お前は馬並みか?
「兄さん、ギンズバーグは初めてかい?」
ブルーの前に並んでいた、商人風の男が振り返って話しかけてきた。ブルーと仲良くしたいというよりは、この重々しい空気に耐えられないといった風だった。
「あ…いえ、何度か来たことはあります。商いで」
「へえ!まえだ若く見えるのに、商人さんかい!俺も物売りなんだけどさ、未だに慣れないね、この改めっていうのは」
「はあ…」
「昔はこうじゃなかったんだけどねえ、この街も。あの、なんていったかな、女の市長さんがいたじゃないか。あの頃はよかったな。誰でも自由に出入りできてさ。まずなにより、この時間がたまらないね。なんだか取り調べを待ってるような気分だよ」
「ギンズバーグにはいつも来てるんですか?えーと、その…」
「ジェイク。ジェイクって呼んでくれ。」
「ジェイクさんは何度もこの街に来てるんですか?」
「うん、もう十年くらいになるかな。アイリスとダリアが戦争してた頃から来てるね」
「商人っておっしゃってましたけど、荷はどこに?」
「んん?荷受け場だけど。ほら、あそこに見えるだろ」
ジェイクが指差した方向には荷馬車が並んでいた。なるほど、行商人風の人々がいやに身軽だと思ったらそういうことか、とブルーは納得した。




