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白銀と金剛の竜舞  作者: フィア
序章
5/12

◇4 新入生の災難と英雄

 当初プロットに無かった人物を無理やり押し込んでみた。


 この選択が後の展開に大きく響く事になり物語を崩壊させてしまうとは、この時は誰も思わなかったのです…(壮大なフラグ

 朝。

 9月に入り、朝が来るのが少し遅くなった気がする。

 しかし気温はまだ高い。

 半ズボンとノースリーブでも全然寒くない。

 ぴょん、と光龍から飛び降りる。

 そしてそのまま左掌に収縮。龍を消す。


 俺は最近まで使われていなかったライト地区の宿舎に来た。

 そこで寝てるのはコラー軍のスタビライザー部隊。

 目的はコイツ。


「おお、お前今日も早起きだな」


 ぬあー。

 建物の裏庭にて首を伸ばしたのは、掌サイズの一匹の亀。

 最近はこの池の傍で寝るのがお気に入りのようだ。


「ほら、差し入れだぞー」


 ビニール袋に入れた柿をぼとぼとと落とす。

 亀はのそのそと近づいて貪る。

 と、


「何だ、毎朝よく来るものだな」

「…ハゲか」

「ハゲ云うでない!」


 俺と同様薄い格好をして歯を磨いているのは、ハゲことスタビライザーだった。

 亀の甲羅を撫でながら、会話。


「しっかし、コイツがあんなデカい奴だったとは思えないよなぁ」

「地熱エネルギーを吸収してのあの肥大化だからな。

 吸収をしなければ、なんて事の無い普通の亀だ。

 ……まぁ」


 いい加減俺のナデナデがウザくなったのか。

 亀は俺の顔面に火を吐いてきやがった。


「うをおおおおおお!?」

「文字通り地に足が付いているのなら放火も出来るぞ。

 うむ。いいぞ陸甲りくこう! もっとこの生意気な小僧の性根を叩き直してやるがいい!」


 因みに陸甲っていうのはこの亀の名前。

 ハゲが昔コラーの西端で盗賊に捕らえられていたところを助けたとかなんとか。

 以来自分から離れなくなったとか。


「っつー…」

「ん? どうした、格好がつかないぞ…ほら」


 ハゲが歯ブラシを銜えたまま俺の顔面に手を当てる。


「…何で俺アイアンクローされてんだよ…」

「いいから黙っておれ」


 すると塞がれた視界の向こうから、緑色の光が微かに見えた。

 ぶつぶつ呪文を呟くハゲは、直ぐにその手を離した。


「ほら、此れで火傷は消えただろう。

 暫く皮膚に蕁麻があるかもしれんが、気にするな。直ぐ引く」

「………お前、回復魔術使えたのか」

「寧ろ、我は此方が本分なのだがな。

 戦人の補助、其れが我の仕事だ」


 ふーん。

 ………。


「………なんかなぁ…」

「どうした? いつもの阿呆みたいな元気が無いではないか」

「アホは余計だアホ」


 俺はのんびり池を泳ぐ陸甲を眺めながら、ぼんやりと呟く。


「玄武の子供、なんだよなぁ」

「? それは戦の時にも云うたであろう?」

「それはそうだけど…お前の国の守護魔獣は朱雀だろ?

 何で南の国で見つかったんだ? 玄武は北の守護獣…」

「それは……我にも分からん」


 ハゲは歯を磨く手を離し、その場に立ち尽くす。

 その様からは哀れみに近き、偽善な感情が読み取れた。


「だが、帰してやりたいものだ、故郷に」


 既に彼には無くてはならないだというのに。


 だけど。


 亀はくあーと欠伸をする。

 のんびり、のんびりと。

 大きく開いた口を横目で見て、


「…そうだな」


 偽善だって、悪くないと思った。




 @~@~@~@~@~…




 ジオレン王国。

 そこは竜王、つまり生ける伝説である四大守護魔獣、青龍の治める、ツギョク大陸の東に位置する国。

 人口約3000万人。

 面積400.914km。

 そしてその中心に栄えるのが、俺達の住む地域であり王宮兼唯一の高等学校を所在している通称『センター』。

 俺の、故郷。

 名物は街の中央に聳える巨大な学校。

 王宮でもあるそこには、国のほぼ全ての高校生が青臭い春を送っている。

 俺も一応、その一人。


「んじゃあ自己紹介を始めんだべ」

「はいっ! ベルダ・ギルですっ! 宜しくおねがいしゃーす!」

「分かる言語で喋って欲しいだ」

「先生に言われたくねぇよ!」


 窓側に座るファームの一言に、クラスの雰囲気が増して明るくなる。

 しかし相対して一番前の廊下側で突っ伏してるのがこの俺、アルファゼル・ティラミス。

 …ってか、転入生くらいでお前らぎゃあぎゃあ騒ぐなよ…。

 こっちは昨日徹夜でメイプル・スト○リーやってたんだから、静かに寝かせてくれっつーの…。


「それじゃ、ベルダ君にゃあ、ファーム君のぉ後ろの席に座ってけろ。

 …あぁ、ファームってのはさっき騒がしかった奴だから」

「おい担任待てこら」

「宜しくお願いしますね! 騒がしいファームさん!」

「お前はお前でいい性格してんなぁオイ!」


 珍しくファームが押されてるが…、まぁ、どーでもいい。

 俺は今日と言う一日を寝て過ご…。


「オ゛イイイイイイイイイイイイ!

