◇2 金剛の竜 -Gold Dragon-
えー。魔法とか~上手く表現できないし~。
………。
すみません。次回までに語彙と表現力上げてきます…(汗
「果てろ」
竜を大きく旋回させながら、掌から高密度の光球を飛ばす。
真っ直ぐ進む光球は正確にハゲのドタマを狙う。
ついで竜と意思疎通。
コイツは俺だから、自由に動かす事が出来る。
光竜はその身を丸める。
俺は振り落とされまいと背中に必死にしがみつく。
竜は大きく光り、
翼を広げる。
KISHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!
咆哮。そして大翼から、
銀の羽根を飛ばす。
大地は白銀に染まり、羽根は刺さった直後に塵と化す。
広範囲攻撃魔法。
下には倒れてる敵兵もいるが、知ったことか。
目の前のハゲを殺す事が出来ればいいのだから。
「……ちっ」
しかし。
亀とハゲは無傷だった。
「……危ない攻撃をするものだな…仲間に当たったらどうするのだ…」
「そんなヘマはしねぇ」
「……いい覚悟だな」
その目は、不思議と笑っていた。
俺は睨みながら、不審に思う。
「アンタ、戦争に反対していなかったか?」
「…あぁ。最期まで陛下に反論した。が…」
「それ以上は言わなくてもいいぞ。だいたい想像はつくし、何より…」
アンタはここで死ぬんだから。
俺は呟く。
そして、光を放つ――
――キィィン…
「甘い!」
弾かれる。
どうやら炎の防御膜でも周りに張っているらしい。
しかし、それほどの魔力を、魔獣からも、あのハゲからも感じない。
確かに量は多い方だが、自身のレベルを遥かに超越した密度の魔力ではない。
俺の0.1割にも満たないはず。
距離は離さず、光球を飛ばし続け、考える。
「…………炎…」
そう。
あの亀は亀であるはずなのに火を噴く。
体内に溶鉱炉でもぶち込んであるなら別だが、本来亀という生き物は火を噴かない。
召喚獣ならまだしも、あの亀は魔獣だ。
どこかに仕掛けがあるはず。
なら、その仕掛けは何か?
少なくとも、魔力補給はされている様子は無い。
魔力じゃない、力。
「…なるほど」
俺は距離を取り、太陽に背を向けるように竜を羽ばたかせる。
そして、急降下。
「逆光を利用するなど、古い戦い方だな若者よ!」
亀は空に火を噴く。
これでは竜は近づけられない。
竜は。
「古い考えをアレンジした物こそが、新しい世界への希望なんだよ」
「!? どこだ!?」
慌てるハゲ。
まぁ、そりゃあそうだろう。
いきなり下から声がすれば、ビビリもするさ。
「な、貴様…!」
「まぁ、アンタに活用する機会は、もうないがな」
俺は右手を今一度振り上げる。
さぁ、俺の分身よ。
汝の元の姿へ。
「リバース…」
瞬間、竜は消え、視界が急に明るくなる。
今日の日差しは炎天下並みだそうだよハゲ。
災難だったな。
さぁ。
右手を下へ。
放つ。
「リリース!」
再び現れた光竜は、
亀の短い足を掴み、空へ。
「しまっ…!」
「今思えば、あの時から始まっていたんだ」
思い出す。
倒れる皿。投げ飛ばされる俺。みんなの態度。そして…
冷たかった地面。
「あの時触れた地面が異様に冷たかったのは、すでに地面の熱エネルギーを吸収されていたからだ。
お前じゃない、その亀が。
吸収し、変換、放出、展開。
自在に操る。
それがアンタの亀の能力。
だけど弱点は…」
亀を逆さ吊りにし、急上昇。
雲より高い所。
ここなら、吸収できないはずだ。
俺はその足をしっかり眼球で捉える。
「足でしか、吸収できず、大地の魔力しか、変換できない」
「くっ…」
「玄武の、子供か…」
ハゲは、甲羅と肉の間にバランスよく立っていた。
「…そうだ。世界に散らばった四大魔獣の一体。
それの、子供だ」
「そうか。コイツは俺達がしっかり育ててやる。
だから…」
「…フッ。ああ、私の負けだ」
ハゲは自分の運命を悟り、目を瞑る。
そして俺は冷酷に見下す。
「去ね…」
「この!」
背後から、気配。
目の前の人物を殺す事で頭がいっぱいになっていた俺は、気付けなかった。
広がる、膨大な魔力に。
「んな…!?」
「おバカっちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ヒュッ――
――ズドドドドドドドドドドドドドドドオオオオオオオオオン!
