第十四話 職員と、冒険者と。
一体何が起きているのか。
新人二人は困惑しながらも目の前の状況を何とか飲み込もうとしていた。
先輩がぐったりと受付机に身を預けている。
目の前の出来事を説明するならこうなる。
だが、普段の凛とした姿を知っている二人にとってその姿を信じられないものだった。
二人の記憶にあるルプスはいつだって頼りになる先輩だ。他の職員からも頼りにされ、相談を受けている姿もよく見る。
駆け出しの冒険者がルプスに自身の使う武器について相談しているところを見たこともあった。
仕方ないなあ、と笑いながら話を聞き、時には一緒に武器を選んでいる姿を見たこともある。
既にこの辺境に配属されて一つの季節が過ぎている。
その間一度だってこんな風にだれている姿を見たことがなかったのだ。
故に、こんな状態のルプスに対する対処方法がわからない。
せめて周りにいる他の職員ならどうにか出来るだろうか。
助けてくれ、という気持ちを込めて辺りを見渡してみても、さりげない動作で目を逸らされてしまう。
中には面倒ごとは勘弁、と顔の前で手を合わせるものや、にこやかな笑みを浮かべて手を突き出して応援している職員もいる。
それぞれの思いはともかく、助けがいないことを悟るには充分だった。
なんと声をかけたらいいのかわからなく、ただ立ち尽くすことしかできずにいる二人に気が付いたのだろう。
ぐっ、と体を伸ばし立ち上がった。ぐしゃぐしゃと絡まりあった髪を直すために長い髪を纏めていた紐をほどくとグレーの髪がゆるりと背中に広がる。
手早くまとめ上げた髪はすぐにいつものように頭の上で結ばれた。ぴこり、と耳が動く瞬間まで思わず目で追ってしまい、慌てて視線を逸らす。
なんとなく、見続けていいものではないと思ったのだ。
そんな少年たちの格好をよそに、ルプスは辺りを見渡している。朝の始業準備を手伝っていないことに今更気が付いたのだ。
「みんな悪い。あとは俺がやるからいったん休んでいいよ」
とはいえ、終わっていないのは後はギルド前の掃除と夜勤担当者たちとの打ち合わせだ。
あちらこちらから上がる声に手を振りギルドの外に出ていくルプスの後ろを、新人二人もついていく。
彼らもルプスの様子を気にするあまり殆ど朝の準備を手伝えていないのだ。
周りからルプスの対応を押し付けられたようなものではあるが、それはそれ、これはこれ、だ。
三人でやれば掃除もすぐに終わる。どこかから飛んできた草木や、酒の瓶等、景観に悪いものを回収し処分していく。
さっさと終わらし、ギルドの中へと戻ればちょうど夜勤担当者と打ち合わせが始まるところだった。
それぞれから夜間の様子を聞き、どれも特に問題がないことを確認すれば夜勤担当者が帰っていく。
そして、入れ替わりのように朝一を狙って依頼を受けに来た冒険者が訪れた。
朝一に訪れる冒険者の顔ぶれはだいたい同じだ。
ナインとクルツもそろそろ顔と名前を憶えてきた冒険者たちに声をかけられながら、少しずつ受付を終わらせていく。慣れてきたとはいえ、まだまだ新人だ。どうしたって他の職員に比べたら時間がかかる。当然、冒険者たちもそれをわかっている。
急いでいる冒険者は他の慣れた職員の処へ行っているため、実際に並んでいる数は多くない。
どうにか朝の山場を越えて一息付ける頃、朝の疑問がまた浮かんできた。
ちょうどルプスも手が空き、処理済みの依頼書を片付けているところだ。
ナインとクルツは視線を交わし、そっとルプスに近づく。
「ルプスさん」
「うぉ! なんだお前ら、急に。仕事は……、あぁ、いったん山場を越えたか」
受付を確認し、待っている冒険者がいないことを確認してルプスは二人へと向き合った。
「どうした?」
「どうかしたのはルプスさんじゃないんですか? 朝、様子がおかしかったんで気になってて……」
