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事件

 翌朝、目が覚めたブルーは、隣に誰もいないことに気づいた。エイプリルはどこに行ったのだろうか。なんとなく胸がざわつき、階下に降りて庭に出た。庭では、一足先に起き出したエイプリルが顔を洗っていた。ブルーに気づき、怪訝な顔をする。


「どうしたの、そんな真っ青な顔して」


「いや……」取り残された気がして、と言うのをやめた。


「そろそろ出ないと、隊商に置いてかれちゃうよ、早く準備したら」


「そうだな」


 宿屋を出て、集合場所である外壁へ向かう。空はどんよりと曇っていた。降り出さなければいいが、とブルーは思った。ぬかるむ足元、ずぶ濡れのまま雨音を子守唄に夜を過ごすことを思うと、それだけでうんざりする。どうやらエイプリルも同じことを考えているようだった。

と、ブルーの目に不自然なものが止まった。街の出口付近に、猛烈な人だかりがしている。あれを乗り越えるのは骨だぞ、と考えると、人だかりの中から一人の女性が現れた。


 姉さんだ!


 二人はとっさに駆け出したが、彼女の姿は人混みに紛れ、すぐに見えなくなった。一目だけでも会いたい、と強引に近づこうとするブルーに気がついたのか、目が合った瞬間、ヴァネッサはひとつウインクをして、群衆とともに去って行った。


「元気そうでよかったな」


「うん……。お話したかったけど、忙しそうだったね」


「しょうがないよ、市長なんだからさ」


「そうね、もう行きましょう」


 二人が門の方に歩き始めた瞬間、何かが弾けるような音の後、つかの間の静寂せいじゃくを経て、つん裂くような悲鳴が重なって聞こえ始めた。振り返ったブルーの目に、狂乱する人々と、飛散ひさんした鮮血の欠片が見えた。ブルーは不吉な予感から来る目眩めまいを堪えながら、人だかりに近寄って行った。市長が、市長が、と、群衆が浮かされたように口走っていた。


「頭が、市長の頭が爆発した!」隣の男が叫んだ。現場にいた全員が、一瞬体を強張こわばらせた。

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