表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はしがない高校球児  作者: 猫帝
二章、まだまだしがない新入部員
7/12

閑話、俺の選択――飯塚義之(いいづかよしゆき)

サブタイトル修正――10月30日

 飯塚は目立つのが大好きだ。もっと言うならちやほやされるのが大好きだ。

 だからこそ飯塚はこの高校を選んだ。県下の強豪校ではなく自宅から一番近いここを選んだ。



 ――城北を選んだのは家から一番近いから。強豪校に行ってもつまらない、無名校でそういう強豪校を倒すのが面白い。


 そう言えば大概の連中が俺を見る、俺に注目する。



 勿論、実力が伴わなければただのピエロだが、飯塚はそれに関する努力は怠らない。

 実際、リトル、シニアとずっと野球をし努力し続けてきた飯塚は、同じ学年で見ればなかなかの選手であった。全国の強豪校からのスカウト、だとかはなかったが、望めば大概の高校に受かる実力はあった。


 だからこそ飯塚は城北に来た。県下の強豪校でも、この辺りで唯一体育科のある葵坂高校でもなく城北高校にしたのは、ひとえに目立ちたいからである。

 飯塚は自分なら葵坂に行ってもレギュラーを取れるだろうと思っていた。しかしそれは大勢いる部員からなんとか勝ち取ったという程度になるだろうとも思った。


 それでは駄目だ。それでは例え何かを成し遂げたとしても『野球部員』の一人としてしか目立つことは出来ないだろう。そんな一纏めにされても嬉しくない。

 勿論、甲子園優勝とかまで行けば別だがウチの県は全国的に見れば弱小、ここ数年ベスト16になったこともない。

 そして県下では上位数校の強豪校が拮抗していてどこが甲子園に行ってもおかしくない状況が続いている。だから下手をすれば強豪校の部員達に埋もれ更に結果も芳しくないということが起こりえるのだ。


 それでは目立てないし、ましてやちやほやなどされない。


 だからこその無名の弱小校だ。とは言え、試合すら危ぶまれるような部員の少ないところや全く練習を行っていないようなところでは意味がないので、そこは前もってしっかり調べた。

 そうして城北を見てみると県下では弱小、去年も一回戦で甲子園に行った共成学園に負けてしまい、周りの評価も低い。しかし全学年10人以上、総部員数も50人近くいるし、レベルもくじ運ほどは低くない。なによりマネージャーが可愛い。

 ――おそらくあの小ささなら1年だろうし来年もいるな。


 ここなら自分が他の部員に埋もれることもなく、更にそれこそ強豪校の一角でも崩せばそのまま俺の評価に直結するだろう。そうすれば俺は目立てる、ちやほやされる。


 ――こうして飯塚義之(いいづかよしゆき)は城北高校を選択した。



 城北に入学し飯塚は満足していた。女の子の制服は可愛いし、女の子自身も可愛い。同じクラスにも兵藤さんに内海さん、廣田さん、と可愛い子が多い。

 そして野球部に入ってみればマネージャーまで可愛いときている。あかりに関しては3年生が目を光らしてしるため難しそうだがかなえでも全然問題ない、いや、むしろ十分すぎる。

 敢えて挙げるなら予想以上に先輩たちの実力があり一年で即エースで4番、というのは無理があるということであるが、まあ現実はそこまでは甘くない。

 これだけの好条件がそろえば、後は自分が頑張るだけである。


 このひと月半、辛い練習にも耐え、1年の中では頭一つ抜き出た存在として先輩からも同期からも一目置かれるようになってきた。

 クラスの方でもさわやかスポーツ系として徐々に地位を確立しつつある。


 順風満々まさにそんな時であった。先週の土曜だったろうか、前日の金曜に休んだマネージャーの調子がおかしく、体調でも悪いのかと思って聞いてみるとあの発言である。1年を中心に部全体に動揺が走り、正直練習に身が入らなかった。そんな状態ではしっかりしたプレーなど出来るはずもなく、多くの部員が後半ほとんど時間をあかりのペナルティーに当てた。


 そして月曜日に部員たちが今か今かと待ち構えているところにやってきたのが奴だった。クラスでも目立たなくいつも真面目なだけの暗い奴、そんな印象しか持っていなかったから相当に驚いた。しかもかなえの反応を見るに奴があの期待の新人であることは間違いなさそうであった。


 誠は気づいていなかったが、実はあの時部員全員が誠に注目し、その一挙手一投足にまで目を見張っていたのだった。


 かなえと親しげに話すだけでは飽き足らずあかりにまでも近づく誠に部員一同の心は今までにないぐらいに一つに纏まった。


 飯塚としてもここまで築いてきたものを脅かす誠の存在を放って置くつもりはなかった。

 

 最初が肝心。だからこそ初っ端から喧嘩腰に意見した。今の部の空気ならいける、そう感じての行動だったが、予想通りの展開に持っていくことが出来た。


 なら、後は打つだけだ。そうすれば俺は目立てる、ちやほやされる。


感想・ご指摘・質問等ありましたら、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