………。
大の字になって、倒れたのは、俺。
正直、竜をクッションにしてなかったら死ぬトコでした。
上から亀がゆっくり降りてくる。
輝く金剛の竜と共に。
「ダメでしょ! 簡単に殺そうとしちゃ!」
竜の背中に乗る姫が、大変お怒りだ。
ぷくーっと頬を膨らませているのがなんとも腹立たしい。
「い、言ってる事とやってる事が正反対だろうが! お前はあの高さで人間が落ちたらどうなると思ってんだ!?」
「な…! 卑猥だよ! 何どさくさに紛れてイッてるとかヤッてるとか…///」
「変な誤変換すんな!」
ぎゃーぎゃーと口論。埒が明かない。
姫はゴホンと咳払いし、話を元に戻す。
「とにかく、怒りに任せて攻撃的になっちゃ、ダメ! そろそろ学習しないと、竜王さまにチクっちゃうよ!?」
「そ、それだけはマジ勘弁!」
俺は深く頭を下げる。
まったく、と姫は息を吐いた。
「もー、地上の兵を守るのにどれだけ汗を流した事か…」
その呟きに、俺は周りを見る。
彼らの倒れる少し上空には、金色の膜が張り巡らされていた。
もしあれが無かったら、兵たちは俺の竜の羽根で串刺しになっていたのだろう。
…しかし……。
姫がその膜を砕くのを見ながら、俺は失望する。
「まだ、貫けないのか…」
「反省の色が、見えないんだけど?」
「ゴメンナサイ!」
俺は土下座までする。
ちくしょー。いつか絶対一泡吹かせてやる…!
と、姫は振り返り、事態をただ黙って傍観していた男に、話しかける。
「スタビライザーさん」
「…何だ?」
「何で、今回条約を無視して、このような暴挙に出たんですか?」
彼は少し困った顔をした。
「…すまないが、我には分からぬ。
所詮、大佐程度の身では、上の考える事などこれっぽちも分からんのだ。
それでも何か聞きたいなら、我一人が捕虜となる。
だから、この部下達は、見逃してやってくれないだろうか…」
おいおい。
「ハゲ、もっと考えてから言えよ。
そんな頼みが世の中に通用するわけ…」
「黙ってて」
口をふさがれる。
………このアマ、帰ったらタダじゃおかんぞ…。
「スタビライザーさん。その条件は認めることが出来ません。
ここにいる兵は、私達ジオレン王国に連れて行きます」
あ、何だ。ちゃんと頭使ってるな。
っていうか、え、何。ただ喋りたかっ…。
「保護という形で」
………。
?
『は?』
「スタビライザーさん、条約破棄のとき、其方の陛下に仰っていましたよね。
『兵の無駄な血など見たくありません。
兵こそ宝であり、命こそ国なのです』」
彼は俯く。
俺も、俯く事しか出来ない。
「でも、貴方は戦うしかなかった。
風の噂で、家族を人質に取られたと存じております」
「………」
「おかげで髪は抜け落ち、あられもない頭になってしまったとか」
「感動がぶち壊し!?」
これは俺のツッコミ。
「だからこそ」
彼女は、言った。
一国の王女として、立派に、胸を張って。
金剛の光を背景に、彼女は輝いている。
少なくとも、俺の目にはそう映ってしまった。
「一緒に、戦いましょう?」
手を、伸ばす。
……しゃーねーなー。
「…おら」
俺も、手を差し出す。
彼は目を丸くし、そして、
笑った。
「ハハハ、ハッハッハッハ!
全く青臭い考えだ! ハッハッハ!」
「殺していい?」
「ダメ。…と建前上言っておくね」
だが。
彼は笑いすぎて出てしまった涙を拭いながら、
「実に、素晴らしい、提案だよ」
手を、掴んだ。
「………」
「…あはっ」
「どうしても、この手で守りたかった物があった。
だが、自分の力ではどうしようもなくて、非力さを嘆いた。
そんな我でも…
救えるだろうか? 女房を、息子を…」
「救えるぜ」
俺は断言してやる。
そうだ。
この世で。
「叶わない願いなんて、ねえんだからな」
俺も笑って、彼を受け入れた。
これが、世界を揺るがす大戦争の発端となる、小さなキッカケだった。
こないだ借りてきたフランダースの犬を見て泣いた、フィアです。
感想等ございましたら感想欄、Skype、ブログ、ついったー等でご連絡してくださいな。