カレン
「やれやれ」
例の男、アルフレッドが屋敷の敷地外に出たことを部下に確認させてから、私はやっと一息つく。
「必要なこととはいえ、あの女の真似をしなければならないというのは、少々気分が悪いな」
それも、男に媚を売るような真似。
最悪だ。
「さて、と」
私は懐からハンドベルを取り出して一つ鳴らす。これが、隣室で控えている二人への合図だ。
いや、二人じゃないか。正確には、一人と一匹だ。
「お呼びでしょうか」
影のような気配の無さで、一人と一匹が入室する。
有能な、我が忠実なる騎士と、同盟相手の小鬼。
私は、まずに小鬼確認する。
「レイン」
「は、はい」
「あの男で間違いないんだな」
「間違い、ありません」
レインが答える。
「あいつが、あの神託の旅で襲撃の邪魔を働いた奴です」
「そうか」
私は控えていたもう一人の、こちらは騎士の甲冑を身に纏った女性に呼びかける。
「そっちも、間違いないか、リズ」
「はい。あの夜、城に、そしてエレオノーラ様のお部屋に侵入したのもあの男で間違いありません」
「分かった」
この二人に覗き見をさせるために少々手間と時間がかかったが、その成果は間違いなくあった。
いや、上手くことが運べば、あの女に決定的な敗北を刻み付けることが出来るかもしれない。
「ふふ」
「……?」
「なに、最初は酷い邪魔が入ったと思っていたが」
魔王の神託、などというものが下賜されると分かった時には命運尽きたかと思ったが、まだ私は運命の女神に見放されてはいないらしい。
「存外、私の役に立ってくれそうだ」
もう少し、もう少しなんだ。
「リズ、その件、決して誰にも口外するなよ」
「心得ております」
実に心強い。あの女に付いた無能騎士とは雲泥の差だ。
「素敵な誕生日になるさ、姉さま」




