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第七章 過去の悲劇と償い

 ――リセリの声が、遠くから響いてきた。


「――ミーニャ! ミーニャ!」


 はっとして目を開ける。体が跳ね上がるほどに息は荒く、胸が痛いほど早鐘を打っていた。


「大丈夫? すごくうなされていたよ。怖い夢でも見た?」

 心配そうに眉を下げるリセリのエメラルド色の瞳に、自分の姿が映り込んでいる。


「だ、大丈夫にゃ。ただ……ちょっと昔の夢を見ただけにゃ。それより、大物はまだ釣れないのかにゃ?」

 慌てて話題をそらす。


 今日は朝からリセリと一緒に海釣りに来ていた。潮風が心地よく、陽の光がきらめく水面を撫でている。


「あはは、まだまだこれからさ! 見ててよ! こぉんなに大きな魚を釣ってみせるから!」

 リセリは自信たっぷりに両手を広げ、波間に揺れる浮きを見つめている。


 その横顔を眺めながら、ミーニャの心は再びあの夢へと引き戻されていった。

 ――忌まわしき千年前の記憶へと。




 ◇ ◇ ◇



 千年前――世の裏では、魔物の密売が横行していた。もちろん、それは厳しく禁じられた行為である。


 闇市には、愛玩用の小さな魔物から、中型の戦闘向けの魔物まで、様々な種が並べられていた。値は高額で、買い手の多くは研究者や学者たちだったという。

 その魔物たちが最も多く集められた場所が、南の森に存在した「タナトス研究所」だった。そこでは、解剖、薬漬け、強制交配――言葉にするのもためらわれるほどの非道な実験が日夜行われていた。

 苦痛に満ちた鳴き声が、森の奥に響いく。

 逃げ惑う魔物の群れ、捕まり悲鳴を上げる者、抵抗して戦う者……。その中にミーニャの姿もあった。


 心臓が胸を突き破りそうに打ち鳴らす。足音と枝の裂ける音だけが、世界を支配していた。

 ミーニャは母の背にしがみつき、必死に息を詰めていた。胸が張り裂けそうなほど鼓動が速い。振り返れば、闇の奥から響く怒号と、迫りくる足音。恐怖に顔を歪めながらも、足を止めることはできない。


「森さえ抜ければ……きっと大丈夫だから! あと少し、頑張るのよ!」

 母の声が震えている。それでも、必死に笑顔を作り、幼い娘を安心させようとしていた。


 前方で走っていた兄弟たちの悲鳴が森を裂く。

 影が揺れ、次の瞬間には捕まっていた。


 ミーニャの喉が凍りつき、声が出ない。母の背に抱かれたまま、ただ震えながら連れ去られていく兄弟の姿を見ていた。


「まだほかにもいるはずだ! 探せ! 一匹も残すな!」

 人間たちの怒鳴り声が森を圧する。


 母は悟った。もう逃げきれない。

 それでも最後の力を振り絞り、川の方へと駆ける。


「……ミーニャ」

 振り返った母の顔は、疲れ切っているのに、優しい微笑みを浮かべていた。


 人間の気配が迫る。

 母は幼子を抱きしめ、耳元で小さく囁いた。

「ごめんね……お前だけは、生きて」


 ――とぷんっ――

 小さなミーニャの体は、冷たい川の流れに引きずり込まれていった。

 激しい濁流の中、藻掻くこともせず、ただその流れに身を任せる。

 どこまで流されたのかも、もうわからない。

 次第に穏やかな流れになり、水の冷たさと恐怖に身をすくめながら意識は徐々に遠のいていった。





 やがて、ふわりと温かい気配に包まれ、重い瞼をゆっくりと開く。

 目の前には、ぱちぱちと音を立てる暖炉の炎が揺れている。

 そっと周囲を見渡すと、奥の方で淡い蝋燭の光に照らされながら、本を読む美しい人間の姿があった。その佇まいは静謐で、まるで炎の揺らめきさえも、彼女の存在を際立たせるかのようだった。


