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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

破壊の神様

掲載日:2026/08/20

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 う~ん、あと北に20メートルあたりってところだけど……こーらくん、どうだい? このあたりに埋まっていないかなあ。

 宝探しゲームにダウジングロッドを使う。まあ、なんとも酔狂だとは思うけどね。たまにはあほらしいことを真面目にやりたくなるじゃないか。

 ……ん~、これでいいのかい? 今回の宝物。

 ペンタグラムの紙が入った、小さいつぼ。いちおう、目標のブツ通りではあるね。どこまでダウジングがあてになったかは、謎だけど。

 聞くところによると、ダウジングによる発見率のアップは科学的にまだ実証されていないとか。目標対象が見つかるのも、その人が生来持っている勘とかが大きいのだろうな。

 こーらくんは、これまで自分の勘が働いたと思う場面、どれだけある? はっきりとしたものじゃなくて、運に助けられた認識もあるかもだけどね。見方によっちゃあ、神様の思し召し、てやつ?

 僕もだいぶ前に、神様についての話を聞いたよ。こーらくん好みの奇妙な言い伝えてやつだ。

 目的は達成したし、休憩がてら聞いてみないかい?


 僕の家には、とある破壊の神様の伝説が伝わっている。

 こういうと、なんだが幼稚っぽく思えるかもだけど、神様が破壊と創造の両面を持つ存在ととらえられるのは、こーらくんも聞いたことがあるだろう。

 時間がかかることであっても、勢いのある既存のものを壊すことで、新しいものを作り出す余地をもうける。マンネリ防止を求める心は人の根っこにもあるものだし、壊すことも野蛮な要素がありながら、どこか神聖なファクターも混じっていたわけだ。

 その破壊の神様伝説なのだけど、僕たちの間では、神様はいつも北側からやってくるとされた。

 北枕が縁起の悪いことだとされるのは、周知の事実だろう? いろいろな説があるけど、僕たちの間じゃそれも破壊の神様が来るためだとされたんだ。


 伝説はいくつかあるけれど、僕が一番よく聞かされた話がこれだ。

 今から数百年前。僕たちの住んでいるところには、町とまではいかなくとも大きな村が存在したらしい。

 その村がこれまでにないほどの干ばつに襲われた時期があった。不作どころか、普段なら豊富な水をたたえる井戸や近くの川の水までが枯れ果てる有様。村人はおのおのが生きながらえるための水を用意するのがやっとだったとか。

 しかし、守勢に回ったところで現状の貯蓄が尽きれば終わり。誰かが遠方より水を買ってくる運びとなり、村の中でも強健な若者のひとりが選ばれて準備を整えたのだけれども、いざ出発の朝となって。


 ひとりで暮らしていたその若者は、予定よりも早くに家から出てきた。

 しかし、すでに用意してあった運搬のための馬たちの元ではなく、反対側の村の出入り口から外へ出ていく。

 数少ない目撃者によれば、彼は何も持っていない状態のままで、村近くの崖へ登っていったのだとか。どうにか後をついていった者によると、彼は素手ではまず登れないであろう急な崖を、まるで獣のごとくひょいひょいと、手足のみで登攀していったとか。

 人間離れした身のこなしに、よもや狐にでも憑かれたかと不安視する面々。どうにか彼の元へ向かおうと回り道を思案する村人たちの前で、彼はやがて動きを止めた。

 そして、自分の頭をガンガンと崖を構成する山肌へ打ち付け始めたんだ。その勢い、ためらいのなさは、自分の身の心配を感じさせない激しいもの。

 村一帯に響き渡るほど、というからその頭突きの壮絶さたるや、言葉に表しづらいだろう。


 そうして、音と動きがやんだかと思うと。

 崖に開いた穴から、どっと水が噴き出してきたんだ。流れ出す勢いのまま、周囲の岩壁もえぐりとって膨大な量が眼下の地表へ押し寄せる。

 しかし、その濁流はみるみるかさを増やしながらも、まるではかったかのように、村を避ける道をたどっていく。またたく間に、真新しい川が村の間近へ横たわるかっこうとなった。

 彼自身もまた、水の勢いに乗る。とはいえ、川の流れに乗って降りてきたのではなく、最初の噴出へ巻き込まれて宙を飛び、近くの森の一角へ落ちていく。

 モズのはやにえのように、木のてっぺんに突き刺さっていた彼の身体はすでに息がなかった……いや、「息のしようがなかった」


 彼の頭はあごのわずかな部分を残し、完全に失われていたためだ。

 その部分に関しては血も骨もまったくない、美しささえ感じさせるものだが、それが余計に気味の悪さを際立たせる。

 彼が異様な行動をとり始めた直後に、彼の家も改められたが本来の出入り口とは別に、北側の壁に大きな穴が開いていたこと。そして、枕の位置も穴を向いており、彼が北枕で眠っていたらしいことは察しがついたようだ。

 おそらく破壊の神様が、彼に力を授けたのだろうと、村の者はみなしたようだ。村全体の窮状をいち早く救うためのものとしてね。

 確かに彼のもたらした行動は、結果的に多くの人を救い、英雄と呼んで差し支えない結果をもたらした。

 しかし、彼個人の命はそのように使い果たされてよかったものか……君はどう思う?

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