SNSは永遠に
ぜひ、感想よろしくお願い致します!ちなみにAIは一切使っていません。
一 はじめに
僕は、数年ぶりに精神病院に入院した。昼間は平気だが夜になると身の置き場がないなど体調が優れなくなり、夜間は数回救急車を呼んで色々な救急病院で点滴や注射などの治療を受けたり、昼間は二、三か所近所の病院を直接回ったりしても治らなかったため、通っている精神病院の主治医である先生に昼間、電話で相談したところ、即入院を勧められたからだ。僕は早速入院に必要な諸々、例えば下着や、50万円程のお金などの準備をし、電話の翌日の午前中の指定された時間に病院に行った。もう三回目の入院なので、慣れたものだ。
入院すると主治医は薬をすぐに全面的に変えてくれた。すると不思議なことに、あっという間に不調は消えた。飲み始めてすぐのことだ。
しかし様子を見る必要があり、3ヶ月は入院が必要という事になった。
僕は50歳になっていた。
そして、その年で、恋愛をするなんて、思ってもいなかった。それも精神病院で入院中に。
彼女は当時まだ20歳代前半。平均以上にかわいい顔をしていて、会話をしてみると、頭の回転も速く、僕の好みだった。また、彼女の好みは僕の様な年上の男性だった。
この話は、入院中の3か月間と、二人が別れたその後のSNSでの、数か月間のやりとりの思い出をまとめたものである。
二 出会い
まず、入院開始からすぐのこと。廊下で散歩代わりのウォーキングを繰り返していたところ、ベンチに数人の女性たちと座っておしゃべりをしていた彼女に突然声をかけられた。
「こんにちは!」
「あ、こんにちは」僕は少しぶっきらぼうにそう答えた。正直、若い女性に声をかけられて、僕は少し驚いた。僕は普通よりだいぶ若く見えるかもしれないがもう50才だ。なぜ彼女は僕なんかに声をかけてきたのだろうと思った。挨拶以上は何も言ってこなかったので、僕はウォーキングを再開した。
その後、廊下を歩くと必ず声をかけてきたので、僕は彼女が気になるようになっていった。
三 閉鎖病棟の広間にて
僕の入院した病院にはいくつかの病棟があり、その中の一つ一つに入院患者が集まり食事をしたり、テレビを見たり、電話をしたりする、ナースステーションの前の広間がある。かなり広いスペースだ。そのスペースの脇にある公衆電話の下の棚には、本やボードゲームが沢山並んでいた。
「ねぇ、美咲ちゃん、オセロやんない?」僕は、消灯3時間前に彼女とおしゃべりをしていた際、そう聞いてみた。その頃にはかなり、僕たちは親密な関係になっていた。僕は統合失調症だが、互いに何の病気かは聞けずにいた。入院日から3週間経っていた。
「いいわね、やりましょう」彼女は言った。
最初の数回は僕が勝った。しかし、回数を重ねるうちに、彼女はコツを掴んでいった。
「先に角をとればいいのね?」やがて僕は負ける様になっていった。彼女は筋がいい、そう僕は思った。しかし、ますます、僕は彼女が気に入った。
四 約束
僕たちは、僕の居る個室で会うようになった。入院日から4週間経っていた。
「ねぇ、私たち、結婚しない?」唐突に彼女はそう言った。僕は考え込んだ。貯金が少なく、障害基礎年金で暮らしている自分が、果たして結婚なんかしてもいいのだろうか?しかもまだ、出会って1か月じゃないか。・・・まぁ、いざとなれば生活保護もある・・・僕は答えた。
「いいよ」そう僕が軽いノリで言うと彼女は笑みを浮かべ、会話を続けた。
「ありがとう、じゃぁ、早速だけど結婚式はどうしようか?」
「そうだなぁ、二人きりでチャペルで挙式するなんてどう?」
「いいわね、そうしましょう、その前に退院したらすぐ籍をいれようよ」
「そうだね、そうしよう、ところで君はいつ退院できる見込みなの?」
「わからない、でも調子もいいし、美咲も猛くんと一緒で3か月くらいで退院できると思うわ」
「そうかい、じゃ、いいね。あ、そうだ、電話番号とか住所とか交換しようよ」
「ペンと紙ある?」
「ペンはあるけど、紙は今ナースステーションで適当な紙を貰ってくるから待ってて」
「うん、ここで待ってる」
僕はナースステーションで心電図だか脳波の紙を手に入れ、病室に戻った。すると、彼女は泣いていた。
「どうしたの?」
「あのね・・・・・、美咲、うれしくて。精神病だからね、一生結婚は出来ないって・・・勝手に・・・諦めて・・・たんだ」
「・・・そうかい、うれしいのは僕も一緒だよ、そして泣いてくれるなんて更に嬉しさ倍増だよ」
「じゃぁ・・・、今日は・・・・・もう・・・美咲・・・、病室に帰るね・・・、また明日・・・、会おうね」
「ああ、そうだね、また明日」
