◇1 白銀の竜 -Silver Dragon-
なんという厨二病ww
がつがつがつがつ。
「何でもぐもぐこんな状況なのにもぐもぐケーキなんてもぐ、ごくんっ、焼いてられるんだよ! ウマッ!」
「いいから口から溢すのはやめてね」
火薬と弾丸が迫る中、4脚テントの中では食い物をあさるバカ共。
俺は姫に文句を言いつつもホットケーキで口を膨らませる。
横からファームに肩を突付かれた。
「ん? どした?」
振り向き、見る。
少し勝気な彼女の顔、
ではなく。
テントを突き抜けるほどの皿の山を。
そして彼女は言った。
「お前…よくこんな状況で食えるな…」
「いや、お前にだけは言われたくねーよ!!」
シャウト。
いや、俺もガツガツ食ってるけど、それも男児の平均食料をちょっと越えるくらいだぞ!?
このテントの高さは4メートルちょい!
でかすぎると言われてもしょうがないレベルなのに、それを越える絶妙なバランスで聳え立つ白銀のバベルの塔!
それなのにコイツは…!
「何でテント破いちゃってんだよ!? むしろどうやったんだよ!? お前の胃袋は無限大!?」
「おい、あんま叫ばない方がいいぞ?」
「は?」
「倒れる…」
グラッ…。
少しずつ左右に揺れていた皿の山はバランスを失い…、
「おい、クリルア! そこ危ないぞ!」
「ほえ? ってにょおおお!?」
くっそ。
間に合うか…?
俺は手を伸ばす。
そして彼女の手を…、
掴む。
「おし…」
「にゃあああああああああああ!」
「ぎゃあああああああああああ!」
ブンッ。ガラガシャぱりんぱりんがしゃがしゃどしーん…。
………。
と、とりあえず、ありのままに今起こったことを話すぜ。
俺は迫りきた脅威からクリルアを助けようと手を掴んで引っ張ろうとしたが、逆に背負い投げされ全身(顔面含む)に皿の猛攻を浴び、そのまま地に横たわった。
な、何を言ってるのか分からないと思うが、俺も何をされたのか分からなかった。
なんて定番のネタでお茶を濁すつもりはない。
明らかに俺の判断ミスだ。
ジェシカ先輩の声が聞こえる。
「もー、だめじゃないクリル…男に触られたからってブン投げちゃ」
「ご、ごめんなさいです…。次からはビンタにします…」
「ならいいわ」
「ヲイ」
…くっそ、助けなきゃ良かったなんて、今更だし、言えないし、言わないけど、この待遇はあんまりだ。
いつもより冷たく感じる地面に目から出た汗を垂らしていると、誰かが近づいてきた。
「全く…そんなにクリルアに触りたかったのかい? どれだけ性欲を持て余しているんだよ」
「…黙れ」
「なんなら、僕が今日の夜、甘い時間を用意してやっても…」
「黙れっつーの!」
鳩尾に蹴り。
吹っ飛ばす……、が、グレンの奴は寧ろ顔を綻ばせ、
「おいおいおい、やるならケツを…」
「俺の視界から消えろガチホモ!」
どうどうと言ってやる。
この、ガチホモが!
「あぁん! もっと言ってぇぇぇぇぇぇぇ!」
「キモい!」
「ほらほら。夫婦喧嘩はよしなよ」
「夫婦!? この国は同姓で結婚認められてないだろーが!」
「そんなの、私がなんとかしてあげるよ!」
「変なところに情熱燃やすなバカ姫…」
…パリン……。
『!』
………。
ロールル姫が、真剣な表情を見せる。
「ねージェシカー」
「…私の結界に問題は無いわ。術式も魔力供給も、全部クリアしてる」
「なら、何で結界にヒビが入って……」
クリルアの言うとおり。
このテントを覆い隠すように張り巡らされていた薄桃色の結界には、小さいとは言えない大きさの亀裂が入っていた。
だが、現状そんな事は、
「ありえない」
「そうだね。あっちの召喚師は全員無効化させたし、残りの兵力と言えば、見た感じ重火器しか無かった気がするんだけど…」
「となると…あっちの大将でも出て来たんじゃないのか?」
というのはファームの言葉。
……。
っぽいな。
「とりあえず、姫ー」
「分かってるよ。私とアルが前線に立つから、残りは防御とテキトーにザコ蹴散らしといて」
『了解』
俺はジェシカの張った結界を蹴り破り、本当の意味で外に出る。
そして見る。
兵、兵、兵、兵、兵…。
コレがさっきまでの戦況。
今は。
「………姫ー」
「んー?」
「あの亀、召喚獣の一種と見て、間違いねーか?」
「あると思う。魔獣じゃない? 黒いし」
「その判断理由はどうかと思うけど…、そうっぽいな。魔力の形質が違う」
そう、亀。
黒い甲羅に黒い身体。
目は紅い。そしてこっちメッチャ見てる。こっちみんなww
…なんかに当てはめるとするなら…。
「……ガ○ラ?」
「私も思った。3のフォルムに近いかも」
どーでもいい感想をぼやきつつ、亀の頭の上を見る。
なんか、重っ苦しい装備のおっさんが乗ってた。
「ジオレン王国の雑兵共ー! よくも我が軍隊を…許しはせん!」
えー。
条約撤廃を投げつけてきたのはそっちなのに、逆ギレ?