「……あら、目が覚めたのね。」

 、低く冷たい声が響く。ちらりと一瞥されたその人間は、言葉以上の威圧感を放ちながらも、すぐに本のページをめくる。


 人間……。恐怖と怒りで、ミーニャの小さな体は震える。

 だが体力はもう残っていない。それでも、氷牙白狐族としての本能が、微かな震えを奮い立たせた。

 威嚇の姿勢を取らねば――この状況では、それしかできない。


 ミーニャの威嚇する姿を見て、彼女は小さくため息をついた。

「……生意気ね」と低くつぶやき、ゆっくりとミーニャのそばへ近づいてくる。


 ミーニャは尾を逆立て、耳を伏せて身を低く構えながら、必死に「フーッ! フーッ!」と威嚇を続けた。その小さな体からも、必死の勇気が伝わってくる。


「あんなことをされたんじゃ、無理もないわね……。安心なさい。今は、眠るのよ」


 彼女は静かに手をかざす。柔らかな光がミーニャの体を包み込み、ふわりと軽くなった。

 必死に威嚇していた小さな体は、抗う力を失い、瞼がどんどん重くなる。


 ミーニャは必死に目を開けようとするが、魔法のやさしい力に逆らえず、やがて夢の世界へと引き込まれていった。




 * * *




 小鳥たちのさえずりと薬草の香りに包まれて、ミーニャはゆっくりと目を覚ました。心地よい朝の空気を胸いっぱいに吸い込み、まどろむ瞳であたりを見渡す。すると、窓辺に佇む人影が視界に映った。背筋の伸びた気高い姿、陽光を受けて燃えるように輝く長い赤髪、そして黄金の瞳――。

 その光景は、まるで母が語ってくれた記憶の言葉が形を取ったかのようだった。


「すらりとしたそのお姿はとても美しくてね。腰まで伸びる夕日のように赤い髪、黄金に光る瞳はまさに美の象徴。この世界で一番の魔女――」


 胸の奥で響く母の声に導かれるように、ミーニャの口から思わずこぼれた。


「……ルーシィ」


 ルーシィはミーニャを横目でちらりと見やると、右手の人差し指をくるりと回した。魔法の力で、ミーニャの小さな体はふわりと宙に浮かび、柔らかく自分の前まで引き寄せた。


「お前のような毛玉にまで、私の名が知れ渡っているなんてね。光栄だわ」


 優しくベッドに降ろされると、ルーシィは手に持っていた焼け焦げた魚を差し出した。ミーニャは一瞬、ルーシィと魚を見比べ、そして思わずよだれを垂らしてしまう。


「ちょっと焦げちゃったけど、食べられるでしょ?」


 ぶっきらぼうに言い放ち、ルーシィは庭へ薬草を摘みに向かう。その背中を見つめながら、ミーニャの胸にはじんわりと温かさが広がる。焦げた魚を口に入れると、香ばしい匂いと味わいが、恐怖に凍えていたあの時の心を溶かしていくようだった。


 小さな体の中で、安心感と魔女(ルーシィ)の優しさに喜びが絡み合い、涙が自然に頬を伝う。ミーニャは目を細め、心の奥底から笑みを浮かべながら、これまで感じたことのないほどの穏やかさに包まれた。





 それから半月ほどの間、ミーニャはルーシィのもとで生活し、多くのことを学んだ。薬草の知識、戦い方、そして魔力の扱い方――ひとつひとつを吸収するたびに、自分の成長を実感する。


 その姿を見守るルーシィの微笑みに励まされ、ミーニャの胸には新たな決意が芽生える。捕まってしまった母や兄弟たちを助けるために、もっと強くならなければ――その思いが、彼女の瞳を力強く輝かせた。


 しかしその思いもむなしく、あの日(・・・)が訪れた。

 ルーシィは張り詰めた緊張感と怒りのオーラをまとい、無言で家に帰ってきた。ミーニャにそっと守り石を首から下げる。


「ルーシィ? これ、なんにゃ?」

「……お守りよ。少し慌しくなるから……。お前は、この家から出てはいけない」


 何かが始まる――嫌な予感が胸を刺す。ミーニャはこくんと頷く。ふわふわの白く柔らかい彼女の頭を優しくなでたルーシィは、言葉もなく転移魔法でどこかへ消えていった。

 窓の外を見ると、空気は淀み、昼間だというのに空は薄暗く、重苦しい影が村を覆っていく。





 あれから数時間が過ぎた頃、ミーニャはかすかな気配を感じ取った。

 兄弟たちの匂い――村の近くにいる。距離はかなりあるが、血の繋がりがあるからこそわかる。もしかすると、母の気配も混ざっているかもしれない。


 胸がぎゅっと締め付けられる。

 ルーシィの言いつけを破ることになるとわかっていても、ミーニャは我慢できなかった。


「待っててにゃ……!」


 小さな体に力を込め、森の中を駆け抜ける。

 木々の間をすり抜け、枝や葉に足を取られそうになりながらも、必死に前へ進む。

 鳥たちのさえずりがいつもと違って騒がしく感じる。風が耳元をかすめ、葉のざわめきが鼓動のように響く。

 森の奥に広がる薄暗い道も恐れることなく、ミーニャは全速力で走り続ける。

 皆の気配が混ざる方へ、迷わず突き進む小さな影――それは、守るべき家族のもとへ向かう決意そのものだった。


「……あそこに、いるにゃ……!?」


 目に映ったのは、記憶とはあまりにも違う兄弟たちの哀れな姿だった。


 ミーニャは思わず両手で口を押えた。全身が震え、今にも崩れ落ちそうになる体をただ必死にこらえるしかなかった。


 兄と弟は改造され、氷牙白狐の面影はもはや残っていない。かつて白く美しかった毛並みはどす黒く変色し、あの優しい笑顔も失われていた。口は裂け、牙はむき出しになり、右目はただれ落ち、結合された弟の顔は面影すらなくなっている。


