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死線をどんどんくぐり抜けろ
役人は、しばらくブルーの目を見つめて黙った。ブルーも負けじと目線を合わす。しばしのにらみ合いのうち、役人は首を縦に振ったかと思うと、手元の通行手形に印を押して、ブルーに突き返した。
「いや、疑るような真似をして悪かったな。このところ、手形の偽造も巧妙になっておって、ぱっと見では見分けがつかん。だから、まっさらな手形を持ってきた連中には、こうやってカマをかける必要があるのよ。だが、こうなってはお前は立派なこの街の客人だ。改めて歓迎する。ようこそ、ギンズバーグへ。通ってよし!」
門を抜けると、昔懐かしい街が広がっていた。ブルーはよろよろと、しばらく歩いた。そして、街の中央、公園の真ん中にある噴水の縁に腰をおろした。というよりは、へたりこんだ。
――危なかった。カマをかけていたということは、あの瞬間、甘い言葉に惑わされて判断を間違えていれば、手形が偽物だと白状していれば、自分もあの物乞いと同じ運命をたどっていただろう。死が眼前を通り過ぎていった衝撃で、ブルーはしばらく腰が抜けたように立てなかった。




