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とある儲け話

「お、聞く気になったようだな。いいねえ、おじさんの話に素直に耳を傾けるっていうのは、若者のあるべき姿だよ。さて、あれは俺がまだ駆け出しの頃だった。さて、歳はお前さんと同じくらいだったかな。


 俺は大間抜けをしでかした。当時、俺はある街で、商いの修行をしていた。そこで『夏にカメムシのよく出た年の冬は大雪になる』という情報を掴んだんだ。折しもその夏は、カメムシの大量発生で、農産物に大きな被害が出ていた。俺は愚かにも、その情報を全面的に信用した。俺が商人として尊敬してた男――そう、その頃は師匠って呼んでた――は、ある朝俺を家まで呼んで、お前もそろそろいっぱしの商人だ、そろそろ独り立ちをする時期だから、一発旗揚げのために大きく稼いでみないか、と言った。俺も商人のはしくれ、何を売るにもタダってわけにはいかないが、この情報は大マケにマケてやる。それで身を立ててみろってな。


 俺はためらいもしないで薪や油を、夏のうちに大きく買ったよ。それこそ借金までしたさ。それでどうだ、いざ冬になると、大雪どころか暖冬、前の年の同じ時期に比べてみんな半分も暖炉を使いやしねえ。おまけに、そのクソ野郎は、同じネタをそこら中にばらまいてやがったんだ。おかげで薪も油も半値どころか二束三文にしかならねえ。だからといってそのクソ野郎を恨むのも筋違いだ。この商売、騙された奴が負けなのさ。そいつは無数の『弟子』からせしめた情報料をたんまり持って、トンズラこいちまいやがった。…おおい!おかわり!もっとでかいやつで持ってきてくれ!」

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