 ミーニャの胸は張り裂けそうだった。恐怖と絶望、怒りが一度に押し寄せ、声も出ず、ただ震える体でその異形の兄弟たちを見つめるしかなかった。


 息を殺し、自分を落ち着かせるミーニャ。哀れな姿になった兄弟たちから少し離れた木陰に、何かの気配を感じた。


 ――母様の匂い……!


 その匂いを追いかけ、ミーニャは駆け出した。木々の間に見えたのは、白く美しい毛並み。


「母――!」


 呼びかけたその瞬間、異様な光景が目に入る。人間が母の毛皮を身にまとっていたのだ。


 ミーニャの全身の毛が逆立ち、体が自然と緊張に包まれる。瞬時に判断した彼女は、その人間に飛びかかり、叫ぶ。


「返すにゃ!! 母様を返せにゃ!」

「うわっ! 何だこいつ! 離れろ! くそっ!」


 急に飛びかかってきたミーニャを、男は背中から振り払おうと手を伸ばす。しかし、ミーニャの小柄な体には届かず、もがくたびに逆に体にまとわりつかれてしまう。

 すると男は口笛を吹いた。その音が森に響く。その瞬間、改造され変貌した彼女の兄弟たちが、低いうなり声をあげながらものすごい勢いで襲い掛かってきた。

 狂暴化し、自我を失った兄弟たちは、もはやミーニャの存在を認識しない。鋭い牙が彼女めがけて襲いかかるその瞬間、ルーシィからもらった守り石が淡く光を帯び、辺り一面を眩い光で包み込んだ。


 異形の魔物たちは悲鳴を上げ、守り石から放たれた魔法の鎖に絡め取られ、地面に叩き付けられる。眩い光は同時に揺るぎない威厳を放っていた。


 ミーニャは息を詰め、震える瞳を空に向ける。すると、ほうきに乗り、風を切って降り立つルーシィの姿があった。赤い髪は光に照らされて鮮やかに揺れ、黄金色の瞳は凛と輝く。


「……悪い子ね。家から出てはいけないと、私は言ったはずなんだけれど」

 ルーシィはあきれたようにそう呟き、涙を浮かべるミーニャを見下ろした。


 泣きながら言葉を発せないミーニャは、母の毛皮を抱きしめ、そのまま地面に崩れ落ちる。


 その瞬間、ルーシィの表情が静かに引き締まり、怒りの炎が瞳に宿る。自我を失い異形と化した魔物たち――ミーニャの兄弟――に対して、彼女は一切の迷いなく炎を放つ。紅蓮の炎は凄まじい勢いで異形の魔物たちを包み込み、その身を焼き尽くした。


 炎に照らされるミーニャの小さな背中は、儚く、そしてあまりにも切なかった。

 魔物たち(兄弟)を焼き尽くす赤い炎が、森の静けさを飲み込み、パチパチと木々を焦がす音だけが響く。

 彼女の小さな泣き声は、炎の轟きの中でかき消され、森の闇に溶けていった。

 それでも、背を丸めて抱きしめる母の毛皮の温もりも、彼女の胸から静かに優しく燃え尽き消えた。





 恐怖で腰を抜かし、地面にへばりつく人間に向かってルーシィは静かに魔法をかけた。


「これは誰の仕業で、どこで行われているのか、教えなさい」


 魔法の言葉が男の脳内に浸透する。見たもの、行ってきたこと、これからする予定――すべてが自動的に言葉となり、男の口から流れ出す。


「貴族が……魔物を兵器にして、帝国を支配すれば富を独占できると考えたのです。しかし、一部の貴族が反対し……そこで秘密裏に研究者を雇い、捕らえた魔物をすべて実験に……。南の森の奥、魔鉱山の地下に――タナトス研究所が……」


「……そう。教えてくれてありがとう。――さようなら」


 ルーシィが静かに指を鳴らすと、男の体は一瞬で炎に包まれ、燃え尽きた灰は風に舞って消えた。


 ゆっくりと後ろを振り返る。そこには、泣き疲れて小さな体を丸め、ミャーミャーと掠れた声で泣き続けるミーニャの姿があった。土埃と泥にまみれ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔は痛々しいほど幼い。


