茶道部残留テスト③
「これより、残留テストを始めるどす」
部長であるアマノウズメの一声より始まる残留テスト。審査員には顧問の福禄寿も加わる。
福禄寿は教師陣の中では一番の年長者。ヨボヨボの老人で、発言も少ない。眼も開いてない。影も薄く、いつも寝ているように見える。
普段は2年の担任を務めている。歩くのが遅く、基本 職員室と教室を行ったり来たり。
オロチたちが福禄寿に会ったのは、昨日が初めたのも頷けるほど。
顧問としての役割を全うしていないように思われがちなのは本当に事実。
幽霊部員と罵られたカグヅチ同じく、顔を出すことは滅多に無い。部室に来る時は、活動終わりの施錠後が大抵だ。
顧問と言えど、会話皆無の老人が部室に居れば、変な緊張感は当然にする。
オロチたち1年衆は元より、昨日粗相をしでかしたカグヅチも、意外と気が気でない。
但し、残留テストの内容は、それほど難しくはない。至って簡単。
茶道部員としての作法・礼儀を審査するだけ。〈残留〉と言うが、普通にすれば落ちない。過去の暦を遡っても、基本9割は受かる。
日々部活動に専念していれば、落第者などある筈もないのだ。
だが、これはある種の戦争。
タギリにとっては特に。
次期部長候補を蹴落とす手段でもあれば、男衆を排除する口実でもある。
自分の大好きを独占せんがための。
アマノウズメに対する恋心。
そう、タギリは女性好きなのである。
(ウヒッヒッヒ、私は勝つ、勝って見せる。ここで必ず奴等を………)
『何やら邪な気配が』とは、部長アマノウズメの言葉。勿論、声に出してはいないが、邪気は男共を襲い始める。
「うっ……」
「むゥゥ」
「ぐっ……ッ!」
「ボクにかぎって、断じて………」
男衆の顔が一斉に曇った。
藻掻き、苦しみ、何かに耐えようと必死に、我慢しながら、テストを受けている。
彼らが何を堪らえようとしているのか。
腹痛である。
テスト直前の最終確認で、タギリの煎れた茶を飲んだ男衆は下痢という名の毒を盛られたのだ。
即効性抜群の毒。
中断はできない。否、可能だが、無論評価は下がる。
理由が後から判明しても点数は変わらない。
残留テストは一発勝負。
過去の歴史・伝統を簡単に変更できる筈もない。決まり事は絶対。
「くぅゥゥゥ!」
「ぐぉォォォ!」
「ぬぬぬ」
「有り得ない、品の欠片など……」
顔芸連発。
誰も笑わない、笑えない。
内心、ほくそ笑むのはタギリだけだ。
あとは無表情。部長アマノウズメも、顧問福禄寿も、双子の妹タギツも、淡々と行事をこなしている。福禄寿に関しては、無表情よりも無反応が近いかもしれない。鼻提灯もできているし、本当に審査しているか疑問である。
それは扠置き、現在進行系の顔芸共は境地に達しようとしていて────
「もうゥッ無理だ、俺は行くぞ!!」
「俺も、後を頼む、オロチん、頑張ってくれ!!」
「そのバトンは重い、重すぎるよ、僕も行くよ」
「うぅゥゥ、ボクを逝かせてくれぇェェェ!!」
我慢の限界を迎え、勢いよく部室の外へと猛ダッシュ。
彼らがオアシスへと無事辿り着いたかどうか、知る由もないが、運が味方したのは事実。
部長アマノウズメが締めの言葉を言うタイミングだったからだ。『テストは終わりどす。審査結果はごっ………』の段階。これが、評価に響くは未知数。後は天に祈るしかない。
確信犯のタギリはというと、勝ち誇った様子で部長アマノウズメの元へと駆け寄っていた。
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