカークさんに追ってもらっています」


「カークに」


 なんで一緒に言ってくれなかったんだ、と言いかけて踏みとどまった。

 エレンには立場がある。近衛の騎士に頼みごとをするのと、外様の魔術師を招くのじゃ意味合いが全然違ってくるんだ。

 これでも、きっと精一杯早くボクに伝えてくれたんだろう。


「なら、ボクも行く」


 まだ、研究の成果は出てない。

 アルに何かをしてあげられるとは限らない。だけど、追わないでいることは、できそうもなかった。


「……わかりました。これを」


 そう言ってエレンが差し出したのは、小さな地図だった。


「ロッテ専用の、一番早く目的地にたどり着けそうな道程を記してあります。これを、使ってください」


「エレン、ありが……」


 その地図に手を伸ばしかけて、止まる。

 これを用意しているとき、エレンはどんな気持ちでいたんだろうか。本当は、自分が飛んで行って、アルと会って話がしたいだろうに。


「ロッテ?」


「うん。エレン。いつも助けてくれてありがとう」


 しっかりと、それを受け取る。赤い点線には、ボクが箒で飛ぶべき場所が書いてある。

 本当に、ありがたい。


「急げば、明後日の朝には向こうにつくでしょう。それから、カークさんと合流してください」


「うん、そうする」


 つまり、休まず飛べば明日の夜にはたどり着ける。


「……ロッテ」


「分かってるよ。きっと、アルを」


「それだけではありません。あなたも、無理はしないで」


 エレンは不安そうな顔を覗かせて、ボクの手を取った。


「あなたまで失ってしまったら、私は」


 ボクの手を包むその両手は、なんだか固くなで、強ばってる。

 エレンは変わった。あの日から。妹のように思っていた人に裏切られて、それと同時に、アルを自分のせいで失ったと思って。


「よろしく、お願いします」


 ボクが何かを言う前に、エレンは自分から手を離す。

 その手をもう一度、今度はボクのほうから手を伸ばして、掴もうとして、やめた。それは、もうボクの役目じゃない。


「行ってくるよ」


 少し、気合を入れなおすために帽子を深く被りなおす。


「ええ、必ず帰ってきてください」

 

 

「ねえ、エレン」


 部屋から出る直前に、ボクは立ち止まって尋ねる。


「大丈夫、だよね」


 何を、とは言わなかった。ただ、漠然とした不安を、口に出しただけだった。


「はい。大丈夫ですよ、きっと」


「そっか」


 その一言で、痛感させられる。

 早く、アルをエレンのもとに連れ戻さなければいけないと。

 強く、強く、そう思う。



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