失脚
雨音に、微かに足音が聞こえたきがした。
顔を上げる気もなかったはずだが、なんとなく感じた気配に俺は少し頭を上げ確認をした。
目の前には、予想通りのやつがいた。
「なんだ、、、俺を笑に来たのか」
返答は返ってこない。
そんなつもりはなくとも、こいつがなんのためにここに来たのかもわからない。
いや、わかる。。。
表情こそ面で見えないが、これは、、、。
「なんだろうね、、、面をして表情がわからなくてもあんたが何考えてんのかわかる気がするよ」
俺は、、、任務を失敗した。
部隊は壊滅し、自分だけがおめおめと生き残り帰還したのだ。
危ない任務だとわかってはいた。
だからこそ、長く一緒に生死を共にしてきたメンバーで構成されていたが、、、。
罠だった。わかっていても対処できると自分の力をおごっていたのは俺だった。
「あんただったら、、、この任務、成功してたかもな」
俺はナイフを持ち背もたれにしていた墓標から立ち上がった。
「なあ、、、俺はもう暗部を辞めるよ。だからさ、最後にあんたの顔おがませてくれない?」
言い切った瞬間、刃物と刃物がぶつかる鋭い音が鳴り響いた。
「あは!っやっば、あんたつよいねー!!今の見切れるやつ殆どいないよ」
受け手と反対から突き下ろすレイの短刀。間一髪で体を捻り避けるが、微かに切れる衣服。
俺は逆手に握り直したナイフを投げた。それはレイの肩甲骨を狙う正確無比の軌道だったが、レイは驚異的な柔軟性で身体を丸め、空中で刃を受け止めてしまった。
返す刀が迫る。かろうじて自らのナイフで受け止めるも、押し寄せる圧力に膝が地面につく。
はは、、、すごい!!すごいよ!!!お前。。。
(こいつが任務にさえ来ていれば.....)
頭の中で決して思ってはいけない感情がめばえてしまった。。。
未だ癒えぬ傷が雨で濡れ血が滲む。
そこからは、悪夢を消し去るような戦いが続いた。
完全に俺の憂さ晴らしだ。
任務の失敗がこいつとの戦闘で走馬灯のように蘇る。
....お前の判断はまちがってたから、全員死んだんだよ。
頭の中で幻聴がずっと聞こえる。
(そうだよ...そんなことわかってる)
振り切るようにナイフを振る。
レイは全てを受け止め、間合いさえも詰めてくる。
互角—まさに互角だった。
技術も速度も判断力も。
だが決定的に違うのは—、、、
カキン!!
レイの剣を弾き飛ばし、腕を押さえ押し倒した。
「おまえ、、、まさか、女なのか??」
確信はないが、考えるより先に声が出た。
レイは何も答えないが、戦ってて気がついた圧倒的な腕力の差、、、。
とは言え、本気で押さえつけないと、こちらも危ない。最後にこいつの顔を、、、と思った瞬間面越しに微かに見えたあの深い湖のような目が「やめろ」と、訴えているような気がした。
こいつの本音は最後までわからない。
だが、それももう関係ない。
どうせ辞める...なら最後にこいつの顔を...
面に手をかけた瞬間、諦めたのかレイの抵抗力がなくなった。
それと同時に、俺も俺の力をといた。
面は取らなかった。
何をしてるんだ...俺は。
こんなことより先にやらなきゃならないことがあるだろう。
俺はレイの上から退いた。
ナイフをしまい、気持ちの整理をするためにも意味はないが、ドロドロになった身なりを整えた。
「本当は退職祝いにその面拝ませてもらおうとしたけどやーめた。まあ、あんたは精々生き延びなよ。」
俺は...こいつとの無意味な戦いでやらなければならないことを思い出した。
雨足が強まる...。
頭の中はかつてないほどスッキリシンプルに物事を考えられるようになっていた。
「じゃ...もう会うことはないだろうけど。」
(さよなら...)
なんとなく別れの言葉を口にしなかった。
俺の都合のいい幻聴かもしれないが、微かに
「お元気で、、」と、聞こえた気がした。