個人的なことにどれだけ踏み込んでいいのかわからない。
けれど、気になる。
そんな様子を隠さない少年たちに、あぁ、と小さく息を吐きだした。
気が抜けていたのだ。
せめて若者の前ではしっかりとして見せようと頑張っていたのに、エクレピアが傍にいることで冒険者だった時の感覚が強く出ていた。
「ちょっと昔の知り合いがこっちに引っ越してきてな。対応にばたばたしてるんだ」
だから大丈夫だ、そう続けようとしたルプスの言葉は入口から聞こえてきた騒めきに紛れてしまった。
その騒めぎの原因に思い当たる節があるのか。遠くを見るルプスにナインとクルツは同時に首を傾げた。
これもまた、二人は見たことがないルプスの反応だった。
「ルプス」
改めて声をかけようとしたクルツを止めたのは、低く響くような聞き取りやすい声だった。
咄嗟に、詠唱が得意そうだ、なんて頭に浮かぶ。
三人が同時に声の主へと視線を向ければ、そこにいたのはエルフの冒険者だった。髪についた飾りや服装からも魔法使いか、魔術師か、とにかく魔に通じる力を使うのだろう。
身につけている装備はどれもこれも一級品で、力を持つ冒険者であることがわかる。
だが、クルツはエルフの冒険者という存在を初めて見た。
エルフは同種族以外と関わることを嫌うと聞いていたが、それは間違えた知識だったのだろうか。
ふつふつと知りたい情報が湧き上がってくるが、今は職員として対応するべきところだ。
ルプスに固定された視線を遮るように、相手の前に立つ。
そうしてやっとその場所にルプス以外の職員がいることに気が付いた。
まるでそんな雰囲気で男はクルツに視線を向けた。
「えっと、ルプスさんは疲れているようなんですが」
顔が整いすぎて怖いことなんてあるんだ。
そんな明後日な思考が浮かんでしまうほど、目の前のエルフの圧が強い。
だが、この場所をどくつもりはなかった。
普段のルプスならば問題ない。だが、今朝の様子を見ていると心配になってしまうのだ。知り合ってから大して時間がたっていなくとも、ルプスはクルツにとって大切な先輩だった。
だが、相手は興味がなくなった、というように視線を外した。
そして再度ルプスの名前を呼ぶ。その呼び方は先ほどよりも優しく柔らかく聞こえた。
ゆらり、とルプスの手が揺れ、それに答えた。
「クルツ、心配してくれてありがとうな」
そういって頭を撫でられることに少し気恥ずかしさを覚えた。
ふいっと視線を逸らした横顔に生暖かい視線を感じる気がして頬が熱くなる。
「こいつ、前に俺と一緒に冒険者をやってた仲間なんだ」
「よろしく、はしなくてもいいけど。エクレピアだ。こっちに拠点を移したからこれからも会う機会はあるかもな」
「この街に高ランク冒険者は少ないだろう。多分、これから先なにかあれば頼ることになる。二人とも名前と顔をちゃんと覚えておくように」
ぱんぱん、と顔を叩き気合を入れたルプスはそのままエクレピアを連れてカウンターへと移動していく。
その背中は先ほどまでの力のなさは見えず、見慣れた頼りがいのある姿だった。
ナインとクルツは視線をあわせ、無言でその後ろをついていく。
まだ仕事中だ。カウンターへと戻った二人は先ほどまでルプスがしていた処理済みの依頼書を整理することにした。依頼人の受領サインがされているか念のため確認しながら内容に沿って整理していく。
万が一、後から問題が起きたときの為に依頼書は五年ほど保管しておく必要がある。滅多にないが数年に一度、過去の依頼書を探す羽目になることがあると聞かされていた。
まだ出来ることが少ない新人の主な仕事が過去の依頼書整理になる。
面倒だ、と小声で愚痴を言うナインを宥めながらクルツは手を動かしていく。ナインは苦手なようだったが、クルツはこうした単純作業が好きな方だった。
