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俺はしがない高校球児  作者: 猫帝
二章、まだまだしがない新入部員
6/12

「……どうしてこうなった?」

 誠はマウンドに立ち空を仰ぎ見る。





 翌日火曜日、今日より本格的に野球部の練習に参加するつもりだった誠は、現役時代に使用していた練習着、スパイク、グローブなどを持ってきていた。ユニフォームに関しては近いうちに購入する予定だ。


 こんなに練習が楽しみなのは久し振りかもしれない。

 誠は放課後までずっとそわそわしていた。


 放課後になるとグラウンドの方に行き主将の吉田さん――朝練まで使って10周走りきったらしい――に挨拶をし、部室を使わせてもらい着替えた。

 ただ部室のいたるところに『マネージャーには絶対服従』『命令違反は即退部』『可愛いは正義』といった内容の張り紙があるのに一抹の不安を覚えてしまう。




 全員が揃い、整列するなか、その対面に主将と並ぶ誠。

「1年4組太田誠です。経験者で小学校からやっています。ポジションはピッチャーでした。中途半端な時期での入部となりますが、よろしくお願いします」

「うん、よろしく。君には『期待』しているよ」

 期待、の部分に妙なアクセントを入れる部長。誠は思わず苦い顔をして、かなえを見てしまう。かなえには目が合うがにっこり微笑まれてしまう。


 とりあえず自己紹介も終わって練習開始かと思っていると一人の部員が一歩前に出た。


「先輩、こんな時期に入ってこられても面倒なだけっすよ」

「……では飯塚(いいづか)、入部を認めるな、と言いたいのか?」

「いやいや、そこまでは言ってないっすよ。ただ『期待の新人』ってのがどれぐらい凄いのか最初に見して欲しいな~、ってだけです」

「ん~、確かに皆気になっているようだしな。折角だから最初に見せてらおうか」

 部員達を見渡しながら主将はそう宣言する。


 ……おかしい。なんか、手際が良すぎる。そしてみんななんでそんなやる気満々なんだ。

 

 俺が、俺が、と騒ぎ出す部員達と、周りの空気の変化に付いていけず、混乱する誠。




 かなえは野球部にとってオアシスだった。確かに容姿だけをあげるならあかりの方が美人であるが、下級生があかりに近づこうとすると3年部員全員に排除される。じゃあ3年生がアピールしているのかというと、協定でもあるのか動きはない。

 そもそもがあかりの入部に端を発するらしいが当時のことは3年部員しか知っておらず、彼らが決して口を開かないために、下級生達の間では最早野球部七不思議になっている。

 そんなこともあり、あかりはあくまでも信仰の対象としてのアイドル扱いとなっている。

 

 それに比べかなえに対してはそういった3年生の妨害もなく、且つなにより本人の性格がいい。マネージャーの仕事は真面目だし部員全員に優しい。さらに野球が好きらしくそういった話も楽しそうに聞いてくれる。

 入部2ヶ月と経ってないが、かなえは城北野球部のマスコットとしての地位を確立し、みんなに愛されてきていた。

 そんなかなえの『今度すっごい、すっごい人が来るんです~』発言は部全体を震撼させていた。


 さらに誠は気づいていなかったが、昨日のあかりとの会話もそれに拍車をかけた。自分達が眺めるだけしかできないあかりに対し親しげに話す。部外者だからこそギリギリで許されていただけであり入部にあたり、一言物申したいという部員も多いのだろう。


 故にこの状況はある意味作られたものであり、飯塚が言い出さなくても誰かが似たような事をしていただろう。



 そういった事情を全く知らない誠はあれよあれよという間にマウンドに上げられた。


 対戦相手については若干揉めていたようだが、言い出しっぺの特権で飯塚が打席に立つことになった。


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