っていうか。
『誰?』
「だ、誰とは…我こそはコラー連邦軍が大佐、ビルト・スタビライザーだ!」
「あー。バカで有名な」
「薄らハゲがカワイソスで有名な。なるほど、確かアイツは結界破棄なんて中途半端な魔法使えたな。計算外だったぜ。そんな使えない能力めったに持ってる奴いないからなー」
「か、髪型を馬鹿にするでなーい! そういう貴様こそ、ヘンテコな髪型ではないか! この…」
「あ、おじさーん。それ以上は止めといた方が…」
「パイナッポー頭め!!」
ぴく。
………。
俺は額の血管が浮き出るあの忌々しい感覚を覚えた。
「それに何だ! その黒髪は! イマドキそんな色の髪馬鹿にされるぞ! ほら見ろ! 我が立派な茶髪を! 貴様の軟弱な髪とは質から違うのだ!」
「おじさーん。ホント止めといた方が…」
――――ブワッ…!
瞬間、白銀の風が、俺の廻りを包む。
風は乱気流となり、渦は円を描き、円は球へと姿を変える。
――魔力、放出。
脳で信号を送り、足元に魔方陣を創る。
「な、詠唱破棄!? こんなクソガキが…その上、この魔力…!?」
「てんめええええええええええええええ!」
俺は右腕を振り上げる。
掌の中にも小さな球を創り、収束させていく。
「人が気にしている事をペラペラペラペラとぉおおおおおおおおおおおおお!」
叫ぶ。
キレるの久々だなー、なんて呟く姫の言葉は耳に入らない。
今の俺は目標を、駆逐するだけの生物。
「お前は! 俺がッ…!」
「っ! 炎上直進波!」
危機を感じたのか、ガメ○の口から青い炎が此方へ飛ぶ。
…しゃらくせぇ!
「ぶっ飛ばす!」
右手を前に、
突き出す。
青と白銀のコントラスト。
ぶつかり合ううちに、
青は白銀へと飲み込まれる。
「!?」
屑の驚く顔なんて、怒りにしかならない。
俺は炎を打ち消したそれに飛び乗る。
「お、思い出した…! パイナップルヘアーに白銀の…
光竜! き、貴様…!」
「覚えてくださって光栄ですねぇ!
そうだ!
俺がジオレン王国第一魔法高等学校2年4組出席番号1番!
『白銀の竜』、アルファゼル・ティラミスだ!」
「こ、こんなクソガキだったとは…」
「それ以上口を開いてみろ」
俺は召喚した竜の背中に仁王立ち、両手に光球を再び創りだす。
狙いは、あの小ばかにしたような頭。
眉間。
風穴を開けてやる。
「顔の原型を留めなくさせてやるぞ?」
G、RUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!
俺の心に同調し、竜は咆哮で世界を震わした。
なんか俺の書く主人公ってキレキャラ多くね?
だがいいじゃないかキレキャラ。周りに振り回されるだけじゃなく、しっかり反撃できるっていう…。
個人的にへタレは書いてて疲れます。
あのー、あれだ。
作家は自分と正反対の主人公を書きたがるっていうアレだ。
………。
なんか自分で言ってて恥ずかしくなりました…orz