なるべく同じような依頼内容で纏まるようにしながら整理していけば、いつしか作業に没頭していく。
その二人の様子を、エクレピアはルプスと会話をしながら見ていた。
◇ ◇ ◇
カラン、と響いた軽い音に入口の近くにいた冒険者の視線が向いた。
そこにいたには多くの種族が行き交う辺境でも珍しいエルフの姿。
さらりと流れる髪と、それぞれが触れ合いしゃらりしゃらりと小さな音を奏でる魔石の音がエルフという種族と相まって何処となく話しかけづらさを醸し出している。
辺りを見渡し目的の人物がいないことを確認したのだろう。
まっすぐにカウンターへと足を向けた。
「なんかいい匂いがする。やっばー」
「ばっか、やべぇのはお前だわ。俺らより強い男だぞ」
「えぇ。でも見た目は超美人じゃん」
「少なくとも俺らよりはデカイな」
ガハハ、と品のない笑い声が響く中を、まったく気にしたそぶりを見せない。話している男たちよりもそれを見ていた周りの方がはらはらとしてしまう。
最も、エクレピア当人はそうした声をかけられることも、自分が周りからどう見られているかも充分に理解していた。冒険者になりたての頃は今よりももっと性別不詳の外見だった所為で不愉快な声を掛けられていたのだ。
今更あの程度の発言で怒るようなことではなかった。
「今日はどういったご用件でしょうか?」
エクレピアがこちらに拠点を移してからすぐのこと。
彼が王都から持ってきたという素材や不要になった武器の買い取りに手と時間を取られたことを覚えていた職員は、今日は何があるのかと身構えてしまう。
それ以降も街の外に出ては街の周りにはいないはずの魔獣を狩り持ち込むのだから既にこの冒険者ギルドでは有難くも問題児な冒険者である、と見なされていた。
それら魔獣はエクレピアの移動魔法で、本人曰く少し移動して狩ってきた、ということで近くにはいないと判明してひとまずの混乱は収まったが。
「ルプスに用があったんだけど、今いる?」
「今は見回りに出ております。少し待てば戻ってくると思いますが」
たまたまだろうか。ちょうど受付にいた女性はルプスと仲の良い職員だった。
互いに獣人であるという共通点から比較的よく会話をする同僚の一人、という立場である。かといって、互いに恋愛感情を抱いたりしていない。
ルプスはそもそも恋愛に疎く、彼女は結婚まで秒読みの恋人がいるので。
とはいえ、周囲からは仲の良い二人、と見られていることも理解していた。
どことなく敵意を感じる相手に、内心の感情を抑え込みにこやかに対応している職員は後でルプスを問い詰めよう、と決めていた。
薄っすらと感じる敵意もこちらを傷つけようという意図を感じられない。
むしろルプスとエクレピアがかつて共に活動していたことを知っていれば、これは嫉妬だろう、と容易に当てが付いた。その感情が友情からか、恋情からか、流石に彼女にはわからない。
わからないが、どちらにしても話は聞かねばならない、と心の中で飲み会の算段を付け始める。
何せ、人当たりが良いふりをしながら、壁を作っていた男だ。その男が他人を自宅に住まわせる、というだけでも驚いたというのに、二人が並んでいるところを見るととても自然なのだ。
そこにある種の『特別』を感じてしまうのは仕方がないだろう。
「それならいいか。……前にルプスと一緒にいた二人は?」
「彼らなら裏にいますが」
「ん、ちょっと話したいことがあるんだけど呼んでもらってもいいかな」
物腰は柔らかい。しかし、断らせない圧があった。
流石、高ランク冒険者、と浮かんだ感想を胸に裏で素材の整理をしていた二人を呼ぶためにカウンターから離れた。
「やあ」
自分たちを呼んでいる相手がいる、と聞かされて慌てて出てきた二人の前には手を振るエルフの姿。
げぇ、と声を出したのはナインだった。その気持ちはわかる。