 ルーシィは無言でその小さな体を抱き上げる。冷たい夜風の中、ほうきに跨ると、腕の中で震える命を抱きしめたまま、魔女たちが集う――〈魔導母〉の家へと向かった。




 * *  *




 魔導母の家には、すでに二十を超える魔女たちが集まっていた。

 それぞれが世界中に散り、各地で静かに暮らしながらも、その国の均衡を陰から守ってきた古き魔女たち――。長き年月を生きた者ばかりであり、その存在感は圧倒的だった。


 張り詰めた空気の中、ルーシィが扉を押し開ける。炎に照らされた部屋の視線が一斉に彼女に注がれた。


「……揃ったわね。その子は?」

「氷牙白狐の子よ。……生き残ったのは、おそらくこの子だけ」


 ルーシィの答えに、魔導母は目を伏せ、深く息をついた。その黄金の瞳に何が映り、何を思うのかは誰にもわからない。


 静かなざわめきが広がる。

「なんて痛ましい……」

「この子だけでも助かったのは奇跡ね」

「だが、同じような犠牲をこれ以上出すわけにはいかない。一刻も早く手を打たねば……」


 言葉が飛び交う中、ルーシィはひと言も返さなかった。ただ腕に抱いていたミーニャを魔法の光で包み込み、やさしい回復のベールで覆う。ふわりと宙に浮かせ、ルーシィ自身は何事もなかったかのように席へ腰を下ろした。





 長い話し合いが続いた。

 焚かれた炎がぱちぱちと音を立てる中、魔女たちの声が次々と飛び交う。


「アロ族に声をかけ、我らの後方を支えてもらうべきだ」

「うむ、アロ族なら協力を惜しまぬだろう」


 だが、その一方で異論もすぐに上がった。

「しかし、メヨラ族にだけは頼むべきではない。彼らは感受性が強く、動物や魔物を傷つける行いを心の底から忌み嫌う。今回の件に巻き込めば、必ずしこりが残る」

「だが今は、誰かれを選んでいる余裕はないはずだ! 我らだけで立ち向かうには規模が大きすぎる」


 意見は割れ、部屋の空気はますます重くなる。

 しばし沈黙を守っていた魔導母が、やがて深くうなずいた。


「……よい。アロ族にも、メヨラ族にも声をかけよう。結果はどうあれ、いまは一つでも多くの力が必要だ」


 魔導母はしばらく目を閉じ、静かに考え込んでいたが、やがてルーシィに視線を向けた。

「……ルーシィ。アロ族に今回のことを伝えてほしい。ミティナのところへ行き、我らの後方支援を頼みたいと」


 ルーシィは眉をひそめ、肩をすくめる。

「嫌な役目を押し付けるのね」

「すまない。しかし、あの一族と最も縁があるのはお前だ」


 小さくため息をつき、ルーシィは首を振った。

「……わかったわ。ただし、ミザリーのところへは私以外の魔女を送って」

「それは承知している」


 短いやり取りののち、ルーシィはまだ深い眠りにあるミーニャをそっと腕に抱き上げる。小さな体を魔法の光で包み込むと、ふわりと浮かせるように抱きかかえたまま、迷いなくその場を後にした。




