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白銀と金剛の竜舞  作者: フィア
序章
12/12

◇11 舞光竜と空駆ける氷鷹:中編

 小説書いてると魔法の名称を考えるのが一番めんどくさい。

 ステップを利かせて右へ横っ飛びを続ける。

 右手のマシンガンは常に氷柱を飛ばすディプレスに向けて、左手のは動きを先読みして牽制する為に放ち続ける。

 そうやって約3分、俺達はぐるぐると円を描いていた。

 じっくりと観察していると大体相手の戦闘スタイルが読めてきた。

 圧倒的な速さ、それがウリのようだ。

 氷属性の魔法で武器を精製し、速攻で急所を狙うタイプ。

 身近な人で言えば、そのスタイルはファームに近い。

 だが明らかに違うところがこっちにはあった。

 此方は速過ぎる…。


「クッソ、今の俺と相性最悪だな」


 というか『隙を突く』という点では今の俺達の戦闘スタイルは全く同じなのだ。

 ならば、ここは相手の裏を読み合う心理戦になる。

 どちらが仕掛けるか、いつ勝負に出るか。

 これがポイントだ。


「おォいおい、これ、楽しいかよ?」

「…確かに、つまんねぇな」


 ディプレスが氷槍を投げる。

 寸での所で回避し、再び弾丸を放つ。

 左右への乱れ撃ち。これで第二波は防げた。

 右手のマシンガンの弾が切れたのでリロードする。


「…ジリ貧だなこれじゃ」


 もう持ってきた弾の数も半分を切った。

 やはり此方から勝負にでなければならない。

 …それが分かっているからこそ、楽しくなくても敵は攻撃してこないのだろう。


 …うし、気合入れんぞ。


 俺は動く脚を止める。

 そして銃を持つ稜手に白の光を煌かせる。

 残り少ない魔力の開放。

 収束。

 展開。

 それを弾丸に込める。


「お、やっと何かすんのかァ」

「こればっかりは、俺もやった事ないんだよな」


 引き金を引く。

 銃口から弾き出されたのは…


 光を伴う光速の弾丸。


「!?」

「いくらお前が速くても」


 無数の光は甲冑の少年を狙う。

 そして一度放たれただんがんは夜の世界を舞う。



「避けれない攻撃だったらどうだよッ!」



 全弾。

 命中。


 光に包まれるディプレス。

 しかしその光に映る影は、


 人の形をしていなかった。


「ッ! ひょ、氷塊…!?

 本体は……ッ!」


 危機感を感じて。

 横へダイブ。

 そしてすぐ頭上で輝くのは、氷のハンマー。

 それが横へ振り払われる。

 危機一髪だ。


「チッ、上手く避けられたモンだぜ…」

「危ねぇッ!

 っていうか、正々堂々とか言ってたクセに不意打ちかよ!」

「馬鹿言うな、不意打ちだって立派な戦闘法だろうが…よッ!」

「うをっ!」


 ハンマーが振り下ろされる。

 再び緊急回避をする。

 氷槌によって地面が抉れる。

 …クソ、いい威力だなぁオイ!


「つか、あの魔光弾をよく避けれたなお前」

「…? 避けてなんていないぜ?」

「何…?」

「最初にテメェが放った巨大な光竜も、さっきの銃弾も、


 俺は全部受け流したんだ」


 ………。

 もしそれが本当だったとして、


「何で、無傷なんだよ…!?」

「…俺が強ェからだろ。

 それより…もう、飽きた。


 死ね」


 槌が振り下ろされる。

 やべ、もう避けれない。

 魔力もない。

 どうする! フラッシュで目くらまし…いやもう意味無い!

 どうすりゃいい!?


 グォッ!


 砕かれた。

 壊れた。

 それは俺の体ではなく。

 俺の腹に落とされる筈だった氷の槌の方だった。

 同時にディプレスも吹っ飛ぶ。

 吹っ飛ばしたのは…、



「ベル…ダ…?」


「申し訳ないです、兄貴」


 黒いオーラを右手に宿らせて笑うベルダ。

 その表情は酷く引き攣っていた。

 …コイツ、まさか。


「お前の魔力は…」

「兄貴、俺はこれ以上、闘えません」


 ベルダは笑う。

 そして彼の体から血が吹き出る。

 何かと思えば、




 彼の体を、氷槍が貫いていた。




 彼の遠く後ろではディプレスが痛みに悶えていた。

 殴られた瞬間に魔法を発動させたのだろう。

 だが、避けれなかった事は確かなようだ。

 見れば紅い翅にヒビが入っている。


「クソ、何…しやがる…。

 骨何本折ったんだァ、こりャ…」


 ダメージを与える事は出来たらしい。

 自身の戦闘不能の代わりに。


「ベルダッ! お前何で…」

「兄貴、絶対勝って下さい」


 ゴフッ、と口から血を吐くベルダ。

 そして右手の黒い魔力を俺の右手に置く。

 黒い球体。

 その中で何かが行われた次の瞬間。



 色が白となり、

 俺の体に吸い寄せられて、消えた。

 否、吸収された。



「な…! 冗談だろ…!?」


 “魔力レイズ・送符ジェレイト”だと…?

 ジオレン中の人間が、いや恐らく世界中の誰もが使えないであろう、しかし誰もが夢見た幻の魔法。

 自身の魔力を人に渡す魔法。

 俺達には出来なかった魔法。

 何故かは分からない。

 質量保存の法則の観点からも、できて当然だというのに。

 出来なかった。

 それはもはやルールであり、掟、規則である。

 しかしコイツはそれをやってのけた。


「お前は一体…」

「俺、絶対死にません。

 だからこそ、兄貴も死なないで下さい。

 後で、たくさん教えて貰い、ます…から……」

「オイ!」


 崩れる。

 危うく地面に顔面衝突するベルダの体を急いで抱く。

 ベルダは目を閉じていた。

 意識を失っているようだった。

 幸い、氷が突き刺さっているのは心臓ではなかった。

 ちょうど胸のど真ん中。

 しかし急所である事には変わりない。

 急いで手当てをしなければならない。


 俺は立ち上がる。

 ディプレスも地から膝を離すところだった。

 ……ここは、コイツを倒してから病院へ行かなきゃならない。

 プライドとか、礼儀とかじゃなくて。

 コイツが望んだ事だから。


「…おい」

「…悪いな、怪我させちまった」

「こっちのセリフだ。

 勝負の邪魔させちまった…!」


 ワナワナと震える拳を抑える。

 コイツも悪意があってやったわけではないだろう。

 反射的な物、だったのだろう。

 それでも、俺は。

 コイツの為に。


 勝ちたいと、思った。


「ケリつけんぞ」

「あァ、そうだな。

 お互い満身創痍だ。ハンデもクソもない。

 ここからは、お互いの実力勝負だ」

「勿論勝つのは」




 「「俺だ」」

 ベルダは俺が一番愛でていると言ってもいいくらいのキャラです。

 ええ、何度でも言いましょう。

 ベルダは俺が一番愛でていると言って(ry。

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