だが、態度に出すな、と言いたい気持ちを堪えたのはクルツだった。
自分たちよりもはるかに実力が高い冒険者。
そんな彼が大切にしているのは自分たちに仕事を教えてくれている先輩だった。
恐らく、自分たちが彼に対して何かしらの不利益を与えれば、容赦なく裁かれるのだろう。
そんな雰囲気があった。
ルプスはそれを知っているのだろうか。
ふと過った疑問に、愚問だ、と自分で答えを出す。
知っていようと、知っていなかろうと、きっと彼はこのエルフの青年から離れることはないのだろう。
詳しい話を聞いたわけではない。
それでも、街の中で噂を聞くだけでもわかることがある。更に、ルプスと共にいれば伝わってくるのだ。
彼らが長く共に活動していたことも、エクレピアが来たことでどれだけ喜んでいるかも。
実力のある冒険者がいてくれることは、ギルドとしては大変助かる。
だがしかし、この相手に対して素直にお礼を言う気になれないのは、その態度のせいだろうか。
「俺たちに用があると聞いたんすけど」
辛うじて丁寧に話す、という言葉が頭に残っていたのだろう。
ナインの言葉に少し眉をしかめるが、それに何かを言う前にエクレピアが二人の目の前までやってくる方が早かった。
「君たちがルプスの後輩か。……あいつに迷惑かけないでね」
にっこりと笑っているのに、その目が笑っていない。
背中に氷山の氷を入れられたような感覚を覚えて、二人はただこくこくと頷くしかなかった。
あれは敵意というよりも殺気に近かった。どうしてそんな感情を向けられるのか、クルツには理解できなかった。だが、あれは怒らせてはいけない相手だ。
「ほんとうに、苦手……」
ぽつり、と零れ落ちた言葉に隣にいた相手が頷きを返した。
どこが苦手という明確な場所があるわけではない。
敢えて言うなら、あの何もかもを見透かしたような態度が苦手だった。隠し事も何も許さないと言われているような雰囲気はどうにもやりにくい。
頼まれた仕事を終わらせながら、ナインは深く息を吐きだした。
それからしばらくして、ルプスが戻ってきた。引きずられているのは街中で酔って暴れた冒険者だ。
見回り中に暴れているのを見つけて、被害が出る前に取り押さえることが出来た。
これから説教だ、と言いながら戻ってきたルプスはすぐに、二人の雰囲気がおかしいことに気が付いた。
どことなくぎこちなさが漂っているのだ。
何が起きたのだろうか。
「俺がいない間に何かあった?」
問いかけながら周りの職員を見ても、皆苦笑しながら肩を竦めるだけ。
仕方ない、本人たちから聞くしかないか。
そう思っても、なんでもない、と言うだけ。全く『なんでもない』表情はしていないのに。
けれど、二度、三度、と重ねて聞いてみればおずおずとエクレピアが冒険者ギルドを訪れことを聞かされた。その時の会話も同様に。
それを聞いて思わず頭を抱えてしまったのは、恥ずかしさだとか、不満だとか、そうした感情が溢れた結果だ。
年齢は確かに彼の方が上だ。それは種族的な理由からだが、それぞれ成人してからの年数で言えば大して変わらないのに、何故かあの男は自分の保護者を買って出ているようなのだ。
「悪い。あいつ俺に対して随分と過保護なんだ。嫌な思いさせたよな」
「いえ! ちょっとびっくりしたけど大丈夫です!」
「ですです。俺も、びっくりしただけなんで……」
両手をわたわたと振る二人に、申し訳なさが募る。
エクレピアが彼らに対して向ける態度の理由は過保護だから、だけではない。ただし、確証がない中でしていい態度でもなかった。
「……よし、今日は食事に行くぞ」
これ以上、何を言っても逆効果だろう。
それなら、食事をしながら話をすればいい。
冒険者時代の癖のようなものだった。
何か行き詰っている相手がいれば、食事に行く。