 * * * 



 アロ族の里にたどり着くと、ミーニャがふにゃふにゃと目をこすりながら目を覚ました。

「おはよう」

「おはにゃう……ここはどこにゃ?」

「アロ族の里よ」

「アロ族にゃ!?」

「親友の家に行くから、いい子にしているのよ?」

「……わかったにゃ」


 ルーシィがほうきでゆっくりと降り立つと、外で仕事をしていたアロ族の人々が一斉に声をかけてきた。


「やぁ! ルーシィじゃないか! 久しぶりだね、二百年ぶりかな?」

「ますますきれいになっていくわね! ほんと、うらやましいわぁ」

「まぁ! ルーシィ! 元気にしてた?」


 懐かしさと喜びに満ちた笑顔で、次々に声をかけられる。里の空気はまるで祭りのように賑やかだ。


 ルーシィは片手で軽く手を振りながら、もう片方の腕でミーニャを支え、小さくため息をつく。

「人気者なのも困ったものね……」


 すれ違うたびに声をかけられるたび、少しくたびれたようにミーニャへつぶやいた。





 目の前に広がるのは、大きな薬草畑。その隣には可愛らしい家が建ち、外では背の高い男性が黙々と作業をしていた。


「久しぶりね」

 ルーシィの声に、男性ははっと顔を上げる。


「ルーシィじゃないか! ちょっと待ってて。今、ミティナを呼んでくるから」


 慌てて走り出すテヨマ。その勢いに驚いた羊たちも、一斉に逃げ出す。

「うわっ! 違うんだ! こら!」

 その騒ぎを見て、ルーシィは思わず吹き出し、柔らかな笑みが零れた。


 ほどなくして家の扉が勢いよく開き、ミティナが駆け出してくる。

「ルーシィ!!」

 驚きのあまり、大声を上げる。抱きかかえていた赤ちゃんも、びっくりして泣き出した。


 ルーシィは思わず目を見開いた。

「……ミティナ、あなた……母親になったの?」


 ミティナは少し照れくさそうに微笑む。

「そうなの。もう子どもはできないと思っていたんだけどね」


 ルーシィの腕に抱かれたミーニャが、ひょこっと顔を出して赤ちゃんを覗き込む。

 晴れ渡る青空のような青い髪に、宝石のように輝くエメラルド色の瞳――その無垢な瞳がミーニャとぶつかる。


 一瞬、世界が止まったかのように互いを見つめ合うと、赤ちゃんは泣きやみ、じっとミーニャを見つめ返した。


「にゃ……にゃ?」

「きゃっ! きゃっ!」

「にゃん?」

「きゃはっ!」


 ミーニャが鳴くと、赤ちゃんは嬉しそうに笑い出した。


「まぁ、とっても喜んでるわね」

 ミティナとテヨマはくすくすと笑いながら話を続けた。

「この子はね、『リセリ』って名前をつけたの」

「仲良くしてくれると嬉しいな」


 テヨマは微笑みながら、そっとミーニャの頭を撫でた。


 ルーシィの表情が少し曇っていることに気づいたミティナは、優しく声をかける。

「さ、家の中で話しましょうか」


 ベビーベッドにリセリとミーニャをそっと寝かせ、ルーシィを席に案内する。

 ミティナは手際よくお茶を入れ、テヨマはルーシィの表情をじっと見つめた後、口を開いた。


「何となくだけど、わかってるよ。魔物のことだろ?」

「……えぇ」

「僕たちにできることはするから、そんな顔しなくていいんだよ」


 三人分のお茶をコトコトとテーブルに置き、ミティナも椅子に腰かけてひと口飲む。


「来るんじゃなかったわ」

「どうして?」

「子どもが生まれているなんて思わなかったのよ。あなたたちの今やるべきことは、この子を育てること。それに、魔物のことは私たちがなんとかするから」

「なるほど、ルーシィは僕たちの心配をしてくれるのか」

「当たり前でしょ!」

「ありがとう、ルーシィ。でも、私たちだって元はカレタカ族よ。アロ族になった今でも、その力は魔女と大差ないって知ってるでしょ?」


 ミティナの優しい声が、お茶の香りとともに部屋に広がる。

「それに、後方支援は私たちアロ族の役目でもあるもの」


「そうそう、それに僕たちの出番なんて、君が強すぎてほとんど必要ないってことも知っている」


 テヨマとミティナは微笑みながら互いの目を見つめ、そしてルーシィに視線を向ける。

 ルーシィは、ミーニャの尾っぽをつかんで離さないリセリをそっと見下ろしながら、少しだけ微笑む。


「……それもそうね。私が全部根絶やしにしちゃえばいいのよね」

「おいおい、勘弁してくれよ」


 三人はくすくすと笑い、香ばしいお茶をゆっくり楽しんだ。


 冗談を交えつつ話を進め、南の森での出来事や、魔鉱山の地下に存在するタナトス研究施設のこと、さらにメヨラ族にも声をかけていることを説明し終えると、ルーシィは手元のカップに残っているお茶を静かに飲み干した。