 生意気な新入生っていうのは、何処のどいつダァアアアアアアアアア!?」


 バーン、と。

 2年4組の扉が開く。

 どうやらどっかのクラスの馬鹿が騒動を起こしに来たらしい。


「お、俺ですけど…」

「お前゛ええええええええええええええええええ!

 今朝方お前がウチのドザ・エモンにぶつかったって聞いたぞぉぉぉおおおお!?

 どういう事だよおおおおお! 何で俺の舎弟が痛い思いしてんだよぉおおおおお!?」

「は、はぁ?

 あれはそっちがベタに肩ぶつけにきただけじゃないですか。

 責任転嫁もいいとこ…」

「うっせえなぁ!

 お前の事はどうだっていいんだよ!

 ウチの舎弟が悲しみに泣いてるんだよ!

 おとなしくオトートノカタキヲトラセルノデス!」

「用途とノリを間違ってませんか!?」


 ガシッ。


 大男の右手が金髪の少年――コイツが転入生か――の眼前で動きを止める。

 何事かとクラスの連中がざわざわする中。

 俺は毛深い男の腕を強く握る。


「なぁ……」


 俺は重たい頭をゆっくり持ち上げる。

 目の前には驚愕に俺を眼球に写すバカがいる。


 …こんな奴、ウチの学校にいたっけ?

 その格好は明らかに『不良』と呼ばれる格好をしていた。

 真っ赤なアロハシャツ。ヘンテコなネックレス。サンダル。

 どうみてもDQNなその衣装が。

 自分の血で汚れるという予想なんて考えてもみないだろう。

 俺は拳への力を強める。


「俺がどんだけ眠いか分かるか…?」

「ア゛アアアアアアアアアアアアアアア!?

 んな事この俺ドラ・エモン様が知る訳…」

「それをテメェみてえな三下にっ!」


 光を、拳に固める。

 俺にとっては、自分の腕に光の膜を張り巡らせて。


「ぶっ壊された俺の痛みを、味わえええええええええええええ!」


 光の圧力で相手を殴るなど、造作も無い事。

 吹っ飛ぶ。

 馬鹿な男の断末魔と悲鳴が、ガラガラと音を立てて崩れていく教室の引き戸に埋もれていく。

 俺は相手の右肩を殴った拳をコキコキと鳴らす。

 と、


「ちょぉい!

 アルぅっ、おめぇ何やってるだ!

 相手の子はぁあ!?」

「大丈夫だぜ先生。

 ちゃんと脱臼する程度のレベルに抑えた」

「どっちにしろ瓦礫に埋もれて死ぬ言うとるんじゃハゲェ!」

「アンタはアンタでキャラが統一しねえなぁ!」


 俺と先生がガラガラと瓦礫をどかしていく中。

 背後で新入生がファームを話しているのが見えた。


「ファ、ファームさん」

「どうした新入り?」

「あれって…」

「何が言いたいかは大体分かるよ」


 ファームがニカッと笑う。

 それは、悪友としても、英雄としてもの視線。

 敬意の、証。


「アレが、私達ジオレン王国の英雄。

 齢17。

 通り名は『白銀の竜』」


 俺はチラッと背中を見る。

 やたら楽しそうに話すファームの姿が、そこにはあった。

 …何でアイツ、あんなに楽しそうなんだろうか。




「名前をアルファゼル・ティラミス。

 最強の、竜召喚師だ」







 俺は瓦礫を片付け終える。

 そして先生は、HR中に暴力行為という学士には重い罪をしたバカを生徒指導室(=校長室=竜王の間)に連行した。ざまぁ。

 そして正午、昼休み。

 俺は再び席について居眠りを…。


「す、すみません!」


 あ?

 見れば、先程紹介されていたらしい転入生が俺を見たいた。


 緑色の瞳。

 短い金髪をきれいに整え、割と出ている童顔っぽさをカバーしている。

 背は低く、160ちょいって所か。


 どうやら恒例行事であるクラスの質問攻めから逃れてきたようだ。

 そのせいか、やたらハァハァ息をついている。

 頬は紅潮し、肩を上下させている。

 …おいおい、どっかのガチホモが喜びそうなシチュじゃねぇか。

 ………。

 嫌な予感がしたので、さっさと話をつけよう。


「何?」

「あの…。

 貴方をアルファゼル・ティラミス様と存知上げた上で、お願いがあります!」


 クラス全員が注目する中。

 彼はいきなりくの字になった。

 ……え?


「アルファゼル様!

 いや、兄貴!」

「兄貴ッ!?」


 思いもしなかった呼称にうろたえる。

 ベルダと名乗っていた少年は、目に星を描き敬意を示してくる。



「俺を、兄貴の舎弟にして下さいッ!」



 …。

 ……。

 ………?


『は?』


 教室全体がクエスチョンマークに完全包装される。

 舎弟? 射程? 車停?的な感じの。

 そして沈黙。


 ………。

 うん、えーと…。


「ヤだ」


 とりあえず断ってみた。

 ………。

 少年が顔面蒼白になってる。

 …いや、何この状況…?

 兄貴って言うと皆さんはガチムチと阿○さん、どちらが思い浮かびます?

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