そこで美味しいものを食べれば大体のことは打開する。
そんな考えのリーダーと同意したルプスに引っ張られるように仲間たちは何かあれば宴会騒ぎを起こしていた。そういった過去のことも懐かしく、少しだけ胸が痛む。
未だに昔の仲間たちと会いに行く覚悟が決まらないでいた。
「今日は俺の奢りだから」
ざわつく店の中で恐縮したように丸まっているナインとクルツ。その横にはふてぶてしい態度で座るエクレピアがいた。
「あぁ、エクレは自分で払えよ」
「若者だけずるいだろう」
「ずるくない。お前の方が稼いでるだろうに」
高ランク冒険者の稼ぎが冒険者ギルド職員より低いわけがないのだ。
大体、職員をしている以上、報酬の額も頭に入っている。そして、エクレピアがあまり散財するような性格をしていないことも知っているのだ。
残念そうな顔をしながら、頷いたのを確認してメニューを広げる。
街の中にある大衆居酒屋だ。一つ一つの値段は安い。それこそ三回ほど薬草の納品依頼を済ませれば酒一杯とつまみの一つは頼むことが出来た。
故に、駆け出しの冒険者も多く利用している酒場だ。
騒がしい場所が苦手であればもう少し単価は上がるがレストランも選択肢に上がる。とはいえ、今日に関して言えばルプスも新人二人も騒がしい場所に抵抗はない。新人二人に関しては奢られる立場で選ぶも何も、という気持ちもあるだろう。
最初はぎこちなかった二人も、酒を飲み進めていけば口も軽くなっていく。
そうなると当然、ともいうべきか、ルプスの過去の話になった。
現役の冒険者だったころのルプスを知るものは減っている。そもそも拠点が王都だったこともあり、こちらの冒険者では知らない者も多いのだ。
それでも、Aランクまで上がった以上、まったく知られていない、ということもなかった。
当時、エルフと獣人、徒人と小人で構成されたパーティーは珍しく、奇異の目で見られることも多々あったのだ。
成功は元より、失敗も多くした。喧嘩も多かったけれど、それでも、彼らと別れて別のパーティーを組もうという気にはならず、怪我のことさえなければまだ彼らと共にいただろう。
「ルプスさんがすごいっていうのは、ギルドに来る冒険者さんたちからたくさん聞いていたんですよね」
きらり、と目を光らせて聞く姿勢のクルツは最初の印象よりもずっと打ち解けていた。反対に、意外と踏み込ませないようにしているのがナインだった。
そっとエクレピアと視線を交わす。
恐らくエクレピアの方でも何か情報を掴んでいるのだろう。
ルプスの持つ情報網とは別の物を持っていてもおかしくない。知るべきことであれば聞かされるだろうから、今は知らないままでいい。
「そういえば、エクレピアさんがこっちにきて、他の方はずっと王都なんですか?」
「今は、な。そのうち来るんじゃないか? ここにルプスがいるんだし」
「そもそもなんで急にこっちにくるんだかなぁ。あっちのがいろいろあって生活しやすいだろうに」
酒を飲みながら不思議そうにするルプスの横顔を見るエクレピアと、そんなルプスに呆れたように笑うナインとクルツ。短い間だが、ルプスとエクレピアが揃っているところを見れば、エクレピアが向ける執着心は丸わかりだった。何故、向けられている当人が気が付かないのかわからないほどにあからさまな感情は見ている方も邪魔をしようという気を無くす。
それに、相手の感情に気が付いていなくとも、ルプスはそれを受けているから、なおさら周りが余計な手を入れる必要もなかった。
「まぁ、俺はエクレが来てくれてうれしいからいいんだけどさ」
酒に酔い、赤くなった顔を隠さずに笑うルプスの頭を、エクレピアは無言でぐしゃりと撫でた。
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