「お茶、ごちそう様。……準備ができ次第、連絡するわ」


 ベビーベッドでは、リセリとミーニャが並んですやすやと眠っている。かわいい寝息と、時折小さく動く耳や手足が愛らしい。


 ルーシィはその光景を見つめながら、そっとリセリの頭を撫でた。柔らかな髪の感触を確かめるように手を離すと、今度はミーニャを抱き上げる。


「……二人に、そっくりね」


 小さく、しかし確かに呟かれたその言葉に、ミティナとテヨマは一瞬だけ視線を交わし、静かに微笑んだ。




 * * *




 家に戻ったルーシィは、庭の薬草を魔法で摘み取ると作業部屋(魔女の秘密部屋)へと入っていった。

 机の上に護符や守り石を並べ、ひとつひとつ丹念に魔力を込めていく。指先から淡い光が漏れ、石や紙片に複雑な紋様が浮かび上がる。

「結界も強化しなければいけないわね……それから……」


 独り言を呟きながら手を止めた瞬間、ふとリセリの寝顔が脳裏に浮かんだ。青い髪、透きとおるような瞳――無垢な笑顔。


「……アロ族の里の周りも、強い結界が必要ね」


 胸の奥からじんわりと湧き上がる温かな感情に包まれながら、ルーシィは静かに作業を続けた。



 一方その頃、メヨラ族のもとを訪れた数人の魔女たちは、渋々ながらも南の森で起きた出来事を語った。

 話を聞き終えるや否や、メヨラ族の長老は憤怒に震える声を上げる。


「そのような非道な実験、断じて許せぬ! 準備など不要だ。我ら一族総出で直ちに討ち払ってくれる!」


 族人たちも口々に叫び、森を揺らすほどの怒号が広がっていく。

 彼らの眼差しには憐れみよりも怒りが燃えており、その場にいた魔女たちでさえ気圧されるほどの迫力だった。

 止めようと必死に手を伸ばす魔女たちを、メヨラ族は怒りに任せて振り払った。

 計画も伝わらぬまま、我先にと武器を手にして進軍を始めてしまう。


「待って! まだ準備も整っていないのに!」

 声を上げても、誰一人として耳を貸そうとはしない。


 焦燥を覚えた一人の魔女が、急ぎ蔦の魔法を使って魔導母のもとへとこの事態を知らせに戻った。

 しかし、その場に残された魔女たちには、暴走するメヨラ族を止める術はなかった。


 次々とほうきで飛び出したメヨラ族は、一直線に南の森を目指していった。

「ミザリー! お前たちは捉えられている魔物を解放してきなさい!」

「わかりました!」


 長老の指示を受け、ミザリーと数人の仲間たちは地下研究所へと潜入する。

 固く閉ざされた分厚い扉を魔法で叩き壊し、そのまま中へ雪崩れ込んだ。


「侵入者だ! 倒せ! ぐわぁっ!」

 研究者たちが慌てて叫ぶも、抵抗する暇もなく次々に拘束されていく。


 檻の奥で震えていた魔物たちの前に立ち、ミザリーはそっと声をかけた。

「つらかったわね……もう大丈夫。さぁ、お逃げなさい」


 次々と牢を開放していくミザリーたち。

 だが解き放たれた魔物たちは、すでに戦闘用の薬で無理やり強化された存在だった。

 封印結界に縛られていた力が、牢から一歩出るごとに一気に解き放たれていく。


 ──その瞳に宿っていたのは、感謝の光ではなく、狂気の炎だった。


 異形と化した魔物たちの雄たけびが、南の森全体に轟く。

 ミザリーは慌てて魔法を放つが、その力は何の効力も持たなかった。

 一緒に地下へ来ていた仲間たちは、あっという間に無惨に食い殺されていく。


 必死の思いで逃げ出したミザリーの前に、巨大な氷牙白狐──堕獣兵化された姿──が檻を破り飛び出した。

 その体躯は異様に膨れ上がり、白く美しかった毛並みは血と泥で汚れ、咆哮は大地を震わせるほどだった。





 その咆哮は、遠く離れたナミナン村の方まで響き渡った。

 ミーニャは飛び起き、ルーシィも慌てて外へ飛び出す。


