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俺は魔王になったりしない  作者: エル
第七章 エリー x アル

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Last recode 幕間


 ボクは、ギュッと自分の手を握りしめる。


『他には?』


 ……分かってる。

 これは、もうあくまで起こってしまった悲劇の、その始まりでしかないって。


 もう、この過去は変わらない。

 変わったりしない。 

 

『全て話すんだ。お前が持つ、死ぬまで口にしないと決めた秘密を』

『……私は、私は』


 けど、けどさ。 


(こんなの、あんまりだ)


『あの日、アルとの約束の日、あの子を、電子の海の中に、置き去りにしたのは』

『ふむ』

『……私だ。アルを、引き留めるために、私は、あんな』


 目の前で繰り広げられている光景は、残酷何て言葉では、片づけられない。

 淡々と、けれど仄暗い感情を覗かせながら。

 


『余興としては悪くないが、……存外、本人の意図、意識している秘密というものは、他人が聞いてもそれほど面白いものでも、重要でもないことの方が多いな』


 人の魂を使って、こんな。

 

「こんなの、まとも人間のすることじゃない」


『実験』を、行うなんて。


「彼は」


 ボクの怒りとは裏腹に。


「この世界の病理のそのものだ」


 その映像を眺めるエリーの声は、やっぱりどこか無機質だ。


「電脳化処理を施すということは、人とは一線を画する生物になる、ということでもある」


「……アルは、ボクと同じ人間だったよ」


「いきなり知らない言語を完璧に話すような、そんな存在が?」


「それは、確かに、最初は驚いたけど、でも」


「君の言いたいことも、勿論理解できるとも。会話をすれば、歩み寄れば、理解すれば、そんなことはね。けれど、そう見ない者もいる。そちらの方が都合がよいうえに、楽だからね」


 理想は、理想でしかない。

 理解とは難しく、必要でなければ求められない。


「電脳化を施した人間は、通常のコミュニティから排除される傾向にある」


「仲間外れにされるってこと?」


「敵とみなされる。君の世界でも魔女はそうではなかったかな?」


 思い出す。

 ボクもまた、ずっと一人だった。

 逃げて、蹲っていた先に、偶然師匠が居ただけだ。


「人は変わらないよ。世界を超えてもね」


 アルも、そうだったんだろうか。


「異物は排除される。彼も例に漏れずにね。それどころか、酷いいじめさえ受けていたようだ」


 よくある話さ、とも、エリーは言う。


「それもね、自分で選んでそうなったわけではなかった。子供なんて自分の所有物だという思想を持つ親から、本人の意志すら関係なく、便利そうだから、最先端の技術だからと、その技術そのものには十分な理解もなく押し付けられて」


 昏い瞳の正体。


「他人のせいでまともにもなれなかった」


 どこかに繋がった、電子の海にしか逃げ場のない身体と。


「そうして、世界から隔絶された環境は小さな怪物を生み出す」


 積みあがっていく。


「彼は普通の人間だが」


 憎悪。


「彼は世界が憎かった」




『まあ、いい。これの存在を知る人間が生きているのは、私としては好ましくない。そう思うだろ?』

『……そうだね』

『そういう訳だ。消えてくれ』

『……ああ』


『遺書の内容は……。そうだな、一番最後に聞いたのがいい。それなりに、説得力もあるだろう』

『……分かった』

『じゃあ、万事、そのように頼むよ』



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