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夏に咲く赤い花

「なあ、ところでどうやってギンズバーグに入るつもりなんだ」ブルーは傍らのソルフェに話しかける。当のソルフェは路傍に咲いた野生の花に目を取られているようだった。


「おい」声をかけるブルーなどいないかのように、彼女はアケミに話しかける。


「あの花、ええ色しとるのう」


「エイジアだよ、ソルフェちゃん、見たことないの?」


 エイジアは、真夏に小さな赤い花をつけるという珍しい野草で、群生するため季節になるとそこら中に咲き乱れ、その様は赤い絨毯を何枚も広げたようで、壮観である。このあたりではギンズバーグ周辺でしか咲かない。


「ほうか…あれは…」ソルフェが呟く。


「なんだって?」


「まあええわい。おどれは明るいうちに中に入ってしまえ。手形を持っとりゃ大丈夫じゃとは思うが、くれぐれも用心してな。次に会うときは街ん中じゃ」そう改めて忠告され、ブルーの弱気の虫が動きはじめた。


「大丈夫だよ」とアケミ。「もし捕まってもあたしたちが助けてあげるからね。それまで死なないでね」


「それ、全然励ましになってないぞ」


「わしらが中に入って、どこに集合するんがええんかいの?」


 それについては、聞かれる随分前から決めていた。


「街の中央通り、ブランデーストリートの東にある、『TK』という店に来てくれ。僕の名前を出せば、入れるようにしておく」


「なにを偉そうに。呼ぶ前に殴り込んでやるわい」


「やめてくれ」


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