その後、二人の愛は順調に育って行った。
五 再会
夏の終わりころ、僕が、秋の初めころ美咲が、それぞれ無事に退院した。
順番的にあとで退院した美咲が僕に電話をした。
「はい、近藤 猛です」僕が電話に出た。
「あ、もしもし、私、春山 美咲」
「あ、もしもし、美咲ちゃん?退院したんだね?」
「うん。猛くん、元気にしてた?」
「うん。美咲ちゃんは?」
「もう、絶好調かもしれない。はやく猛くんに会いたいな」
「僕もだよ、いつ会える?」
「いつでも会えるよ。明日でもいいわ」
「そう、じゃぁ、明日は通院日だから、明後日の土曜日はどう?」
「いいわ」
「OK。どこで会おうか」
「じゃぁ、JR西船橋駅の武蔵野線府中本町行のホームの一番前にしましょう」
「そうだね、でもなんでそこなのかな?」
「行きたい場所があるんだ」
「どこ?」
「秘密。会ってから教えてあげる」
「分かった。何時にする?」
「朝9時」
「じゃぁ、その時間に行くから、待ってて」
「うん、待ってる」
当日・・・
「やぁ、おはよう。美咲ちゃん」
「おはよう。猛くん」
「早速、秘密の場所へ行こうか」
「私の出身高校だけど、いい?今日は文化祭なの」
「へぇ、いいねぇ、だけど、こんなおじさんが行ってもいいのかなぁ?お父さんのふりすればいいかぁ」
「ふふ、そうね。今日はそれでいきましょう」
「ちなみに高校ってどこなの?」
「西船橋高校」
「へぇ、進学校じゃん」
「そうでもないわ」
「じゃ、駅を出ましょ」
西船橋高校の校舎に二人が着くと、確かに今日は文化祭だった。二日目らしい。美咲は、僕の手を握って、自分がいた部活動の発表会会場まで連れて行った。
「お父さん、これが私がいた、ダンス部の展示会場よ」
「いらっしゃい!」ダンス部の現部長が言った。
「美咲、君の写真があるじゃないか」
二人は怪しまれない様に親子を装った。
「あ、ここの卒業生なんですか?先輩ですね。よろしくお願い致します」部長が言った。
「あなたは名前は?」美咲が部長に聞いた。
「穂状 恋と申します。よろしくお願いします」
「穂状さんはどんなダンスが得意なの?」
「K-popダンスですね」
「へぇ、そうなんだ。私の頃はまだ流行ってなかったわ」
「その踊りはどんな踊りなんだ、美咲」
「お父さんには説明しても分からないと思う」
「DVDビデオがありますよ、ご覧になりますか?」部長が言った。
「ぜひ、見せてください」僕は言った。
部長は、用意されていた大画面の液晶にビデオを大音響とともに流した。
「なかなか刺激的だな」僕は真剣な顔をして言った。
「今の子たちはこれが普通よ」美咲は軽く笑みを浮かべながら、そう言った。
実は美咲が本当に僕に見せたいのは別にあった。それは、ブライダル部だった。美咲の子供のころからの夢、結婚。ブライダル部は、理想の結婚式を提案する発表会を行っていた。
美咲が僕の手を握って訪れたブライダル部の発表会では、人生の門出を祝福するようなさまざまな形式の結婚式の様子を再現した写真や映像などの展示物があった。
そして、展示物の中には、結婚式を再現した顔出しパネルがあり、二人は記念に写真を美咲のスマホで撮ってもらい、お土産にした。美咲はたいそう喜んだ。まるで子供のようだった。
そんな風に、二人の日々は過ぎていった。
六 結婚と離婚
二人が退院してから約3か月して、僕の本籍地で、二人は籍を入れ、翌年の六月に結婚式を二人と神父一人とでとり行った。僕と美咲はカメラマンに満面の笑みを振りまいた。
しかし、その時、僕等にあまりに残酷な終わりがやってくるとは知る由もなかった。
僕らは美咲の実家の策略で離婚させられてしまったのだ。浮気の疑惑をかけられてしまった。無実の罪。美咲のお金持ちの実家が僕の一卵性の双子の弟に金を払い、ホテルに美咲の知らない女性と、弟がはいる所を写真に撮って、美咲に見せたため、激怒した美咲に僕は詰められ、結局あっけなく結婚生活三か月でスピード離婚することになった。
ちなみに美咲が妊娠していたかは僕には分からない。
七 終焉
離婚後僕は趣味のパソコンでマイクロブログで日々のつぶやきを発信した。するとある日、ある女性らしきアカウントにフォローされた。
あるとき、『離婚したけど、元妻のことが忘れられない』とつぶやくと、そのアカウントがすぐに、『私も離婚したばかりです。仲良くしてください』と返してきた。その後、数か月やり取りは続いた。
実は互いに知らぬままSNSでやりとりをしていたのだ。
しかし、実は美咲は鬱病で、それが悪化し、美咲は自ら生きることを止めてしまった。そのため、そんなやりとりも終焉を迎えることとなった。
FIN




