迫り来るセックスの予感?
二人はなんとなく気まずいまま、部屋に戻って横になった。
ブルーはさっぱり寝付けなかった。さっきの酔っぱらいの言葉がぐるぐると脳裏を巡って、一向に落ち着かない。しばらく天井を睨んでいると、隣のベッドから声がした。
「ねえ、起きてる?」ブルーは一瞬ぎく、としたが、平静を装って「起きてる」と言った。
「そっちに行っていい?少しお話しよう」
「うん……」そっけない返事をしたが、ブルーの若い鼓動は高鳴っていた。こんなことは初めてだ。一体どういうつもり……。
混乱する彼をよそに、エイプリルが寝床に滑り込んでくる。花のような香りが鼻孔をくすぐって、ブルーはくらくらした。背中ごしに、じわりと体温が伝わってくる。
「は、話って?」うわずった声で尋ねてから、彼はわざとらしく咳き込んだ。
「うん……」エイプリルはためらいがちに言う。
「なんだよ」
「さっきの話、本当だと思う?」
「さっきって?」
「さっき、あの大男が酔っ払ってしてた話よ」
なんだ、そのことか、と、ブルーはなんとも言えない気分になった。僕の気も知らないで……。
「わからない。でも、もし、万が一、そういうことを姉さんがしていたら……。いや、していたとしても、それは必要なことだったんだよ。人のためになると思って、したことだと思うよ」
「……でも、それって、正しいことなのかしら。私、すごく不自然だと思う。自分の信念を投げうって、身体まで差し出して、そこまでして守る価値があるものなんてあるの?」エイプリルは、とても憤っているようだった。
「わからない。全然わからないよ。本当言えば僕だって、全然納得しちゃいない。嘘だって思いたいよ。でも、姉さんのあの世渡りの仕方を見てたら、本当かもしれないって考えてる自分もいるんだ。嫌になるよ。今度姉さんにあったら、聞いてみよう、じっくりとね。それから……」
エイプリルはいつの間にか寝息を立てていた。ブルーはため息をついて、それから眠るエイプリルの横顔を見たり見なかったり、キョロキョロと落ち着かなかったが、やがて意識を失った。