 すると転移魔法の光とともに、魔導母が他の魔女たちを連れてルーシィの前に現れた。

「すまないルーシィ……どうやら、メヨラ族が先走ってしまったようだ」

「先走ったって……はぁ……状況は?」


 魔導母が若い一人の魔女に視線を向けると、彼女は涙を浮かべながら口を開いた。

「ごめんなさい……。私たちがメヨラ族に南の森での出来事を説明しに行ったら、怒った彼らは自分たちだけで森へ向かうと言い出してしまったんです……」


 そのとき、一人の傷だらけの魔女が、必死の思いでほうきに乗り逃げてきた。

「報告します……南の森に、巨大な氷牙白狐が現れ、メヨラ族とアロ族が対処しています」


 ルーシィの顔に、これまで見たことのない怒りの色が走った。空気が一気に重く張り詰め、周囲は息をするのも忘れるほどだ。


 ミーニャは「氷牙白狐」という言葉に反応し、すでにその場へ駆け出そうとしていた。


「なぜアロ族が……」


 ルーシィは怒りを必死に抑え、低く震える声で言う。声そのものが圧力となり、周囲を圧倒した。

「メヨラ族の者が……アロ族……に……助けを……」


 過呼吸になりながらも、一人の魔女が震える声で必死に説明を続ける。

 周りの皆はなぜルーシィが、ここまで怒りをあらわにしているのか見当もつかない様子だった。

 ルーシィは魔法でほうきを自分のもとへ呼び寄せると、ミーシャをそっと抱きしめ、ふわりと空へ舞い上がった。

 下方に集まる魔導母たちを見下ろし、先ほど慎重に作った護符を軽く投げ捨てる。

 そして、言葉ひとつ残さず、静かにその場を去っていった。




 ルーシィはほうきを猛スピードで飛ばし、南の森へと向かった。

 しかし森の中には、魔物の姿はどこにもない。倒れた木々や荒れた地面だけが、暴走した力の爪痕として残されていた。

 その痕跡を追うと、向かう先はアロ族の里――まるで、助けを呼びに行ったメヨラ族を追うかのようだ。

 ルーシィの胸は締め付けられる。いくらアロ族とはいえ、彼らは戦闘向きではない。

 支援型の一族――彼らはカレタカ族から分かれ、力を補佐に特化させた者たちだ。

 森のざわめき、折れた枝の軋む音、呼吸する間も惜しい焦燥。ルーシィの魔力がうずき、危険を知らせるように空気が震えた。急がねば、間に合わなければ――。



 咆哮が空気を震わせる。ルーシィは空高く舞い上がりながら声の主を探す。


 見つけた――森の奥、倒れた木々の間に巨大な影が揺れている。

 その体は血と泥で覆われ、瞳はもとの優しい光を失い、魔力の力で赤く妖しく光っていた。食べた者の魔力を吸収したのか、その体躯はまるで王城のような大きさに膨れ上がっている。


 ――父様。


 ミーニャの小さな瞳に映るのは、かつて優しく家族を愛し、母を溺愛していたあの父の面影ではなかった。そこにあるのは、暴走し、異形と化した――ただの怪物の姿だった。


 胸の奥から、恐怖と悲しみが一気に押し寄せる。小さな体がふるえ、毛が逆立つ。

 しかしその次の瞬間、怒りが湧き上がった。自分の家族を、そして無垢な仲間たちを蹂躙した者に対する――怒りだ。


「……父様……! でも、許さないにゃ……!」


 涙で視界がにじむ中、ミーニャは決意を固める。

 たとえ父の面影があったとしても、今目の前にいるのはもう父ではない。目の前の異形に立ち向かうため、全身の力を振り絞った。


 ルーシィもその小さな背中を見据え、覚悟を読み取る。空気がぴんと張り詰め、戦いの時が迫っていることを告げていた。






 アロ族の里で暴れまわる巨大な氷牙白狐。

 ルーシィは背後に回り、魔力を集中させる。


「絶縛の鎖!」


 鋭い音と共に、ジャラジャラと鎖が宙を舞い、魔物の体を地面に縛り付ける――はずだった。

 しかし、鎖は一瞬にして砕け散った。


 ――魔法が弾かれた?


