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誇りとは

 ジェイクはブルーの手を振り払い、乱れた服を整えながら返事をする。


「兄さん、あんたがどういう人生を送ってきたか知らないし、興味もないけど、商人っていう生業はそんなに甘いもんじゃないぜ。あんたも知ってるだろ。俺たちは、物を売って生計を立ててるんだ。お上には睨まれるのが宿命ってもんさ。それに加えて道中の危険も伴う。生半可な気持ちではできない職業なのさ。そんな覚悟がなく、ただ金が儲かるからっていう魂胆で、俺たちの天職をけがすようなやつらこそ、商人を冒涜しているよ。

 なあ、商売っていうのはな、自分を切って売るのと同じと思わないか。物は買えば増えるけど、俺たちの体や、心は、一つしかない。そんなかけがえのない自らを犠牲にして銭儲けをしているんだ。そのことを俺は誇りに思っている。だから俺は、多少門番のカマかけにあったくらいで揺らぐような奴らを軽蔑しているし、そんなのは死んでも仕方がないと考えている。どうだ、あんたはどう思う」


 凄まれて、ブルーは何も言えなかった。その説得力はまさしく商人と言ったところだった。


「すいませんでした」ブルーは素直に謝罪した。「僕も思うところがありますよ」


「そうだろう」ジェイクは笑顔を作って言った。「あんたはそんな奴らとは根から違うって、会ったときから思っていたよ。今も勢い余って、俺に掴みかかってくるくらいだからな。…ああいやいや、責めたわけじゃない。そのくらいの気概が、商人たる者には必要だと言いたかったのさ。―さて、そんな兄さんを見込んで、一つ提案がある」ジェイクは人差し指を立てた。


「頼るところがどこかあるのか?もしないんだったら、うちの商会に顔を出してみないか」



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