 よく見ると、誰のものか分からないが、魔物を魔法攻撃から守る護符がその体に貼り付けられていたのだ。

 このままでは時間がない。燃やすしかない。


「誰か知らないけど……とんでもなく面倒なことしてくれたわね」

 ルーシィは苛立ちを隠せない。


「ミーニャが、あれを外すにゃ!」

 小さな声が震える。


「何言ってるの? 危険すぎるわ!」

 ルーシィは必死に制止する。


「やらせてほしいにゃ! あの魔物は父様なんにゃ!!」

 涙をこらえ、ミーニャの瞳は決意で燃えていた。


「……本当にできるの?」

 ルーシィの声に、ミーニャは力強く頷く。


「やるにゃ!!」


 ルーシィは迷わずミーニャを抱きしめ、護符が貼られた場所へ向けて転移魔法で彼女を飛ばした。




 ミーニャは小さな体で、かつての父の背中に転げ落ちた。

 すぐに目を光らせ、護符を探す。血や泥でべったりと汚れたその護符に、彼女は思いきり飛びついた。


「んぎぎぎぃ……はがれないにゃぁぁぁ!」


 小さな手では、汚れた護符をうまく剥がせない。

 その異変に気づいた父の体は、怒りを露わに咆哮をあげる。

 ミーニャの体がしびれるほどの衝撃だが、彼女は諦めない。


 護符に噛みつき、力いっぱい引っ張る。


「んぎぃぃぃ!!!」


 父の背中は振動し、ぐぉぉと唸り声をあげながら、ミーニャを振り落とそうとブルンブルンと体を振り回す。


 ルーシィはミーニャを信じ、詠唱を始めた。

 里を守りながら、魔物だけを確実に殲滅するための魔法だ。

 彼女の体は徐々に光に包まれ、周囲の空気が張り詰めていく。


 一方、ミーニャは護符に噛みついたまま、父の背中に振り回される。必死に歯を立て続けるその姿には、決意と恐怖が入り混じっていた。


 その瞬間――父の背中から生えた巨大な腕が鋭い爪でミーニャを吹き飛ばす。

 ルーシィの瞳に映ったのは、護符をくわえたまま、穏やかに笑いながら空中を舞い、地面へ落ちていくミーニャの姿だった。


 ルーシィは目を見開き、最後の言葉を詠唱し終えると、力強く魔法陣を発動させた。

 異形と化した魔物は、最後の力を振り絞って辺りを瓦礫の山に変える。

 轟音とともに地響きが大地を震わせ、魔物はついに沈黙した。

 ルーシィは深く息を整え、光を帯びた地面へ静かに降り立った。


 ルーシィは地面に倒れているミーニャを抱き上げた。

 小さな体は護符をくわえたまま丸まり、深い傷があるものの、かすかに呼吸している。ルーシィはためらわずポーションを振りかけ、傷を癒した。


 辺りを見渡すと、かつての大きな薬草畑も、ミティナの家も、原形を留めずに瓦礫と化していた。

 ルーシィの胸は一瞬、冷たい恐怖に締め付けられる。


「ミティナ!!」


 魔法の力を集中させ、手を振ると光の波が瓦礫を押し広げ、粉塵と煙が舞う中、崩れた中から必死にリセリを抱きしめるミティナの姿が見えた。


「ミティ――!」

 ルーシィの叫びは虚しく響いた。


 瓦礫の中に横たわるミティナは、もう息をしていなかった。

 背中には太い木材が突き刺さり、その痛みに耐えながらも、彼女は最後までリセリを抱き守っていたのだろう。小さな命を守るためだけに、全ての魔力を注ぎ込んで。


 ふわりと、温かな風がルーシィの頬を撫でた。

 ――ルーシィ。

 それはミティナの声だった。アロ族が最後に残す秘術「魂の声」。


 ――ルーシィ……ごめんね。私、やらかしちゃった……でも……リセリを、お願い……。


 かすかな囁きに続き、テヨマの声も重なる。

 ――ルーシィ、頼む。リセリを……守ってくれ。


「いや……いやよ……ダメよ! そんなのダメ!!」

 ルーシィの叫びは、崩れた里に悲痛に響き渡る。


 それでも、魂の声は静かに繰り返した。

 ――ルーシィ。リセリを……守って。


 震える手でリセリを抱きかかえ、ルーシィの体はがたがたと震える。

 冷たい風が荒れ果てた大地を吹き抜け、崩壊した里にはもう生き物の気配はなかった。

 そこに残されているのは、死に絶えた魔物の骸だけ。


 ルーシィはミーニャとリセリを強く抱きしめると、ゆっくりと空へと浮かび上がる。

 太陽のような黄金の瞳からは涙があふれる。

 赤く染まった月が背後にかかり、その光を受けた彼女の髪は紅蓮に燃え上がっていた。


 込み上げる怒りが、空気を焼き尽くす。

 その瞬間、ルーシィの放った魔力が紅蓮の炎と化し、辺り一面を灼熱で包み込んだ。




 ◇ ◇ ◇




 ミーニャはゆっくりと目を開けた。

 ナミナン村の青い海と潮の香りが心地いい。

 しかしミーニャの胸の奥で、どうにもならない感情が渦を巻いていた。

 ――父が。

 父が、ルーシィの親友を……リセリの両親を、自分の大切な人たちを殺してしまった。


 その事実は、苦しくて、痛くて、息が詰まりそうになる。


 ぎゅっと瞳を閉じ、涙をこらえる。

 けれど、恐る恐る目を開けると――そこにはまだ何も知らず、大きな瞳でこちらを見つめるリセリの姿があった。


 小さな視線が重なる。

 リセリはにこりと笑った。無邪気で、あまりにも無垢な笑顔で。


「……ごめんにゃさい……リセリ……ごめんにゃ……」


 ミーニャの声は震え、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちた。

 リセリはきょとんと目を瞬かせた。

 涙を流すミーニャの言葉を理解できたわけではない。

 それでも――小さな両腕を精一杯伸ばし、何も言わずにミーニャをそっと抱きしめた。


 あまりに優しく、温かいその抱擁に、ミーニャの胸の奥に積もっていた痛みが堰を切ったように溢れ出す。


「……リセリ……」


 震える声でその名を呼び、ミーニャは子猫のようにリセリの胸元に顔を埋めた。

いつもご覧いただきありがとうございます。

15時に間に合うようにと書いていましたが

今回は間に合わず、書いている途中で投稿してしまいました。

今回の章の書き終えたものを見ていただければ幸いです。



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